巨大な中ボス
「ビルディング・コンストラクト!!」
俺はトーナメントのときに活躍した魔法を使った。
俺たちは今無限迷宮に潜っている。みんなは階層で言えば地下70階くらいまで進んだようだが今回は深く潜ることが目的ではない。
前作、Vast labyrinthでもそうだったが、この迷宮も一部横に広くなっているのだ。
具体的には無限迷宮の49階には三つも下の階に降りる階段があった。
一つは見つけやすく、その階段はボス部屋へと繋がりボスと戦えるわけだが残り二つ隠し階段があり、ボス部屋ではない地下50階が存在したのだ。
その階は地下への階段が全く無いまま、延々と広がっている。正しく言えば、ある方向に向けて迷宮が構築されている。
前作では横方向に迷宮を踏破するとその後上の階へ登る階段があり、上りきると新しいフィールドへ出られる様になっていた。
したがって今回もそうなっているだろうということで、俺達は探索している。
「魔法要員が二人になると火力が出るなあ!!」
「エリウムさん、次の敵来ますよ! 奥からレッド・フォックス4体です!」
「オッケー! 『スロウ・リベバレーション』!!」
接敵するのを探知するのはベリリーがやって、複数体ならエリウムがデバフをかける。その後ボーロンとベリリー中心で敵を後衛から守りつつ火力をぶつけて倒す、といった感じだ。
「あ! ロージェさん、ティウ、後ろから『フレイムスケルトン』が来てます!」
「「スタンブル・ストーン!!」」
トーナメント戦のおかげで二足歩行の敵に対してはスタンブルストーンがかなり有用であることがわかった。
どうぐ使いの魔道具は本来敵のいる場所に直接魔法を行使することはできないが、俺はなんとか敵のいる場所に相対座標を加味してスタンブル・ストーンを使えるようになった。
今までは前、後ろのどっちから来てもボーロンが守れるようにしていたが後ろから来る敵もこうやって足止めをすることができるようになったおかげで敵からダメージを喰らうことも少なくなった。
「ウォーターフォール!!」
滝のように水を相手にぶつける中級魔法であっけなく敵は倒れた。
「私はつまらない。なぜなら誰もダメージを喰らわないからだ。おまけに敵の防御力も低い……」
ノブラックは暇そうだ。
「まあそう言うなって。そろそろ中ボスだろ?」
「そうだね。そのときには頑張るよ」
かなり奥まで来たような気がする。ここに潜ってから既に3時間ほどが経過している。
目の前に巨大な石の扉が現れた。
「あの中に中ボスがいるみたいだね。掲示板の情報だと必ず火属性のボスが出てくるみたい。数種類の中かランダムで出てくるみたいでいまいち詳細はわからないや。」
「よし、誰か、準備ができていない人はいるか……? いなそうだな。行くぞ!!」
ギィという重く軋む音と共に観音開きの巨大な扉が開く。
中に入ると円形の空間になっていて、外側からは溶岩の滝が流れ出ていて、それが円形の地面を囲むような溝に流れ落ちている。
「どうやらこれだと壁際に追い詰めて戦うのは厳しそうだな。なんとか初期位置から相手を動かさないように頑張ろう。」
そう。今回はある実験をしたくて六人総出でここに来た。
それはノブラックのあれがボスにも聞くのかどうかを実験するためだ。
「おっと、敵のお出ましか」
床に魔法陣が現れてボスが出現する。ん? この魔方陣の大きさは――
「おい!? まてよ、何だこのデカさ! これヤバくね?? 全員、一旦後退だ! なるべく魔法陣から距離を取れ!」
「ウォォォオオオオオ!!!」
出てきたのは巨大な牛のようだ動物だった。ただ、角のところから火が出ているし、全身黒ずんでいて刃が通らなさそうに見える。
「アーリー・ビート!!」
「エリア・リジェネレーション」
「アクセネーション・トキシン」
「鉄壁の防御壁!!」
エリウム、ノブラック、俺、ボーロンがそれぞれ魔法やスキルを使う。
「来るぞ!」
「スリップ・トラップ!」
「スタンブル・ストーン」
相手が早速突進してきたためベリリーとティウが魔法を使う。
だが、どちらも一切効果がないままこっちに突っ込んできた。
相手の体がボーロンに激突する。だがボーロンが大盾で受け止めているのに対し、それにぶつかっているのは足だけなのだ。
「まずい、こいつデカすぎる!!」
高さ3メートルはあるかという巨体がボーロンにあたり、そのままボーロンを押していく。
