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VRMMOでアイテムの全自動量産体制を整えてみた  作者: 恵笛
生産の拠点とMPポーション
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住宅ローン

 お城に見とれている時間も無いので俺たちはさっそくクランハウスを探すことにした。事前に話し合った結果、恐らくこれからゲームをやるうえでずっとお世話になる場所になるから、生半可なところではなくしっかりしたい良い場所を購入する、と決まった。


 この都はかなり大きいため選択肢も膨大だ。狭い借家から貴族が住むような豪邸まである。オンラインゲームで土地の購入は早い者勝ちになることが多いためいいところはあまり残っていない可能性もある。


 俺たちはあらかじめ候補にと決めていた川沿いの土地を目指して歩く。この町の端の方には川が流れており、下流にハーロブが位置している。運河として利用されているそうだ。


 一度王都について専用クエストをクリアし船の利用パスポートを獲得するとハーロブから船で王都まで来れるようだ。


 大通りの突き当りに豪邸がある。空き家のようだ。庭には数種類の木や花が植わっており、噴水まである。

「うっわすっげぇ」


「きれい」


 そうエリウムとティウが言うのもうなずける。確かにとても見栄えがいい。空き家だろうから買えるのだろうがどうせあり得ないほど高額なのだろう。この家の奥に川が流れているようだし条件的にはピッタリなのだが。


 この後も川に平行に走っている道路を歩き、いくつかの候補の家を見て回った。


 そして冒険者ギルドに行き初めのお高そうな物件の詳細を聞くと――


「そちらの物件は7500万Gとなります。ただし1000万G以上の物件の場合冒険者ローンを組むことが出来ます。そちらの紹介もしましょうか?」


「あ、じゃあ、一応お願いします。」


 なんだかもう住宅ローンという単語からして現実である。それ7500万って……そんな桁見たことないぞ。これは完全に大規模クラン用の物件だな。6人のクランが買っていい物件ではなかったようだ。


 ここからは受付嬢さんの管轄外のようで、奥の部屋に通された。ドアから中年の真面目そうな人が出てきた。


「あなたたちのクランLv、ギルドランクですと最大四年間のローンを組むことが出来ます。そうなりますと年利2%で月々162万Gとなります。」


 ややこしい。まずリアルとゲーム内では時間の進み方が違う。ゲーム内の四日でリアルの一日だから要するにローン返済期限の四年と言うのはリアルでの一年間だ。


 年利2%というのはインフレの激しいMMOにおいては破格かもな。


 そして月に一度162万Gというのはリアルで言えばだいたい一週間に一度160万G、ということになる。


「やっぱりいいところは高いよねえ」


「流石に月に160万Gだとどうやっても無理ですね……」


「まあいずれはGがインフレして、手が届くようにもなるだろうが今は無理……のようだね」


 


「そのローンのプランで、お願いします。」


しばらくの沈黙の後、俺が言い放った。


「「「「えええ!?」」」」


「かしこまりました。ではこのあともし代金が払われなかったときの対処方法についてお話させていただきます。」


 やばい、結構怖い。


まとめると支払いが遅れた場合かなり激しく返済を迫られ、更に遅れると係の人に家の前で『〇〇さん、ローンの返済を……』と叫ばれる。さらに一ヶ月間支払いがなかった場合その家は没収となり、今まで払った分から利子を引いたお金が戻ってくるが再び売りに出される。


 そうなると借金返済ができなかったということでブラックリストのようなところにも載り、暫くの間は家を買えなくなるそうだ。


 もちろんゲームに入らなくても期限が来れば同様のため、何か用事がある時には予め代金を冒険者ギルドの預かり所に預けなければならない。


 まるで現実だな。だんだんファンタジー感が薄まっている気がする。まあ大金が動くという性質上仕方のないことではあるのだが。


 というわけで俺は契約書のようなものを書き、サインした。支払い名義人は俺単独となっているので万が一何かあってもゲームをまともにプレイできなくなるのは俺だけなはずだ。



