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VRMMOでアイテムの全自動量産体制を整えてみた  作者: 恵笛
始まりのHPポーション
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見つからない水属性魔法陣

 学校の昼休み。昼食は大体俺、宝蔵ボーロン川縁ベリリー、そして炭本の四人で集まって食べている。軽部エリウム熱田ティウは他のグループと食ってるからな。


「それで?ILの調子はどんな感じなんだね?」


 炭本が聞いてくる。なぜかこいつ口調が会社の上司風なんだよなあ。それでもなんとなく大人になりきれていない感じはある。本人がこのキャラで行くと決めているようなので特に周りは何も言わない。


 この炭本こそが旧作 Vast Labyrinth で神官をやっていた「ノブラック」だ。


「二つ目のダンジョンを突破したってところだな」


俺が答える。


「ただ、まだアイテムの消費が激しすぎて、とてもレベリングできる状態ではない。だから炭本が入ってちょうどいいくらいじゃないのか。」


「なるほどねぇ、まあ私はもっぱらポーション節約係に徹することにするよ。ステ振りもみんなテンプレ通りな感じなのかね?」


「大体そうだと思いますよ。盗賊の私なんかも攻撃と素早さ重視で振ってますし……」


しばらくそんな話をして、


「みんなに聞いてほしいんだが、今日一緒にダンジョンに行けないわ。たぶん。」


と俺が言うと


「え? 何でですか? せっかく六人いるんだから一緒に行きましょうよぉ」


川縁ベリリーが言ってくるが


「一つは俺は今日部活に行かなければならないこと。もう一つはILの魔道具の研究を早急に進めたいっていう理由だな。今作っている魔道具は……」


 俺は魔道具の内容について話した。資金が足りていないことも。


 そして後に6人で軽く話し合った結果、俺以外の五人でダンジョンの攻略をし、できる限り稼いだGをこちらに回してくれることになった。後で返すけど。



 パソコン部が終わり急いで帰宅し、夕食を食べたらさっそくログインした。今日は明らかに6時間プレイできないので大急ぎだ。


 宿に出たらティウとベリリーから少額のGを受け取って薬剤研究所へダッシュする。


 途中で瓶と薬草を10個ほど買ってポーションの作成を開始する。加熱している間に次のポーションの準備をしてしまえば4分で1個のペース……二台同時稼働しているから実質2分で一つのポーションが作られていく。


 10個揃ったら売りに出し、そのお金で再び瓶と薬草を買って生産を始める。それを繰り返していると薬剤師Lvが10に達した。生産のLvはいわばスキルレベルのようなものだろうか。職業のレベルとは全く違う扱いになっている。


「おや、君もなかなか上達してきたようだね。そろそろ他の種類の薬も作り始めてもいいかもしれないね。君にこれを上げよう。」


 そして俺は「初級薬剤の本II」をもらった。中級じゃないのかよ!


「それから君にはこれも使わせてあげよう。」


と言って薬剤師さんは奥に何かを取りに行った。出てきたものは……


 いつもと変わりのない加熱器具のように見えるが、台の金属の厚さがいつもの1.5倍近くある。


「これは特殊な装置でね、材料を入れた瓶を中央に置くと水を入れてくれて、その後に加熱してくれるんだ。こんな感じでね」


と言って薬剤師さんが空の瓶を器具に置き、手をかざしてそれを動かすと水が入り、熱し始めた。


「これで少しは薬作りが楽になるだろう?


