兄心
更新空いてしまってすみません!
※レイフォード視点
妹とユリシュティが手を繋いで中庭を歩いていくのを東屋に座ったまま、紅茶を飲みながら見送る。
それにしても、妹の行動力がすごい。
オーラが変わったことから妹に別人の意思が宿ったのだろうというのは分かった。
だけど、急にお菓子作りをしたりお弁当を作ったり、果ては魔王の息子に求婚するなんて・・・。
会いたいとは言ってたけれど、まさか初めて会ったその場で求婚するとは思ってもみなかった。
ユリシュティがそれを受けたのも驚いたが。
はぁ、と息を吐き出す。
でもユリシュティが求婚を受け入れてくれて良かった。
落ち込む妹を見るのは胸が痛い。
別人の意思が宿っているとしても、私が妹を好きなことには変わりない。
可愛い妹に悲しい思いはしてほしくないと思うのだ。
幸いユリシュティは妹を好いてくれたようだし、心配はないだろう。
あとは父と母の許しを得られるかどうか・・・。
——いや、その心配は無用か。
あの二人もリーナには弱いからな。
リーナのお願いなら承諾してくれるだろう。
そんなことを考えていると、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。
パッと顔を向けるとユリシュティが戻ってくるところだった。
何故か顔が赤いリュリアーナを横抱きに抱えて。
「レイ、待たせてすまない」
そう言って抱えていたリュリアーナを私の隣に座らせて、ユリシュティはリュリアーナの隣に座った。
「いや、もう少しかかると思っていたよ。リーナ充分に見て回れたかい?」
「・・・へっ?ぁ?あ、あぁ!そうですわ、とても綺麗でしたわ!」
未だ心ここに有らずな妹に問いかけると、わたわたと慌てながら「ユティ様がこの薔薇の花をくれましたの」と薄紫色の薔薇を慈しむような眼差しで見つめる。
そんな妹からユリシュティに視線を移す。
「綺麗な薔薇だね。まるでリーナの瞳のような色だ」
「僕もそう思った」
「そうか、妹に美しい薔薇を渡してくれてありがとう」
もう一度妹に視線を戻すと、妹の顔は真っ赤に染まっていた。
「・・・ユティ。リーナに何かしたね?」
一気に周りの空気が冷たくなり、風が荒れる。
それを感じたのかユリシュティは目を細める。
「あぁ、口付けを交わした。それ以上は何もしていない」
真っ直ぐ射抜くような視線を送ったが、ユリシュティは意にも介さず真っ直ぐ視線を返してくる。
あぁ、やはり小さくても魔王の息子、か。
ユティになら妹を任せても大丈夫だろう。
そんな確信が胸によぎる。
「そうか。まだ婚約が成立したわけではないのだから抑えるようにね。婚約成立後でも婚前なのだからそれ以上のことはダメだよ。僕の妹をよろしく」
ユリシュティに向けて頭を下げる。
先ほどの視線には動じなかったユリシュティでも頭を下げられたことには動揺したようだ。
慌てたように「もちろんだ!!」と返事をくれたユリシュティに笑みが湧く。
まだ顔が赤く落ち着きのない妹を、ユリシュティと二人、見守るような眼差しでしばらく見ていた。