初めての錬金と六台目
俺は学校から帰ってからすぐにログインする。早速機械の様子を見てみよう。
しっかりすべて動いている。特に問題もなさそうだ。
床下収納もまだまだ余裕がありそうだし、最悪足りなくなったらほかの収納を使えばいい。屋根裏収納とか階段下にも収納はある。
とりあえずポーションを300個ほど取り出し、市場で売る。今日は部活のある人が多いのでしばらくは一人で行動することになるだろう。
このクランハウスには家具などの様々なものを置くことができるが、そこまで広くないためポーション製造機が多くの幅をとっている。これだと後々困るためこの家のオプションとして借りることのできる地下室に移動することにした。
地下室を借り、階段を降りるとコンクリートのようなものに囲まれており、薄暗かった。とりあえず五台の台をすべて移し、ここに魔方陣を書くための机と椅子を置いた。
俺はしばらく暇なので前から気になってた錬金術師の元へ行く。錬金術は主に素材を扱う生産においては比較的重要だが地味な生産だ。
いつもの金属板を作っているのは鍛冶師だと思っていたが、どうやら錬金術師の方だったらしい。
錬金術師がいる建物は錬金屋敷、と言うそうだ。魔導師の館、薬剤研究所、鍛冶場、錬金屋敷……
なんだか微妙に違っていてめんどくさい。そのうちオフィスとか出てくるんじゃなかろうか。
そんなこんなで俺は錬金術師の元に行き、いつもと同じような感じでアイテムを納品し、物を作り始めた。
錬金術では基本的に壺を使う。壺の中に魔法水を入れ、さらにレシピのアイテムを入れて数分間煮詰めて、詠唱をすると完成である。薬剤に似ているな。
加熱を始めるとすごい勢いで白い湯気が出てきた。中が全く見えない。
薬剤と大きく違うのは作られるアイテムが無機物が多いということだ。さっそく俺は砂鉄と炭を入れ、10分煮る。その間に錬金術師のおばさんに話を聞いたが、元々昔は錬金術師と薬剤師の仕事は同じだったらしい。
しかし薬剤は品質などが細かく、人体に直接影響を与えるため細かく研究され、次第に分野が分かれていったとのこと。
そんなこんなで10分経ったら火を止め、詠唱する。
「素材錬成!」
中を見ると……
そこにはきれいな形のインゴットがあった。アイコンに「鋼のインゴットC-」と書かれている。これを鍛冶などに使うと質のいい武器が作られるらしい。
棒を使って中身を取り出すらしいが結構難しい。3分くらい苦戦してようやく取り出した。なんかいかにもゲームな感じだ。
本当ならもっとがっつり錬金をしてみたいがそうもいっていられない。取り敢えず俺は初級錬金術書をもらう。
よく読むとレシピの中に「合金板」と言うのがあった。材料には数種類の金属を使うようだが原価は1200Gくらいだろうか。錬金術師さんにこのアイテムについて聞いてみると
「それは魔法との相性がいいと聞いたことがあるけど、いまいち使い方がよくわからないんだよねえ。」
と言われた。これはほぼ間違いなくいつも使っている合金版だ。
そうと分かったら市場、それからクランハウスにダッシュだ。各生産施設ではほかの生産品を作っても大丈夫だと分かっているから錬金術をやりながらポーションの生産もすることにした。そのためにポーション製造機を一台持ってきた。
これを軽く書き換えて火魔法陣だけ分離して、加熱するところだけは前に魔導師の経験値稼ぎに使った杖と短剣を使って強引に温める。
さらにこの作業をしながら錬金術を試してみた。これは8分で一つ作ることが出来る。
一時間近くずっと作業して大量のポーションと7枚の合金板を作った。ちなみに今回作ったもの、いつも使っているものは正確には合金版Cだ。
クランハウスに帰ってさっそく魔法陣を書いていく。ノブラックがいるので話しながら作業した。
「最近ずっと魔法陣書いてないかい? ロージェ君。」
「とにかく急いでやらないとポーションの相場が落ちるのも時間の問題だろ。」
「そういえば君は前作の時は後から生産に手を付けたせいで利益をあまり得られなかったって言ってたかな。」
「そうだ。ダンジョンはインスタンス・ゾーンが適用されて分離されるからあまり問題はないが生産の利益は基本市場で売る事でしか得られないから競争も激しい。」
「しかし……私はさっき地下を見たけどあの機械はすごいねぇ。関心するよ。ひょっとして今後ポーションがあまり出して神官の私の仕事がなくなるんじゃないかね?」
「あはは、さすがにそんなこと……」
と言ったところで少し想像してしまった。道具使いは道具を使用するクールタイムがレベルが上がるごとに縮まっていく。
もし今後市場に出しきれないほどポーションを作ったらポーションを際限なく使ってダンジョンを攻略するのも面白いかもしれない。
前作では投擲武器をメインで使っていたが今作では俺の戦闘でのポジションも変わってきそうだ。
「もし君がポーションを余らせるようだったら私はいっそ神官のまま前衛にでもなってみようかね……。今パーティーを見ていると魔法攻撃が飛んで来た時に前衛が受け、そして私が回復するのが流れだがもし魔法防御力の高い私が前に出れば魔法攻撃に耐えやすくなるのではないかと思ってね。
無論物理防御力は紙同然だが。」
なかなか面白いことを言う。このゲームでは職業ごとに覚えられるスキルと伸びやすいステータス、向いている装備などは決まっているがそのほかは特に決まっていない。ノブラックの言うことも面白そうだ。
そんな話をしていたら
「じゃ、私は一旦ソロで狩りにでも行くよ」
といって外に出ていった。あいつ神官なのに本気で前衛に挑戦する気か……。
俺は六台目のポーション製造機を完成させた。一台目の時と比べるとかかった手間、時間、Gすべてがだいぶ少ない。
なんだか六台がそろうと見栄えがいい。かなり満足だ。
そしてここまでやっている間に減った薬草と瓶を補充し、残った時間でまだ手を付けていない魔法陣も見てみることにした。
おれはだいぶ偏った魔法陣しか見ていなくて、実際初級魔導書には 攻撃力増加3%、防御力増加2%など様々なバフの効果の魔法陣がある。移動速度上昇や取得経験値+0.5%なんてのもあるな。
装備品は主に右手武器、左手武器、頭、チェスト、レギンス、ブーツ、首、手首、足首のアクセサリーがある。ただしほとんどの武器は両手に対応していないので片方は盾を持つのが一般的である。
そんなこんなでいろいろな魔法陣を机で眺めていたら結構な時間だ。後ろからはポーション製造機の音が絶え間なく響く。
「バリバリバリッ」「グツグツ…」「ゴポゴポゴポ…」
ここで話は冒頭に戻る。
気が付いたら2000個も貯まっていたポーションをすべて市場に放り込んだ。相場は若干下がり始めたためポーション製造機の増設はこのあたりで止めようと思う。
その後俺はクランハウスの一回のリビングでログアウトした。
そういえば借金今日返すって言ってたのに返してねえ……
やっとここまで書けました。次から第二章です。