「はい! ありがとうございます!」


 RPGってなぜか便利な道具を先に出してくれないんだよなあ、なんて思いながら俺はこの器具の仕組みを聞くことにした。


「あの、これってどうやって動いているんですか?」


「なんだかよくわからないけど魔導師さんは『二つ以上の魔法陣も縦に重ねれば連続して使うことが出来る』って言ってた気がするんだよなあ。」


「なるほど……ありがとうございます。」


 魔法陣の中の記述を少しいじると前の記述の続きとして効果を発揮するのだろうか。試してみたいが金が……


 今までの器具も使わせてくれるようなので俺は3台同時稼働でHPポーションを作ることにした。


 しばらくすると「なんか掲示板で解毒ポーションが儲かるって話だけど。」とボーロンからチャットが来た。そういえば他の薬の存在を忘れていた。さっそく解毒ポーションを見てみる。


 効果は解毒+HP回復、といったところか。作り方はHPポーションの材料に解毒草を入れるだけのようだ。しかし加熱にかかる時間は6分。とりあえず今あるHPポーションを売って解毒草を買ってくることにした。


 結果から言うと解毒ポーションはそこまで稼げるわけではなかった。おそらく掲示板で話題になってみんなが作り、相場が下がっていっている。


 しかし今のところ時間当たりの利益が若干HPポーションよりも良いのと、利率も同じくらいであったため加熱時間が長くその間他の事が出来るこちらを作っていくことにした。


 しばらく作るとこちらもC+で安定してきた。やっぱり初級薬剤の本に書いてあるよりも少し早めに過熱をやめると良いようだ。



「この加熱器具の中の魔法陣を見せてもらうことって出来ますか?」


「だめだ。できない。うっかり壊してしまって弁償できるのなら別だが。」


 ダメだったか。何とか水属性魔法陣を使って自分の加熱器具を改良してみたいものだが……


 俺は作りながら考えた。どこかに、この広い街のどこかに水魔法が使われているのではないか、と。水道にある水は川から引いてきているから使ってないとして……


 広場の噴水なんかどうだろうか。俺は一旦薬剤の製造をやめて広場に走っていった。


 噴水はとてもきれいに常時同じ量の水を出している。しかし中を見るには……入るしかない!!


 確か入っても何も言われないし、水を汲んでいる人もたまにいるし、やるからにはとっととやってしまおう。


「バッシャーン」


 ない!! 水が出ていそうな所を見たらそこには管が通っているだけだった。電動ポンプなんてないはずなのにどうやって噴水から水を出しているのだろうか。


 とにかく……ここから早く離れた方がよさそうだ。周りの人がこちらを見ている。俺は走って薬剤研究所に戻った。


 俺は再び考えながらポーションを作った。いっそのこと火魔法陣のfireの部分をwaterに変えて作ってしまおうか。しかし水を出現させるには何て記述すれば……。



 俺は研究するのが好きだが今はとにかく時間が無い。MMORPGは出来ることをどんどん進めないと後から人にその機会を奪われてしまうのだ。特に生産は。



 そういうわけで水属性魔法陣がありそうな道具を探しに総合市場へ行く。




 無かった。思っている以上に魔道具を作り魔導師Lvを上げている人が少ないのかもしれない。できても技術を広めないためにパーティーやクラン内に提供している可能性だってある。


 八方ふさがりだ……いや、まだ可能性として、基本的なことが残っていたのを忘れていた。そう、魔導師Lvを上げれば薬剤と同じように「初級魔導書II」のようなものをもらえるのでは??



 俺はどうやらひねくれて変なことばかり考えすぎだったようだ。こうなったら正攻法で行くしかない。


 俺は唯一有属性の火属性魔法陣を使って自分の装備を強化することにした。といってもブーメランしかないけど。


 作業は薬剤研究所で解毒ポーションを作りながらやる。熱している間に次の瓶に葉っぱと水を入れて、その後に残る3分ほどで魔法陣を写していくのだ。


 チャットでパーティーの様子を聞くと、シャロウ森林のダンジョンを無事にクリアし、いったん帰ってくるそうだ。その後レベリングを始めていくという。



 俺は宿に戻った。みんなに4個の解毒ポーションを渡し、代わりにクエスト達成の報酬金をすべて借りた。合計で7000Gほどある。




 これで俺は短剣と杖を買った。さあ、どんどん魔導錬成エンチャントをしていこう。

 


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