お願い
いつも通りの家族での夕食が始まった。
リュリアーナは少し食べ進めたところで、お父様であるロイレンドに向かって声をかける。
「お父様、お願いがありますの」
ロイレンドはいつものおねだりかな?と口元を緩めながら「どんなお願いかな?」と問いかける。
「わたくし、明日は街にお出かけしたいのです!お父様、お許しいただけますか?」
リュリアーナは可愛らしく首を傾げ、上目遣い気味にお願いしてみる。
お父様がこのお願いの仕方に弱いのは把握済みだ。
「街に?何しに行くんだい?」
不思議そうにお父様も首を傾げている。
「もうすぐお母様のお誕生日でしょう?何か素敵なプレゼントを自分で探したいと思いまして!一人で行って見たいのです、お父様。お願い致しますわ」
体全体をお父様の方に向け、上目遣いでお願いを続けてみる。
「ルーナのプレゼントを?そうか、だがなぁ・・・。一人で行かせるのはな・・・」
お父様が考え込むそぶりを見せたところで、リュリアーナは畳み掛ける。
「でしたらミリアを連れて行きますわ!それなら良いでしょう?」
リュリアーナ付きのメイドであるミリアを連れて行く事を条件に出してみる。
お父様はミリアをチラッと見遣り、そして頷いた。
「分かった。では必ずミリアを連れて行きなさい。それなら街に行く事を許可しよう。その代わり、絶対にミリアから離れてはいけないよ。」
最初は厳しい顔をして許可を出してくれたお父様だが、最後は優しい笑顔を見せながら「守れるかい?」とリュリアーナに問いかける。
「もちろんですわ、お父様!ありがとうですわ!絶対にミリアから離れないと約束いたしますわ!」
満面の笑みを浮かべお父様に「約束する」と返すと、お父様も笑みを深め温かい目でリュリアーナを見てくれる。
二人でニコニコしていると、リュリアーナの隣から「お父様」と声が聞こえてきたのでそちらに顔を向けると、お兄様であるレイフォードがお父様に声をかけていた。
「僕もリーナと一緒に街に出かけても良いでしょうか?」
お兄様がにこやかにお父様に問いかける。
ええ!?お兄様も来るの!?
それでは魔法の練習ができないかもしれないじゃないの!
どうしましょう!?
リュリアーナがそんな事を考え焦っているなんて知らないお父様は「ふむ。レイが一緒に行ってくれるのならその方が安心だ。リーナが迷子にならないよう頼むぞ」と返事をしていた。
なんということでしょう!
すんなりと一人でお出かけの許しが出るとは思っていなかったからメイドのミリアを条件に出したのに・・・。
まさかお兄様も一緒に行くと言うとは思わなかったわ・・・。
うーん、困ったわ。どうしましょう。
お兄様にわたくしが鑑定や魔法全属性持ちということはまだ隠しておきたい。
そうなると魔法の練習は一旦保留にして、魔の森にだけどうしても行きたいとお兄様に伝えてみようかしら。
魔王の息子を直接この目で見たいもの!
お兄様はたまに魔の森に一人で行くこともあるから一緒に行くなら、と許してくださるかもしれないし!
明日外出するときに相談してみましょう!
リュリアーナは明日の計画を練り直すことに必死で、お兄様が微笑ましそうにこちらを見ていることに気が付かなかった。
さて、この可愛い妹は明日どんなことをしでかすのか・・・。
いつもはあまり表情が変わらないのに、今日はコロコロと表情が変わるのが面白いなぁ。
明日が楽しみだ。
レイフォードは可愛い妹が何かを考え込むように百面相をしているのを微笑ましい気持ちで見ながら明日の事を考えていた。