踊〇大捜査線スペシャル
前回までのあらすじ!
体が半分機械で出来たネズミを不慮の事故で叩き潰してしまったヒサギは同じく体が半分機械で出来た鷲に襲われる。誤解を解いてネズミが持ってたヤバそうな鍵を鷲に返すとお礼をしてくれるのだそうで鷲に着いていった。すると恐らく地下にあるドーム状の空間に出て、そこは半分機械の動物達…半機械獣の王国だと言うことを知らされる。そこの王にして、やけにフランクな性格の機械的ハスキーボイスドラゴン、ヴァリアブルと何やかんやあって半分機械の鷲、Jと取り敢えず王国を見て回る事になったのだった!
「まず中央から光を放っている柱はリアクターといってな…」
「(戦闘がしてぇなぁ…)」
Jは呆れたように溜息をついて、
「分かった。ヒサギが聞く気にならないなら案内をしても意味が無い。街の外へ行こう」
「ありがとうJさん分かってるぅ!」
ヒサギはドームの端まで階段を上ろうとしたが、Jがそれを止めた。
「何すんだよ」
「焦るな、ここに入るのには鍵が要る。出るのにも鍵が要るのは分かるだろう」
「そうか…つーかこの空間はどこに有るの?」
「ここは『街』の中心の地下だな」
「あの変なオブジェの下?」
「そうだ。出入りする為の鍵だが、ヒサギにも渡しておこう。これがあれば街のどこからでも外へ出られる」
Jが虹色に輝く鍵をヒサギに放り投げる。
星脈循環器の鍵はカードキーだったが、こちらは昔ながらの鍵と言うか、ファンタジーチックな形をしていた。
王国への鍵
半機械獣の王国と繋がる鍵。『街』の中の壁に使用するとと王国への扉が開く。王国の中から再度扉を創ると、入った地点に扉が開く。
ヒサギは鍵を王城の扉に差し込み、捻る。
「何故そこに…」
「扉に扉って面白くね?」
「君は時々知能が著しく低下するのだな…」
「知能低下とは失礼な。NPCと合体とか壁から剣を生やしたりとか、誰だってやるだろ」
「・・・」
ヒサギとジェスは扉をくぐり、地下通路へ。
ヒサギの肩に乗ったJの指示に従って歩く。
「そう言えば、ヒサギからの質問に答えていなかったな」
「そう言えばそうだな」
「ここはな、私達が人目につかないように街を移動する為の通路だ。私達は人間との交流が無い訳ではないが、出来れば最小限にしたい。トラブルの元だからな。そういう訳でこの地下通路は交流のある人間の建物と直接繋がっているのだ」
「へぇー、お前らも色々大変なんだな」
「その結構大切な通路を地上からぶち抜いたのは誰だっけなぁ?」
「ごめんなさい」
「今度修復をしたてくれた奴らに礼を言うんだな」
しばらく歩くとエレベーターが見えた。
上のボタンを押して乗る。
「エレベーターか」
「この通路からの出口は私達と交流のある人間の建物と繋がっているんだ」
「ここは何と繋がってんの?」
「君が着ているそれにまつわる所だ」
「ジャンパーシリーズ…製造元は…ドワーフ・カンパニー?」
エレベーターが止まる。
扉が開いた先には
地獄が待っていた。
「ビギナーシリーズの価値が大暴落だ!!」
「新シリーズ原案ボツだ!こんなん作れるか!!」
「ぎゃああああ!!」
「フヒヒヒッ納期、ウヒィ、フヒヒッヒヒィ原案ボツ」
「俺この激務が終わったら結婚するんだ…」
「ぼくおうちかえりたい」
「コピー用紙おいしい特にボツになった原案おいしい」
「気をしっかり保てェ!!」
「課長!発注先の工場長が倒れたそうです!」
「ッ!?」
「クソが!在庫がまだ巨大倉庫2つ分余ってんだぞ!」
「ビギナーシリーズ以外の商品は!?」
「在庫がもうない!元々少ししか発注してねぇんだ!」
「読みを誤ったぁぁぁぁぁぁ飛ぶしかねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「社長おおおおおおおおおおアパレルブランドのトップがほぼ全裸で身投げはダメええええええええ!!」
