馬車
馬車に乗り、お兄様と一緒に町に向かう。
リュリアーナはすっかり忘れていたが、ユリシュティに会うためにお母様への誕生日プレゼントを町に見に行くと言って出てきたのだ。
そのため、帰る前に何かしら身繕わなくてはならない。
お母様のお誕生日プレゼントをついでにしてしまってごめんなさい!
心の中で深く反省する。
そんなリュリアーナの正面にはレイフォードが腕を組み目を閉じていた。
リュリアーナの隣にはメイドのミリアが座っている。
「お兄様?何か考え事ですの?」
ゆっくりとレイフォードの目が開き、リュリアーナ見る。
「・・・いや、帰ったら二人で話そう」
そう言ってまた目を閉じてしまう。
うーん・・・。
やっぱり"私"の話についてかしら・・・。
「わかりましたわ、お兄様。そういえばお母様へのお誕生日プレゼントはどんなものを考えておりますの?」
再びレイフォードの目が開く。
「僕は髪飾りかな。この間、お気に入りの髪飾りが壊れてしまったと嘆いておられたから」
その時の様子を思い出したのか、お兄様がふっと笑みを浮かべた。
「髪飾り、ですか。うーん。わたくしは何にしましょう・・・」
顎に手を当て、うんうん唸っているとお兄様が「見てから考えたら良いのでは?」と言ってくれた。
「そうですわね!色々見てみますわ!」
そんな会話から少し時が経って町に到着した。
「あのお店を見てみたいですわ!」
走り出しそうな勢いのリュリアーナをミリアが「離れてはなりませんよ。リュリアーナお嬢様」と引き止める。
「わ、わかっていますわ」
気まずそうに視線を泳がせるリュリアーナにレイフォードは苦笑を浮かべる。
「ほら、リーナ。手を繋ごう。迷子にならないように」
そう言って差し出されたお兄様の手に自分の手を重ねる。
「お兄様と手を繋いでお出かけできるなんて嬉しいですわ」
リュリアーナは自然と笑みが浮かんでしまう頰に、片手を添えて恥ずかしそうにしていた。
「さあ行こう。まずはあのお店だろう?あまり時間がないから少し急ごうか」
二人で少し早足になりながらお店に向かった。
お店に入ってみると、そこはガラス細工のお店だった。