流石に簡単にどかすことはできないようで相手の進むスピードは遅い。
俺は急いでボーロンにHPポーションを投げる。
「次の攻撃くるぞ!!」
相手が突如として火を吹いた。ブレスと言うよりはビームとも言うべき線状の炎が空気をも焼き尽くす勢いで襲ってくる。
しかし俺達の所にその炎が届くことは無かった。あるのは目の前の巨大な水の壁のみ。
「ウォーター・ウォール!!」
「え? どういうことだ?」
おもわず口に出してしまった。実際詠唱無しで水の壁が出現したかと思えば、その後になぜかその魔法の名前を口に出している。
いや、これはあれか、おそらく詠唱を後回しにするような事ができるのだ。まあ今はそれはいい。俺はダメージを喰らいながら耐えるボーロンにポーションを連投していく。
「まずい!!」
そうボーロンが叫んだ瞬間、相手は勢いをつけて炎をまといながら突進してきた。
あまりの勢いの強さにボーロンが弾き飛ばされ、宙を舞う。
「エア・クッション!」
なんとかティウの魔法のおかげで落下ダメージは防ぐことができた。しかしかなり状況は厳しい
「私が敵をひきつけます!」
ベリリーが飛び出していった。
その間にエリウムと俺でバフを掛け直す。
ボーロンも再び前に出た。
ベリリーの素早い動きに翻弄され、敵の攻撃もうまく当たっていないようだ。
「きゃあっ!」
苛ついた敵はその巨体をいとも簡単に浮かせ、地面を鳴らした。
その瞬間に全方位に火が走る。
「クソ! ボーロン、ベリリー、ノブラック、ティウ、ロージェ、オレの順番で回復してくれ!」
「了解。」
今エリウムが治せと言ったのは火傷だ。かなり高位のスキルだったのか、見事に全員が重度の火傷を負った。
火傷の治療薬は一つで一人にしか効果がない。
だから六回使うまでにはかなり時間が空いてしまう。
俺のHPゲージも目に見えて縮んでいく。
ああ、あのPVPのとき、俺に倒されたプレイヤーは――
こういう気持ちだったんだな。
俺よりもHPが逼迫していた四人に火傷治しを使ったあと、次にようやく俺が回復できる、というところで――。
「ロージェ避けろ!!」
「え?」
反射的に横に1m転移するブーツを起動させたと思ったら、真横に火の玉が飛んできた。
飛んできたと言うより「撃たれた」
あ、まずい、これでは火傷治しを使っても俺のHPが尽きて死ぬ。
だがHPポーションを使って、その後火傷を治しているとエリウムが死ぬ。
詰み。この状況はそう呼ばざるを得ないものだった。
「リバース・リザレクション!!」
ノブラックがこの魔法を使っていなければ。
敵のHPバーは消え失せ、あとにはドロップアイテムが残った。
「やばいやばい死ぬ死ぬ死ぬ」
「エリア・クーリング」
ノブラックが火傷を治す範囲魔法を使ったようだ。
状態異常にかかった場合戦闘が終わってもダメージは喰らい続ける。
それで命を落とすことも十分にあり得るのだ。
「ドロップアイテムは魔石ばかりですねー。ちょっとがっかりです。」
「まあこれでも中ボスだしな。こんなもんだろ。さ、今日は終わりだ! 帰るぞ!」
部屋の入口とは反対側に合った扉が開き、先にすすめるようになった。
この先に行けばもっと面白いものがあるのだろうが今日はもう時間もないし、きっと行っても死ぬだけだ。
クランハウスに帰ったあとミーティングもどきをした。
「やっぱり神官がいないと状態異常喰らったときに安定しねえなあ。」
「それに、今回は運が良かったようだけどロージェが喰らった火炎弾みたいなやつ、あれを私が受けていたら詠唱はキャンセルされていただろうからね。」
そう、ノブラックが使う「リバース・リザレクション」だがこれを成功させる条件は相当厳しい。
・詠唱中に状態異常以外のダメージを食らうと詠唱はキャンセルされる。そうしてキャンセルされるとそのあと15分間という長いCTを待たなければならない。
・MPも術者の最大MPの75%を持っていかれる。
・敵が離れすぎると詠唱が完了しても行使できない。
・敵が一体(一人)のときにしか使えない
といったところだ。
これらを達成することがかなり難しいのだ。
これを切り札にしつつ、今後どうやって強化していくかを考えていかなければならない。
ポ○モンに、やけどなおしみたいなアイテムありましたよね……
今回出てきた「火傷治し」はアイテム名ではなく、あくまで「火傷を治すアイテム」として出てきております。




