閑話 最大の敵はテスト期間
教室のチャイムが鳴り昼休みが始まる。
俺は資料集のタブレットとノートをかばんの中にしまって弁当を取り出した。
「一緒に昼ごはん食べよ?」
ボー……宝蔵が俺を誘う。まあ大概昼飯はいつもふたりで食べているのだが。
「あーあー、ノb……あいつが優勝したのもつかの間、もうテスト期間かぁ。」
「まあしょうがないよね。学生だもん。」
「それにしても、学校でもかなりILのバトルトーナメントの噂は流れているけど、あいつの正体はバレてないな。」
「まあ顔が同じ作りと言っても装備とかで雰囲気全然違うし、まさか大会優勝者が同じ学校にいるなんて思う人いないでしょ。」
「だといいけどなあ。」
稀にレメント王都の中でクラスメイトとすれ違うが基本知り合いにゲーム内で会うことはない。
「ってかさ、やっぱりあのソードマンってやつの剣使いが一番すごくね?」
「あれは確かに憧れるよな。噂じゃVRの剣術教室みたいなところで七段だとか」
「おい、マジかよ、それは納得だわーー」
教室の中央で大声で話している連中がいるな。一試合目の戦士の話か。
「ねえ、そういえば召喚士の決勝戦、見た?」
「ああ、あのあと公式サイトで見たぞ。」
「あの蛇、どこにいたんだろうね。」
「今話題になってるけど全くわかんないよな。まあ多分モンスターの進化だって言う話だけども。」
召喚士はフィールド上にいるモンスターのHPを削り、専用のスキルを使うと確率でモンスターを味方にでき、以後は呼び出したいときに好きに呼び出せるというものだ。
一度仲間にしたあとはそのモンスターはLvが大幅に下がるが、共に戦っていくことで再びLvを上げることができる。
だがダンジョンの中にいる敵は捕まえることができないのだ。したがってあのプレイヤーが使ってた大蛇はフィールド上の何らかの蛇を進化させたということになる。
「あー、俺も一回召喚士やってみようかな~。確かモンスターとめっちゃ仲良くなるとか、もともと賢いモンスターだと召喚士から他の職業に転職しても指示に従ってくれるんだろ?」
「そうみたい。流石にどこでも召喚できるってわけではないけど連れて歩くことはできるから小型のモンスターなら一緒に夢幻迷宮に潜れるかもね」
「じゃあさ、みんなで一体ずつモンスターを捕まえれば合計12人? で戦えるんじゃね」
「いや、それ絶対育成に手間取って時間を無駄にするし、第一進行速度めっちゃ落ちるよ。」
「だよなあ……。」
「まあ、ロージェがどうしてもモンスター飼いたいならいいけど、あんまり時間を取られすぎないようにしてよ?」
「ああ、まあ最悪自動で餌をやる機械でも作るさ」
「うわっコノヒトサイテー」
「ねえ~聞いてよ~、私の推しのカリスケさん、昨日負けちゃったんだけど~」
「うわ~それ辛いやつだー。相手はどんな人だったの?」
教室の片隅で弁当食ってるだけでも結構いろんな声が聞こえて面白いな。
なんかティウが友達にカリスケとかいうノブラックの対戦相手の話をされてるな。なんかちょっと笑いをこらえている気がする。
「それがよくわからないのよ~。カリスケさんがいつもみたいにかっこよく魔法を掛けていて、効いてるのかなーと思ってみてたら、カリスケさん倒れちゃったの。」
「へ……へぇ~。私よくわからないけど、残念だったね。」
「ははは、ざまあみろ!」
「こらバカ!」
「え?」
軽部――エリウム――が急に割り込んでその女子にざまあとか言ってるし。熱田さんにめっちゃ叩かれていて、さっきカリスケのことを話していた女子はポカンとしている。
まあ軽部はよくふざけているからその一環だと思われるくらいで済むだろう。
軽部はそそくさと何事もなかったかのように教室を出ていった。
「あー悔しい!! 悔しいからゲーム内でカリスケさんのクランハウスに「次機会があったら今度こそ勝ってください」っていう手紙をだす!」
「あははは、カリスケさんもファンからの手紙とか多くて大変そう~」
「あれ? そういえばティウっていつも昼に教室にいたっけ?」
「んー? その人が誰か知らないけど、熱田さんは普段は部活の昼練でしょ? いまテスト期間だから」
「やべっ……うっかりゲーム内の癖がっ」
「ちょっと、今僕らのメンバーの中で一番仮想と現実の区別怪しいの水谷なんだから気をつけてよ。」
「へいへい。」
テスト期間に一度でもILにログインすると数時間やってしまいそうで怖いから俺は三日に一回1時間だけポーション生産ラインの確認をするだけにした。
やはりバトルトーナメントが終わるとポーションが再び売れ始め、代わりに金属が売れなくなってきた。
まだまだ鉱山から取ってきた鉱石が残っているし、なにか他の使いみちでも考えるかなあ……。
テスト期間は地獄だった。
勉強していてもついILのことを考えそうになるし、英語を書こうとするといつも魔法陣に書いているアレを書きそうになってしまう。
とはいっても運動部ほど忙しくない俺はテストもそこまで苦手なわけではない。教科によっては50人のクラスで三位には入る。
あーILやりてーー
と心の中でつぶやく毎日。
それが終わりを告げた。
「はいそこまで! 筆記用具を置いて、答案用紙を後ろから回収してください」
「おい宝蔵! 帰るぞ!」
「はいはい、ちょっとまってっと……。よし行こう」
なんだかんだ言って宝蔵もとっとと準備を済ませて帰る気万端だったようだ。
これで暫くはゲームやり放題だし、それにあと二週間ほどで夏休みだ!!
夏休みになると運動部のエリウムとティウはなかなかILにログインできなくなるため残りの四人でプレイすることになる。
そうなる前にパーティープレイとしてやりたいことはあらかた済ませてしまいたい。
「じゃあな! また後で!」
「ばいばーい」
今回掲示板回は入れずにこういう形にしました。もし掲示板回が見たい!又はなくていい、等の意見がございましたら感想欄へお願いします。あれ、結構書くのに時間がかかるんです……。




