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インベントリ大拡張

 昨日鉱石の爆破採掘をしていたら思っていた以上に早くインベントリが満杯になってしまった。


 一番欲しかったミスリルは採掘した分をほぼ全て確保できたから良かったものの、価値の低い銅鉱石、鉄鉱石などは大分捨ててしまっていて勿体無い。


 そんなわけで今日はインベントリ拡張クエストをこなしていくことにした。

 ちなみに今日も残りの五人は無限迷宮で新しい層の攻略に行くとか言ってた気がする。いま最前線はどういった状況なのだろうか。


 気になるけど俺は俺でやりたいことがあるからまたこんどの会議のときにでもまとめて聞くことにしよう。最近MMOなのにソロプレイばっかりだなぁ。


 兎にも角にも俺はインベントリ拡張クエストのある王都の中心に近い鞄職人のところに行く。


 王都にインベントリ拡張クエストがあるという話は前から掲示板に出ていた。




 一応このゲームの設定としてはインベントリは特殊なカバンである、ということになっているし実際リュックサックだとかカバンからインベントリ内のものを取り出すこともできる。


 しかし雰囲気を楽しみたいのならそれでいいが、実際戦闘中にポーションをいちいちカバンの中から取り出している暇などありはしないのでウィンドウを操作してアイテムを出現させている人がほとんどだ。


 鞄職人のいる店はなんとも言えない見た目をしている。鍛冶師のところとは違い、建物は完全に木製で遠くから見ると普通の家と間違えそうな感じだ。表の看板に小さい革製のハンドバッグのようなものがかかっているから見ればすぐに分かるのだが。


 建物に入っても誰もいないが、とりあえず声をかけてみる。

 あれ、そういえば職人さんになんて声を掛けたらいいのだろうか。インベントリ=特殊なカバンってことで通じるのかな?


 

「すみませーん、インベントリを拡張してほしいのですけれど」


「はあい、ちょっとお待ち」


 どうやらここの職人さんはいかにもおばちゃん、という感じの人のようだ。

 しばらく待っていると後ろから聞こえていた糸を切ったりするような音が消え、こちらに来てくれた。


「ええと、インベントリを拡張して欲しいだって?」

「はい」

「あんたねぇ、そんなに立派そうなインベントリを持っているならそれ以上いらないんじゃないの?」


 なぜ見てわかるのだろうか。というのはNPCのということにしておいて、問題なのはそんな立派そうな、というところだ。


 確かに一般亭なプレイヤーが最大40スタック、1000個までアイテムを持つことができるのに対して俺のような道具職人と交易人は50スタック、2000個までアイテムを持つことができる。


 しかし昨日やったような爆破採掘をしていると、石灰石C-だとか鉄鉱石D-だとかそんな感じのものがボロボロ取れてしまうんで案外簡単に2000個に到達しちゃうんだよなぁ。

 それにインベントリの容量が大きくて損することなんてそんなに無いだろう。


「いや、ちょっと鉱山からものを一人で大量に運ぶ必要がありまして…」


「クエスト インベントリ拡張その1:必要な材料を集め職人に渡す」

というウィンドウが表示された。すかさず 受ける というボタンを押した。


「そうなのね。わかったけど、インベントリはちと特殊な材料が必要だからその材料を自前で用意してもらうことになるよ」

 げっ。そんなこと初めて聞いたぞ。インベントリの拡張に望む人はまだ多くないらしく、ネットにも対して情報が乗っていなかったせいでもあるだろう。

「どんな材料ですか?」

「拡張魔石っていう魔石さ。インベントリの他にも倉庫を拡張したり、テイムしている魔物に乗れる人数を増やしたりできるものなの。」


 要するに運営がめんどくさいから何かの枠を拡張するときに必要なものをこれ一括にしたのか。


「それはどうやって手に入れればいいんですか?」

「あるかわからないけど市場で探したり、魔石屋で探したり、あとは雑貨屋とかかねぇ」

「わかりました、ありがとうございます。」



 まずは市場で検索をかけるが出てこない。次に魔石屋とかいうところにも言ってみたがやはり出てこない。


 となるとこれはまだ実装されていないのか?

