HPポーション生産の効率化
またしても本来Gであるべき所が円になっていたため修正。1/05
このゲームには課金要素は存在しません。もしこれからも同様のミスがありましたらご一報ください。出来る限り無いようにしていきます。
俺は宿に戻った。他は誰も戻ってきていないところを見ると装備の新調でもしているのだろうか。俺は一旦昼食のためにログアウトした。
このパーティーでは基本所持金の統合はせず、各自で得た利益を自分で使っている。
だがもちろん一人の利益がパーティー全体の利益にもつながる場合やダンジョンの報酬が一つのアイテムだった場合などはその都度相談してお金を出し合ったりする。
おそらく俺のポーションと火炎瓶の購入額が膨らんだ時も頼めばみんながお金を出してくれるのではないだろうか。
とはいっても生産がメインの俺はなるべくポーションのコストを下げることが出来るように努力しなければならない。
いままで何度かポーションを作ってきて思ったのが、加熱器具を二つ以上使えば倍の効率でポーションを作れるのではないか、というもの。だが今のところ加熱器具の販売はなく、生産方法もない。
そこで魔道具の応用だ。とりあえず前に解読していた魔法攻撃力上昇+3%の解読を進めることにした。
大体40分くらいかかっただろうか。出てきた文字は分かりやすく小文字にすると……
Lower grade magic circle If [the owner use this] ,Over the this,Magical attack power IIIpercent rise,At that moment,Endif
となる。日本語にすると「初級魔法陣、もし所持者がこれを使ったら、杖全体に、魔法攻撃力3%上昇、瞬間的に、仮定終了」といった感じだろうか。
明らかに英語の単語が使われているが全く英文法は成り立っていない、となると考えられるのはプログラミング言語の類だろうか。
だとしたらまだなんとなく理解できる。要するに魔法陣に必要なのは 魔法陣の宣言、発動条件、対象、効果時間、仮定終了、といった要素なのだろうか。まだサンプルが少なさ過ぎてよく分からないが。
次は鍛冶屋の加熱台にある赤い魔法陣もやってみよう。だんだん解読作業も慣れてきた。
Middle grade fire magic circle If someone use this,On top of this,Increase to MCC degrees,If [it reaches over MCC degrees or After II minutes]end Endif,Endif
日本語にすると「中級火魔法陣 もし誰かがこれを使ったら、これの上に、1200度に上げる、もしそれが1200度に達するか二分後に 終了 仮定終了、仮定終了」
これめっちゃわかりにくいぞ。プログラミング言語ならそれらしくしっかりカッコで括ってもらいたいし、しかもローマ数字って。MCC=1200とか知らなくてパーティーのチャットに聞いてしまった。他にも突っ込みどころは多くあるが……
まあこれがゲームの仕様というものだろう。一応なんとなく理解できたからいいとしよう。
しかし中級魔法陣は恐らくまだ使えない。今の自分の魔導師Lvは4だが、魔導師に話しても中級魔導書はもらえなかった。自分の力量に合っていない魔法陣を使って魔導錬成を行うと失敗してしまい、せっかく書いた魔法陣が使えなくなるだとか。
恐ろしい。
だからもし加熱器具を作るなら魔法陣のグレードを落とさなければならない。上げる温度を100度まで落とせば初級魔法陣として使えるかもしれない。
さっそくやってみたいがそもそもなにに魔法陣を錬成すれば加熱器具を作れるのだろうか。
急いで魔導の館に行って魔導師に聞いてみると
「薬剤師さんのところの加熱器具は……たしか普通の合金だったかねえ。あれは初級の魔法陣だから金属板に錬成すれば簡単に動くはずだよ」
「ありがとうございます。その合金というのはどこで手に入れられますか?」
「魔道具によく使うからここでも売ってるよ」
「じゃあ買います。」
「じゃあ5000Gだね」
「あ、すみません、お金を取りに一旦宿に戻ります」
「いいよ」
思っていたよりも高い。どこか別の金属を売っている場所とかならもっと安いのかもしれないが、同じものがあるとも限らないし、ここで買うのが確実だろう。
宿に戻るといったが宿にお金なんて一切ない。俺はパーティーのチャットで「お金5000G誰でもいいから貸してくれ」といった。
しばらくしてエリウムとボーロン二人のところまで走ってお金を借りてきた。何とか足りた。
「これでお願いします。」
「はい、どうぞ」
割と重い。15㎝の正方形くらいだろうか。俺は紙も買い、魔導インクを作り、魔法陣を書き始めた。ただし今回は魔導書から移すのではない。
鍛冶場にあった加熱器具の火属性魔法陣を参考に、初級に下げ、温度も100度にする。時間も3分40秒で固定だ。それをまず普通のインクで他の紙に書き、それを写す。
書き終わった。楔形文字も何度も見ているから前よりもだいぶ速く書くことが出来た。そして
「魔導錬成!」
赤く光り金属板の大きさに合わせて広がっていく。杖の時と違ってはるかに大きな魔法陣が合金版にある。
魔導師Lvも5に上がった。成功したようだ。俺は喜びのあまり思わずガッツポーズをした。
時間が無いので俺は薬剤研究所に走った。途中に雑貨屋で瓶を2つだけ買った。
「こんにちは」
と言いながら薬剤研究所に入り加熱器具の前に座る。こちらは台のようになっていていかにも加熱器具だ。ただこれは魔法陣が露出していない。
その横に俺はさっき作ったばかりの魔道具を置く。そして薬草を細かくして瓶に入れ水も流し込み――
二つの加熱器具に瓶を置き同時に加熱した。自分で作った魔道具の方は使った瞬間微量にMPを持っていかれた。確か魔道具を動かすには魔石を触れさせるか使用者が魔力を使うかのどちらかが必要なんだっけ。
熱し始めてから3分40秒後、俺が作った魔道具の方で赤く光っていた魔法陣の光が消えた。すぐに俺は二つの瓶を加熱器具から取り出して、
「薬剤錬成」
と詠唱した。アイコンは……
「HPポーションC+」「HPポーションC+」
ここでも俺は嬉しくて思わずガッツポーズをした。これで2倍の効率でポーションを作ることが出来る。
お金が無いのでポーションをすぐに売りに出した。ポーションは需要も供給も多いためすぐに売れる。
儲かったお金でまた薬草と瓶を買って――――
しばらくしたらログアウト警告が出たので宿に戻りログアウトした。今日は作戦会議はゲーム外でやった。
さて、自分と同じことをする人が何人いるだろう。このゲームはダンジョンの攻略がメインであるから魔法陣の解読は出来ても強力な武器の生産の方をやってくれるとこちらとしてはありがたいが……
そんなことを考えながら夕食が並ぶ食卓に向かった。