エレベーターの下降ボタンを押す。
「ふぅ…帰るか」
「そうだな…」
「もう1回上がれば…そう、みんなキラキラした顔で働いてて、労働基準法の概念が存在してて、経営とかの手腕が凄そうな社長が社長椅子に座って暇そうにしながら俺達を迎えてくれるんだ」
「そうだな…」
エレベーターの上昇ボタンを押す。
扉が開いた。
「エナドリを寄越せぇ!バケツでだ!!!」
「エナドリはバケツで売ってねぇだろ!入れる意味がねえ!」
「じゃあ樽で寄越せ!」
「駄目だこりゃ」
「前来た時と様子が変わり過ぎてて驚いた」
ヒサギ達は先程社長と呼ばれていたパンツ一丁の30歳ほどの男に話しかける。
「すみませーん。お時間頂いてよろしいでしょうか?」
「あ゛ぁん?ジャンパーシリーズを着た冒険者?あれ?俺は今なんの幻覚を…」
「幻覚じゃないです社長!王国関係者の方です!」
「王国から来ました冒険者のヒサギですよろしく」
「君は勝手に王国出身みたいに自己紹介するなよ別にいいけれども。半機械獣のJだ、久しぶりだな社長」
社長は一瞬フリーズした後
「ッは、王国!、そうだ王国だ!J君、ヴァリアブルに融資お願いしていいかな!?このままだとマジでこの会社潰れる!」
「分かった。リーダーには伝えておく」
「あ゛り゛がどう゛!!お陰で身投げしなくて済む!」
30くらいのおっさんが鼻水とかでぐちょぐちょになりながらパンイチで泣きつく姿は正直キモかった。
ヒサギ達はオフィスビルを出て、街の外側へ。
大きい通りを歩きながら何処へ行こうか相談していると周りからの視線を感じた。
「(何人か、いやここら辺全員からガン見されてる!?)」
そう、ヒサギは忘れていたのだ。自分が進めているシナリオはスペシャルシナリオだと言う事を。
ヒサギは知らなかったのだ。半機械獣はフレーバーテキストやその他クエストで存在が仄めかされており、大規模捜査が行われている事を。
明らかな初期装備だった事も原因だ。
このゲームで初期装備を着ているプレイヤーは少ない。
なぜなら初期装備を装備しない事を選択して浮いたGでワンランク上の装備を買うのが常識と化しつつあるからだ。
そのため、ヒサギはただの初心者だと見られた。
誰かが声をかけるのは時間の問題だ。
「ねぇ君」
金髪碧眼の見るからに見た目重視装備を着たプレイヤーが話しかけてきた。
「なんでしょう」
「その鷲ってさぁ…どこで会えたか教えてくんない?」
「嫌です」
「Gも弾むしさあ、レベリングも手伝ってあげるよ?」
「なんで教えなきゃいけないんですか」
「いやそもそもさぁ、初期装備も売ってない初心者なんだからさぁ、上級者の俺の言う事はある程度従った方がいいと思うんだよね」
ヒサギは対人用挑発モーションを敢行して
「誰が従うかバーカ、スペシャルも発見出来てない自称上級者は黙ってろ」
「あ゛?」
すると金髪を押しのけて鎧騎士が割り込んできた。
「初心者に対する横暴な態度、自称上級者だとしても目に余る!ささっ、そこの金髪は置いといて、我らのギルドハウスへ行こう。歓迎するぞ!」
さらに鎧騎士を押しのけて赤髪ロングのおねいさんが割り込んできた。
「アンタも結局ギルドハウスに連れ込もうとしてんじゃん。ねぇ君、こんな野郎共ほっといてお姉さんとお茶しない?」
さらにそれを押しのけて
ムキムキのおっさんが…
渋い声のロリっ娘が…
ちょび髭が…
キャピキャピ声のジジイが…
エセ侍「久しぶりでござrうぁぁぁ!」…
人だかりというレベルの話では無くなってしまった。
さながら夏と冬にやる某三日間のヲタクイベントの待機列、
リアルに人が常にいることが原因で気持ち悪くなるぞ!
