半機械獣に誘われて
半分機械の鷲について歩くこと2、3分、鷲が立ち止まった。
「ここだ」
「行き止まり?ッ!?もしやお前はここで終わりだという無言のメッセージで俺は殺される展開か!ただじゃ死んでやんねぇからな!」
剣と盾を構える。
「もしかして君は私が思ったよりも知能が低いのか?」
「うるせぇ冗談だ」
鷲が溜息をつく。
「これから行く先では君が武器を構えていると少し面倒な事になる。武器をしまってもらえるとありがたい」
「おけおk」
鷲がさっきのとは別の虹色に輝く鍵を取り出す。
そしてそれを壁に突き刺し、回す。
鍵を中心として壁がに穴が開き、その先には────
「半機械獣の王国へようこそ」
ドーム状の超巨大な地下空間。中心に近づくにつれ低くなっており、中央にある大きな建物から4方向に巨大なパイプが地を這うようにして伸びている。
階段状になっている床の各段には様々な建物が並んでおり、巨大なパイプの表面を脈打ちながら流れる青い光がそれらを照らす。
「これは…凄いな」
「自己紹介をさせてもらおう。私は半機械獣のJだ。よろしく」
「俺は冒険者のヒサギだ。こちらこそよろしく」
改めて俺は半分機械の鷲…Jを見る。
青みがかった羽毛、体の左側の大半が機械で出来ていて、左目は蒼く光っている。
右の翼には左の翼と同じようにジェットブースターが。
右目周辺は赤く染まっていて、目は朱色だ。
「君の事はヒサギと呼べばいいか?」
「おう。よろしくなJ」
Jが肩に留まってきた。
「中央の建物だ」
「お前結構重いのな」
「すまんな、離れた方がいいか?ずっと飛んでいるよりかは煩くないしいいと思ったのだが」
「いやいいよ留まってて」
俺はJを肩に乗せながら中央までの道を下る。
ふと横の町並みを見ると、半機械獣達が様々な店を出したり買い物をしたりしている。
だがその数は少なく、町には普通の動物…というかまだ見た事はないがモンスターなのであろう者達が大半を占めている。
それでもこの空間に見合うほどの数はいないのだが。
中央の建物は端的に言うと砦だ。
それもゴッテゴテの機械で出来ている。
「街とその地下は思いっきりサイエンスなフィクションなのに街から出た瞬間にファンタジーと化すのは何故だろうな…」
「・・・」
「まぁいいか。いずれ分かるか」
砦の正面扉の前に立つ。
『生体認証中…J、unknown、を確認』
「unknownをゲストとして登録してくれ」
『了解。処理中…J、ゲスト1、を確認しました。解錠します。』
扉が自動で開いた。
中へ進む。
「ここが王城だ。王城と言っても名ばかりなのだが」
「王様が居るならそれだけでいいだろ」
「そういうものか…?」
「そういうもんだろ」
今度は少し豪華な扉の前に立つ。
ドラゴンと歯車の意匠が施してあった。
「ここから先が王の間だ。大丈夫だとは思うが品性を疑われるような言動は控えて欲しい」
頷いて返事をする。
ゲームだろうが何だろうが重役と話す時は緊張するものだ。それがシナリオ的に重要なキャラならなおさら。
Jが器用に翼でノックをする。
「入れ」
機械的ハスキーボイス、かっけえ…
扉の龍が口を開けると、それに合わせて歯車が回転する。
歯車の回転に合わせて扉が開いていく。
「J、よくぞ戻った。そして冒険者よ、鍵の奪還を感謝する」
「初めまして陛下、ヒサギと申します。以後お見知りおきを」
「我はヴァリアブルドラゴン。出来損ないの龍種にしてこの国の王を務めている」
全身が機械でできている龍の元に跪く。
「そんなに畏まらなくても良い。お…我は寛大なんだよ…なのでな」
「リーダー」
Jが呆れたように言う。
「っ!しょうがねェだろ!王っぽい言葉使いとかわかんねぇしよォ!」
「!?」
「あー、もういいや。うん。俺ァヴァリアブル。この国で王をやってる。硬っ苦しいのは嫌いでよォ、王っぽい感じにァ出来ねェんだわ」
「(J!おい!俺はこれにどう返せばいいんだ!)」
「(はぁ…こうなってしまってはいつもの口調で構わない)」
「(お前の事信じるからな!しくじったらお前のせいだからな!)」
気を取り直して。
「俺はあのネズミを殺したけどいいんすか?ここにいて」
「王たる我に対する敬意の欠片もない言葉使い。なんたる無礼!ゆえに貴様を処す!」
「(コイツぶん殴っていいか!?)」
「(出来ればやめてくれ、一応アレでも王なのだから)」
「だはははははははははは!冗談だよ許せ」
ヴァリアブルはひとしきり笑った後、溜息をつき
「アイツも本当にやらかしたらいけねェことぐらいわかってたハズなんだがなァ…」
遠い目をしながら呟く。
「まァ、何はともあれ鍵を取り戻してくれたからには礼をしなくちゃな。何がいい?」
「どうしようか…うーん保留って?」
「できるぜ」
「じゃあ保留にさせてくれ、まだこの世界にも慣れてないんだ」
ヴァリアブルは頷くと少し考え、なにか閃いたような素振りを見せる。
「お前Jを連れて行け。Jァ外の事もよく知ってるしよォ、体も鈍ってんだろ。さっきもこの世界に慣れてないらしいヒサギに負けそうになってたしなァ」
「ッ、それは…」
「いいからよォ、久々に外で遊んで来るのもいいんじゃねェのか?」
という訳で。
《パーティメンバーにJが加わりました。》
《スペシャルシナリオ:半機械獣に誘われて をクリアしました。スペシャルシナリオは次のチャプターに進みます。》
《スペシャルシナリオ:半機械獣王国史 修行編 がスタートしました。》
王城を出た俺達はひとまず王国内を回る事にした。
ネーミングセンスがねー