 高校生ごときでもゲームの中なら立派な家を変えるというのが夢があって楽しいな。


「おいおい、大丈夫なのかよ」


「そうよ、もし払えなかったらどうするの……って、ロージェ相手に無駄な心配よね……」


 そう、俺は旧作でも高い買い物には慣れている。なんだかんだ期限までにはお金を工面してきた。


 とは言っても今回はそこまできつい話じゃない。実際ポーションの相場が今のままならリアルの一週間で210万G手に入る。これだと週160万G払うことはそんなに難しいことじゃない。


「ほら、俺にはあの機械たちがあるからさ。あれ俺らがログアウトしている間だってずっと動いているんだぜ。だから想像している以上に収入はあるんだよ。」


「うーん、君がそう言うなら間違いはないんだろうな」


「いざとなったら多少は周りも出せるでしょ。」


 確かにボーロンは俺と同じくらいINできているため他の人よりは収入も多いのではないだろうか。


「よし! そうと決まったら早速家に行くぞ!」


 みんな気を取り直して走ってさっきのところに戻る。よく見ると周りにも豪邸らしきものがちらほら見える。城もだいぶ近いからかなり高級街なのだろう。


 俺がドアに手を触れると「入場許可を出してください」と出てきて、続いてフレンド一覧が出てくる。この家に入るのはクランメンバーに限らず、フレンドなら許可すれば入れるようだ。


 とりあえずこのパーティーの五人を入場許可、にしておいてと。


「よし! これが俺たちのこれからの拠点だーー! ロージェ! ありがとう!」


といってエリウムが叫ぶと同時に大きな両開きのドアを開けた。


「「「「ロージェありがとー!」」」」


 みんな俺に感謝しながら家の中に入っていく。こう喜んでくれると買ったかいがあるというものだ。


「凄い広い!」


 思わずティウが声を出すが、その気持もよく分かる。そもそも廊下の幅がかなり広い。


 玄関のようなところで靴を脱いで、家に上がった。


 みんなそれぞれが散り散りになって自分の気になるところを見に行くようだ。俺は地下室に直行だ!


 螺旋階段を降りて入ってみると驚愕である。とにかく広い。高さは3m位なものの広さは……学校の教室くらいあるか?


 壁はきれいな赤レンガで、そこに橙色のランプが埋まっている。やばい、前の借家のコンクリートのような灰色の石の部屋にランプが一つ、なんてのとは訳が違うぞ!!


 そしてもう一つ気になった倉庫を見に行く。基本拠点のインベントリは拠点内ならどこにいても様子を確認できるが取り出すのはその場所に行くか転移陣を使わなければならない。


 床下は地下室なので収納はないとして……


 とりあえず屋根裏とかにでもあるのかな、と思って螺旋階段を登っていくとこの家が3階まであることがわかってしまった。


 まじかよ……日本の一軒家よりはるかに広いぞ。そのまま螺旋階段を登っていくと屋上に出てしまった。そこでノブラックが城を眺めていた。


「やあ、ロージェ。君も屋上から景色を眺めに来たのかい?」


「いや……。収納を探してたんだが……。ここにはないようだな」


「ははは。屋根裏収納なんて貧乏人の考えるようなものここにはないだろう。」


「そうだな……たしかに屋根裏収納なんてこの家には合わないわな。」


 俺は螺旋階段を二階まで降りた。ひょっとして……


 予想通りだ。さっき屋上から見えた渡り廊下らしきものの先には大倉庫がつながっていた。倉庫は別の建物かよ……。


 容量は――


「最大アイテム数100,000」


 うん、納得だよ。予想はしてたんだ。しかもアイテムの種類の上限はないってことは純粋に十万個入れることができるんだろう。なんか横にバージョンアップ条件、とか言うボタンがあるし。まあ今はいいや。


 試しにポーションを一個入れてみる。


 アイテムを収納から取り出したり、入れたりするときにはドアのようなところに手を触れて出て来るウィンドウのアイテム一覧から取り出したいアイテムを選ぶだけだ。


 お、倉庫分割なんていう機能もあるのか。これは使用者ごとに倉庫の容量を割り振れるらしい。便利だな。


 とりあえず――


 ロージェ:90,000 エリウム2,000 ティウ2,000 べリリー2,000 ボーロン2,000 ノブラック2,000 っと。


 いい配分だ。うん、怒られたら直そう。




 さて……他の部屋も見て回るか。



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