「うぁぁぁやべぇぇぇミスったぁぁどうしようJ!」
「とりあえず逃げよう!私も君も、下手したら圧死するぞ!」
「全くだ!『シューティング・スター』!」
スピード・ダイブから進化したスキルを起動。光と星のエフェクトを撒き散らしながら人だかりを飛び越える。
「あっ!逃げたぞ!」
「追え!」
「追うんじゃねえ!少しはモラルを考えろ!」
「そんなの知るか!」
「おい馬鹿どもやめろ!」
6割くらい追ってきたので逃走を開始する。
ジャンプしてビルの壁を蹴って上り、ビルとビルの間の通路へ。
ビルの間を跳ねまわりながら屋上へ。
街のビルは屋上等も移動出来るようになっている。
ヒサギ達はビルの屋上から屋上へ、映画のワンシーンのように何ちゃってパルクールで移動する。
「クソっ!あいつルート割り出しがうめぇぞ!一筋縄じゃ行かねぇ!」
ビルとビルの間を飛び越える。
すると下から拘束系魔法と銃弾、アメリカンクラッカーのような拘束アイテムが飛んできた。
「おわっ!危ねぇ!」
間一髪で躱して再度走り出す。
後ろからは悲鳴と落下音が聞こえた。
配管を足の踏み場にして壁を上り、看板と屋上の隙間をスライディングして潜る。貯水タンクを剣で切りつけ、室外機を蹴り倒して即席のトラップにする。
「思いっ切り器物損壊してるけどいいのか?」
「いいんだよあいつらのせいだ」
逃げ続けていると追っ手も学習するようで、いつの間にか大きい交差点の角部分に追いやられていた。
地上には捕獲要員が。
「チッ、万事休すか…」
「ヒサギ!掴まれ!」
ヒサギがJの足に掴まる。
そして空中に飛び出した所でJのブースターが点火する。
2人は飛び出し、追っ手の居ないビルに着地。
「掴まるなら俺達に捕まれよ!」
「ちっとも上手くねぇからなそれ」
すると街の警備NPCが来た。
「通報があって来た!1何の騒ぎだ!」
「…迷惑行為…よくない…」
「ジャック、こいつら殺していいの?ダメなの?」
「…メリー…基本的に…人は殺しちゃダメ…」
警察のような集団とそれに明らかに溶け込めてない個性的なNPCがチラホラ。
「うわぁケーサツ来た逃げよー!」
「マジか制裁者もいんじゃん、警察はともかくあいつらは無理だ!じゃあなとっつぁん!」
ノリが軽い魔法少女やモミアゲの怪盗が逃げる一方。
「メリーたん!ボクを殺して!出来れば踏んで!罵って!」
「マジか目撃情報が少ないジャックたそもいんじゃん!かぁいいなぁデュフフ」
「あの2人の絡み…尊い!待って辛い、マジ辛い尊すぎて辛い!」
「制裁者…、出現条件がハッキリしないが仮説としてはプレイヤーによる一定数以上の通報…?とNPCからの目撃情報?それに建物の破損も…」
どうしようもない変態共はそれぞれの欲求を満たそうとしている。
「散々だったな…あとJありがとうな」
「礼を言われるまでもない。それにぶっつけ本番だったからもしかすると君の手足が千切れてたかもしれないからな。成功して良かった」
「えぇ…」
ヒサギ達は休憩を挟むことにした。ヒサギの要望だ。
「今からホテルには戻れないしなぁ…どうしようか」
「王国に戻ればいいじゃないか」
「?、王国にもホテルあんのか?」
「ホテルはないが…私の家にぐらい泊めてやるぞ?」
「マジか」
という訳で近くの路地裏から王国へ。
王城の前に出た。
「なんかあんま時間たって無いのにすげぇ久しぶりに感じる」
「それもそうだな…あっちだ」
Jの指示に従って王国を歩く。少しして住宅地らしき所に着いた。
Jに案内された家は、三階建ての6LDKだった。
「豪邸やないかーい」
「そうか?」
中に入ってから
「そうだ、人間用のベッドがない」
「ソファで寝るよ」
「すまんな」
「おやすみ」
「おやすみだ」
ログアウト。
「LOSTWORLD 半機械獣っと」
0ヒット。正確には何個かあったが半機械獣を除外ワードにした結果だ。
「成程」
「LOSTWORLD 鷲」
ヒット。
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