 インベントリ拡張クエスト自体受けることは出来るものの、拡張する手段を運営は用意していないのかもしれない。


 このゲームでのNPCからのクエストは基本的に放棄していても問題ない。放棄して問題があるクエストはクリア条件の中に○○以内にクリア、という項目が存在するはずだ。




 たしか、「クエスト 憧れのダイアモンドを求めて:A以上のダイアモンドを納める」 とかいうクエストを王城で受けることが出来るものの、実際まだダイアモンドはどこでも発見されていない。


 そういう具合に、現時点ではクリア不可能なクエストもいくつか存在し、大概はゲームのアップデートと共にクリア可能になっていく。


 しかし……どこかで拡張魔石を見た気がするぞ…



 どこだったかわからないが、このゲーム内でこの単語を見たのはこれが初めてではないはずだ。


ロージェ:誰か拡張魔石ってアイテム見たことない?


エリウム:え? なんか最近宝箱からよく出てくるから家の共用インベントリに放り込んでるぞ?


ベリリー:あ、宝箱から今「拡張魔石B-」っての出てきましたよ?



 ちょっえっ。

 そうか、俺が見たことあると思っていたのは家のインベントリの中だったのか。金属を錬成し始めてからはその関連のアイテムしか見ていなかったせいで記憶から抜け落ちていたんだ。


 俺は早速家のインベントリを覗いた。


拡張魔石D- ×83

拡張魔石D ×54

拡張魔石D+ ×21

拡張魔石C- ×17

拡張魔石C ×35

拡張魔石C+ ×6


 なんか拡張魔石やたら一杯入っているぞ。これはあれか、宝箱を開けるのを担当しているベリリーのスキルが相当に高いのか、そもそも五人が他の人がほとんど行かないほど深い層にまで行っているのか。


 両方だろうけれどもとりあえず2/3ほどの拡張魔石を持ってカバン職人のところに戻った。



「拡張魔石を持ってきました!」


 そういえば、拡張魔石の質はインベントリの拡張にはどのように影響するのだろうか。


「どれどれ…」


 俺はインベントリから半透明の灰色で大きな空洞のある石、拡張魔石Dをカバン職人さんに渡した。


「おお、いい品質だねえ、これならまあまあインベントリを広げられそうだよ、ちょっとそのカバン貸してね。」


 待つこと1分。


「ほら、できたよ。また広げたくなったら拡張魔石を持ってきな。」


 さて、どれほど広がったのだろうか。


 インベントリの最大個数は2200個になっていた。まあまあかな?

 まだ拡張を続けられるようだし、やってみようかな。








 ここにきてから二時間ほどが経過していた。


「おお、これは相当いい石だねえ。これなら少しは拡張できそうだよ。ちょっとそのカバンを貸してね」

 


 ひたすらこの人と対峙して分かったのは、インベントリにもLvのようなものが存在する、と言うことだ。


 そのレベルを上げるのに必要なものがこの拡張魔石で、これを規定数個渡すごとに決まった量のインベントリ最大数が拡張される。


 しかしもちろんLvが上がっていくと必要な魔石の数、質も上がっていく。この人は1Lv以上上げることのできる魔石を渡したときのみ加工してくれるようだ。



 そんなこんなで今の俺のインベントリの最大枠は……



 8400個になった。


 デフォルトがたった1000個だとは思えない。交易人と道具使いでもデフォルトは2000なのにこれはやり過ぎって感じも否めないが、鉱山での採掘効率を上げることが目的だからこれくらいあってちょうどいいだろう。


 いまはまだなかなか手に入らない拡張魔石を大量に獲得してきたみんなには本当に感謝だな。




 すっかりカバン職人との会話…もといインベントリ拡張作業に時間を使ってしまった俺は急いで日課であるポーションの売却に向かった。




 あれ……?

 いつも300G前後で売却することのできたHPポーションが、一つ240Gで700個近く売られている?



 俺は魔法陣を書き始めたころから恐れていたことが遂に現実となりつつあることを受け止めながら、日課を終えてゲームからログアウトした。

とても長い月日が開いてしまいましたが、何とか無事に投稿再開することが出来てうれしく思います。ここから年末にかけて週1程度のペースで書いていきたいと思います。


半年ぶりに読んでくださった方、本当にありがとうございます!

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