北へ
ハイ、すみません。
そうだ、北端へ行こう。
と言うことで思い立ったが吉日理論によって準備を済ませ、ジェズと一緒にヴァリアブルのところに報告に行くことにした。
「───という訳で、北の果てまで行ってきます」
「という訳でじゃあねェよ、急すぎんだろ」
「ダメ?」
「別に良いけどよォ、気をつけろよ」
「?何かやばいやつでも居るのか?」
「こいつを持ってけ」
ヴァリアブルから投げ渡されたそれは、ほのかに温かい青緑色の結晶だった。
『濃星脈結晶』
星脈の力を濃縮して結晶化した物体。
その中にはより濃い星脈エネルギーが秘められている。
「これはもうだめだと思った時に使え」
どうやら『星脈』はこの世界で重要な役割を果たしているらしい。
「行ってこいよ、北端付近にはおもしれェもんがあるぞ」
俺達は王国を後にした。
前回王国に入った街の北側にある路地裏に出る。
どうしようか、また表通りに出たら追われたりすんのかな?
「ジェズー、この前みたいになるかもしれないから空飛んで先行っててくれ」
「わかった。私ももうあれは懲り懲りだからな」
あづっ!
ジェズがブースターを点火して俺の肩から飛び去った。
路地裏としては綺麗な内に入るのであろう路地裏を抜けて大通りへ。
中心部では無いとはいえ、大通りなので人がそれなりには通っているし、生産職のプレイヤーが露店を出したりしていた。
「ようそこの兄ちゃん!初期装備なんて着てないでイカした鎧着ねぇか?今なら安くするぜ!」
「装備なら間に合ってます」
「なんだよ連れねぇな」
「ハハハ」
声をかけられたが何も聞かれもしなかった。
まぁそうだよな、表通り歩いただけで何か聞かれる位の有名人にはたかがスペシャルごときでならないしな。
少し歩いていると南側との違いが何となく分かってきた。
具体的に言うと少し気温が低いように感じるのと、街路樹が紅葉してる所とかだな。
ふいにアスファルトで舗装された道が途切れた。
街の外に出たのだ。
目の前には木々が紅葉して風で落ち葉が舞う森林。
『木枯らしの森』に入った。
「ヒサギ」
「おうジェズ」
ジェズとも合流を果たし、俺達は森の中に入る。
森の中は少し強めの風が吹いていて、それにより落ち葉が舞っているので視界がクソ悪い。
「随分と戦い辛そうだな」
「まあ近接の俺らはまだマシだろ、ここで狙撃とか無理だから」
地面に落ち葉が敷き詰められているので足場が少し悪い。
嫌がらせフィールドかな?
いきなり前から何かが突っ込んできた。
「おわっ、なんだお前!」
反射的に飛び越える。
すると何かは少し後ろで急停止し、振り向いてこちらを見据えた。
茶色、赤、黄の迷彩の様な毛の猪が低く唸る。
「シッ!」
ジェズがブースターを吹かして突っ込んだ。俺もそれに便乗して突っ込む。
猪は顔をジェズの翼で殴られ、間髪入れずに俺の飛び蹴りをくらった。
「ぶぉぁぁぁびがぁぁぁ!!」
スタン状態だ。
頭部(脳が入っている場所)を強く揺さぶられるとかかる状態異常で、一定時間動かなくなる。
「なんでこの世界のモンスターの悲鳴は全部おぞましいんだァァァァ!!」
右フック、左後ろ回し蹴り、左手刀、最後に屈んでから跳躍の勢いをのせてアッパー!
猪が破裂音と共に弾けた。
【レベルアップしました。『徒手空拳』を覚えました。】
やったぜ。
ドロップアイテムは...?
『突撃猪の毛皮』
アサルト・ボアの毛皮。
マントに加工できる。
『スキル秘伝書:突撃猪の書』
スキル『猪突猛進』を覚えられる秘伝書。
レアドロップじゃん。
スキル秘伝書は読むだけでスキルを習得出来るアイテムだ。各モンスターのレアドロップの一つとしてあるらしい。
ダレてきてしまったり、設定がガバっている部分が多々あったりしたのでしばらくロスワド更新休みます。
その間は別の短編等を書きます。