プロローグ:アウセスケィとの遭遇
処女作です。拙い文章ですが楽しんでいただけると幸いです。
僕は気づくとここにいた。白い何もない、狭いのか広いのかも分からない無音の空間だ。恐る恐る右足を前に出し、置いてみる。こつと音がして固い感触が足から帰ってきた。床があるのか。そのまま一歩づつ感触を確かめながら歩を進める。歩き続けるとやがて簡素な椅子が二つ、向かい合う形で置いてある場所へ来た。ああ、椅子だ。柔らかい!なんて柔らかいんだ!思わず椅子のクッションにへばりつく。無の空間を歩き続け、死にゆく感覚を取り戻すためには十分すぎる感触だった。
「やあ、元気そうだね。」
突然の声に思わず叫び声が出た。もう一つの椅子に見知らぬ男が足を組み腰を落としていた。耳の中でぼわぼわと声が響く。
「すまないね、少し遅れてしまった。前のヤツがドジでね、いやあ参ったよ。」
「前のヤツ?ここに僕たち以外の人がいるのか?いや、そもそもここはどこなんだ?なぜ僕がここにいる?」
「ああすまんね。説明せねばならないな。ここは君のために作られた部屋で、私は君を送り出すためにきたのさ。」
「送り出す?どこへ?目的は?」
「私は、ああ少し待っていてくれ。えーと・・・。」
男は体をねじり椅子の裏をせわしなくいじくり始めた。そこから一冊の薄いファイルを取り出し、びっしりと張られた付箋の中の一枚をつまみそのページを開いた。椅子から立ち上がり、姿勢を正した。
「我らはアウセスケィ。外から来た偉大なる冒険者である。グラヌデ第4区画を航行中に新たな特殊トリガーを観測したが、周囲のコントリフス値が異常であり、手を出すことが困難であった。そこで我らは付近にある2級生命体を探した。何故なら超長距離用次元ロープに耐えうることができるからだ。そしてついに2級生命の惑星、ウレファーを見つけたのだ。我々は2級生命体の厳正な選定を行い、ついに君たちが選ばれた!
」
「つまりはあんたらは異星人で僕はあんたらに誘拐されたってわけか。」
「おお、おお、すばらしい!よく理解してくださった!さすが私が選んだだけある!」
「当たってたのか。その説明文は書き直した方がいい。まったくわからんからな。」
「そ、そうかい、ははは。まあ、そんなわけで君は冒険者に選ばれたわけだ。次は仕事の話だな。仕事は簡単、隔離次元世界内でトリガーを見つけてそれを起動させるだけだ。単純明快、誰でもできるさ。」
顔をしかめつつ早口で答えると、どさりと椅子に座り、腰を折って手を組みこちらを見つめてくる。これはこれから”相手”にとって極めて心情的で抽象的で詩的な話をする合図だ。さあ、大事なのはこれが”自分”にとって当てはまるかどうかだぞ。
「急に連れ去られて、こんなわけの分からない仕事を押し付けてしまって本当にすまないと思っている。しかし今、我々は窮地に立たされている。このままでは君の星のみならず宇宙すべてが消滅してしまうのだ。頼む、宇宙を救ってくれ。」
長い沈黙が続く。宇宙を救う。この男は確かにそう言った。話が突飛すぎてなかなか飲み込むことができないが、彼の言うことは真実であることはこの姿勢と目で分かる。こうなれば仕方ない。ぐっと両手のこぶしを握りしめる。覚悟は決めた。僕は大きく深呼吸をし、彼の眼を見返す。
「さあ、答えを聞かせてくれ。」
「いやです」
ごん。僕は意識を失った。
とにかく書く、完成する、ということを目標にして細かなプロットを考えずに進めています。ストーリーも難しくせず、あまり凝らずにしようと思っています。完結せず消滅することがないよう頑張りたいと思います。