MPポーション作成への挑戦
学校から帰ってログインする。今日はみんな比較的用事が多いため俺とベリリーしかINできない。
とりあえず俺はMPポーションの作り方をまとめてみる。ゲーム内の紙には文字だけならウィンドウから使えるキーボードで文章を入れられるので楽だ。人に送るメッセージも同様である。
1,マナタケを軸と傘とに分ける
2,毒耐性持続薬を容器に入れる
3,マナタケの笠の斑点の部分をえぐり取る
4,マナタケをかなり細く切る
5,細かくなったマナタケを毒耐性持続薬に混ぜる
6,それを10分間ほど冷やしながら寝かせる
7,上澄みの繊維などを取り除く
8,HPポーションを2とは別の容器(耐熱性)に入れる
9,マナタケの軸に細かく切り込みを入れる。
10,それをHPポーションの中に入れる
11,魔石をハンマーを使い細かく砕く
12,砕いたものを乳棒などで細かくすりつぶし、粉状にする
13,粉状の魔石を10の中に入れながら加熱していく
14,きれいな灰色になってきたらマナタケの軸を取り出す
15,ゆっくり温度を下げていく
16,7と15をよく混ぜ合わせる
17,二つの瓶に分けて注ぎ込む
17,それぞれに薬剤錬成と唱える
一度に二つ完成
これがMPポーションを作る全行程だ。更に驚くことに前提としてHPポーションと毒耐性持続薬を必要とする。
毒耐性持続薬は解毒草2つを細かくちぎり、そこに蜂蜜を入れれば完成のようだ。これのレシピも中級薬剤の本に書いてあったがMPポーションを作る手間とは比較にならない。
まあMPポーションはこの本の一番最後に書いてあるから、薬剤の生産のボス的な立ち位置なのだろう。
とはいっても需要はかなり大きいようだ。それこそHPポーションと同じくらいに欲しい人は多いはず。しかしMPポーションの入手難易度が大幅に下がったら大きいダンジョンの難易度が下がってしまうから簡単には作れそうもない。
MPポーションの市場での値段は大体700Gだ。二つで1400Gとなる。原価は毒耐性持続薬とHPポーションを買うとだいたい850G、すべて一から作ると550Gだから利益的にはかなり得だろう。
というわけで早速MPポーションを作ってみることにした。
薬剤研究所に行くと新しい加熱台を使わせてくれるようだ。
これは一度使い始めるといつもどおり加熱され、もう一度使用すると50度ほどまでに下がるそうだ。
これはおそらく薬剤を作るときの温度をゆっくり下げていく、に使うのだろう。わざわざ冷ますって書かれていないのだからそれであっているはずだ。
早速材料を調達しようと思ったが、すでに手持ちにすべてあった。マナタケは前にハーロブからここまでの道中で手に入れているし、蜂蜜もDならダンジョン中の敵からドロップしていた。ボスドロップの蜂蜜C+は数が少ないので使わなくていいだろう。
まずは毒耐性持続薬の作成である。これは解毒草をちぎって水に入れて加熱し蜂蜜を加えるだけなので簡単だ。蜂蜜はドロップしたときから瓶に入っている。しかし中身は一度に全部使わなければならない。
葉っぱのちぎり具合、加熱時間はいつものHPポーションと同程度にした。
「薬剤錬成」
お、ウィンドウに「毒耐性持続薬Cを獲得した」と出てきた。とりあえずはこれで良いだろう。そうしたらようやくMPポーションの制作に取り掛かる。
まずマナタケの傘と軸の部分を分ける。ちぎればいい感じに取れるようだ……が結構硬い。なんとかねじ切るようにして傘と軸を分けた。
その後傘の部分にある毒々しい斑点をえぐり取る。ただでさえ紫色で気味の悪いこのきのこにより毒々しさを与えている。
調理器具の一つである包丁をつかい、斑点をえぐる。えぐった端から斑点だったところは消えていくようだ。
そして斑点を取り終えたら次はこれを細かく切っていく。現実で料理なんてしない俺には割りと苦戦したがどうにかみじん切りのような感じで小さくできた。
そうしたら瓶からカップに移しておいた毒耐性持続薬に細かく切ったマナタケを移して、と。
これを、新たに使えるようになった調理器具である冷蔵庫の中に入れる。といっても現実のようなものではなく上が開く金属の箱のような感じだ。ただ外から触ってもあまり冷たくないようなので二重構造で中が真空にでもなっているのだろうか。
とりあえず10分ほど冷まさなければならないので俺はその間にもう一つのHPポーションの加工の方を進めていく。
HPポーションを鍋に入れて、と。そうしたらマナタケの軸に切り込みを入れていく。これはうっかり切断してしまわないように注意しないと……
なんとか切り込みをいれた。そうしたらこれを鍋に放り込む。今度は魔石を砕いていく。結構硬そうな感じがするのだが砕けるのだろうか。
石の台のようなところで叩く。鈍い音とともに亀裂が入った。思っているよりは固くなかったか。
そう言ってもやっぱりある程度時間はかかる。大粒の砂くらいになったらすり鉢に移して小さくしていった。
小麦粉のように細かくなったらさっきのHPポーションに入れていく。ただし加熱をしながら、少しずつ入れていく。
ピンク色だったHPポーションの色がだんだんと灰色に変わっていく。しっかり溶けているようだ。まあ混ざっているだけかもしれないが。
すべて溶かし終えたら箸を使って中にあるマナタケの軸を取り出す。これは出汁でも出したのだろうか。
さっき毒耐性持続薬を冷やし初めてから10分が経ったので冷蔵庫から取り出す。そのあとに灰色になったHPポーションの上に浮いている繊維のようなもの――マナタケから出たのだろう――をすくい取って、加熱台の温度を下げた。
温度計もしっかりある。これは一見ただの金属の棒に布の取っ手をつけただけなのだがなぜかその上のアイコン表示がアイテム名ではなく温度なのだ。これが50℃まで下がったのを確認したら加熱台から下ろす。
気温まで下がったのを確認したら鍋に加工したHPポーションと毒耐性持続薬を混ぜて、2つの空き瓶に注ぎ込む。
「薬剤錬成!」
ポーションの色がエフェクトとともに澄んだ紫色に変わっていき――
「MPポーションD-」
ああああ! 生産物の失敗の代名詞、D-が出てしまった!
ものを生産するときにしっかり決められた手順で物を作ればよっぽどのことをしない限り成功はする。しかし最適な作り方をしないと決められた範囲でランクが下がってしまう。
かなり頑張ったんだけどな……
何がだめなのだろうか。思い当たることはいくつかある。しかし手順が多い分検証するのにも膨大な時間がかかる。
今までの経験からして良いものを作ればC+までは上がるはずだ。そして中級薬剤の本に上質なHPポーションの作り方、というのがあって材料に「評価がB-以上の薬草」とあることからC+より上のアイテムを作るには高級な素材と少し変わったレシピで生産する必要があるのだろう。
とりあえずひたすら検証を重ねるしかないな。とその前にまずは毒耐性持続薬の自動生産をできるようにしてしまおう。
基本HPポーションと同じように作っていけばいいのだが、蜂蜜をどうやって瓶の中に注ぎ込もうか……
瓶を割ったらそうなるのだろうか。試しに俺は地面に向かって蜂蜜を投げつけた。すると瓶が割れ破片などとともにガラスが消失し、一秒後くらいに蜂蜜も消失した。
予想通りだ。どうやら地面についた瞬間にアイテムの耐久値的なものが減っていき、消えていくようなかんじだろう。
この性質を使えばおそらく自動で作ることができるはずだ。




