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主役はちいさないちごたち

作者: 卯之 はな

わたしはからだのちいさないちご。


たいようの光はおおきいビニールのおうちにいるから、見たことない。


でもきっとわたしたちを育ててくれたから

すごくまぶしくて、きらきらしているんだとおもう。


たまに、からだが立派なおなじいちごにわたしたちはいじめられる。


「君ら、なんでそんなにちいさいの? 気も、ちいさそう」

「つやつやしたぼくたちって、

 人間からしたらすごくおいしくて高くうれるんだってさ!」

「あなたたちを買ってくれるひとはいるのかしら」


わたしたちはなにも言いかえせなかった。


とりえがなにひとつないから。


からだはちいさくても、おとななのに…




しゅうかくのときがきた!


わたしはみんなといっしょにかごの中に放りこまれる。

もうちょっとやさしくいれてほしいな。


たくさんのなかまたちがかごにはいって、おうちからでる。


太陽はやっぱり、おおきくてまぶしかった。




ちょっとざつに…透明なふくろに詰めこまれてお店にならんだ。


おおきいいちごたちは、きれいな箱にいれられてきもちよさそうだった。


わたしたちを買ってくれるひとはいるのかな


くさってしまって、捨てられやしないかとそわそわした。


しばらくすると、ちいさなあしおとがトコトコとやってきて、

わたしたちが入ったふくろを持ちあげた。


そして、


「おかあさん! これにする!」


こんなわたしたちを買ってくれたのは、

笑顔がかわいい ちいさな女の子だった。




おうちについたら、さっそくふくろから取りだされた。


ごろごろところがった仲間も、水あびをさせられる。


きもちいい!


女の子はかわいいけど、手荒でわたしはちょっとつぶれてしまった。




へたを取られて、いくつかのいちごをぱくりとたべられた。


美味しそうにほおばる女の子とおかあさんの顔はしあわせそうで、


たべられたいちごたちもきっとうれしいにちがいない。




のこったわたしたちはどうなるんだろう?


ボールにうつされて、

まわりが見えず6個だけのこされたなかまは不安になった。


女の子とおかあさんはなにか話しているけど、うまく聞きとれなかった。


「ぼくもあんなおいしそうにたべられたいな」

「なんで残されたんだろ。 ねぇ、ぼくのからだ くさってる?」

「そんなことないよ。 おうちにいたころと変わらずきれいだよ」


ざわざわと騒ぎはじめたころ、一個 また 一個 と連れていかれた。


さいごに、わたしの番がきた。


こわくて目をつぶってしまった。


どうか、おいしくたべてくれますように…!


わたしのからだは、ふわっと冷たいところに置かれた。


しろくて、とてもやわらかくて居心地がよかった。



そっか! わたしたち…

ケーキの主役になったんだ!



女の子とおかあさんは、きらきらした目でわたしたちを見た。

女の子が言った。


「ちいさくて、かわいくて、すき!」


なんだかじぶんたちが誇らしくなった。



こんなによろこんでくれるひとがいるなら、ちいさくてもしあわせ!



夜になって、ケーキにほんのりと火の棒が灯され、


なかまがいつも以上に輝いてみえた。


「おとうさん! ハッピーバースデー!」





ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


今まではどうぶつ・植物・人魚といった作品を書いていたのですが、

フルーツにしてみました(ネタ切れではありません…!)


いつも"死"だったり、ちょっと小難しいはなしだったり、

そんなものがたりが多い中、

ほんとうに児童向けの小説が書けたとおもいます。


たまにはいいですね。

ちなみにフルーツで一番すきなのは もも です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても感動しました。 児童向けの作品とのことですが、 いい年こいた私の心にもすごく刺さりました。 お話そのものの良さもさることながら、 起承転結もしっかりされていて、 なおかつ頭の中で容易…
[良い点] 体が小さいことを少し気にしていたイチゴさんが、最終的に主役になれたところがとても良かったです。 可愛らしい作品で好きでした。名作ですね。 [一言] モモ美味しいですよね。私も好きです。
[良い点] 文章が優しくて、とても読みやすく、最後まで楽しませてもらいました。ほっこりしました。 [気になる点] 仕事柄、いちご農家の知人が多いのですが、お徳用の小粒のビニール袋詰めでも、私の知る限り…
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