7話 独断の悲劇
今回は結構辛い話になってます。 後、いつもより少し長いです。
彼への復讐で何故か満足感を得ていた。
平和のために活動していたはずが、復讐で一人の男子を怪我させている。
このままじゃいけない。
そう思って今度こそ何か情報を探しに行こうと思ったが、気付くと炎怒達と会う時間まで1時間も無いくらいになっていた。
そろそろ彼等に合流する準備をしていた方が良いな。
そう思って僕は約束していた場所に向かった。
真っ直ぐ目的地に向かおうとしていたが、思わぬ物を発見する。
路地裏の奥に人が倒れていた。
しかも、気絶しているわけではなく、意識があり助けを求めているようだった。
平和のためだ。 人助けならするしかないだろう。
ちょっと遅れても大丈夫だろうし、人を助けていたという理由なら許してもらえるだろう。
そう思って近付いた。
だが、少し違和感を感じた。
倒れている人は女の子だったが、その子の髪の色は半分ずつ違って赤色と青色に分かれていた。
独特な髪だなと思った時に気付く。
独特な髪と言えば能力者なんじゃ…
そう思って行くかどうか悩んだが、能力者と戦って負傷したのかもしれない。
そういう結論が僕の中で出て、彼女に向かって走った。
「大丈夫ですか!」と言いながら彼女に近付くと、傍の陰から銀髪の男性が現れた。
その瞬間、危険を察知して下がろうと思ったが、僕は動けなくなっていた。
金縛りのように意識はあるのに何故か体が硬直して動かなくなっていた。
何が起きたんだと困惑していると、倒れていたはずの彼女はすんなりと起き上がった。
やっぱり罠だった…のか…!?
「全ては成瀬 炎怒のせいよ?」
彼女はそう言って僕を殴る。
殴られた衝撃で倒れこみ、あまりの痛みに力を出せない。
どうやら体は動くようになっていた。
すると、後ろに居た銀髪の男性は僕の頭に袋を被せて、僕を担ぐ。
どこかに運ばれているようだった。
危ないとは分かっていても体に力が入らなくてそのまま運ばれた。
少しすると、椅子に座らされ手を椅子に縛られている感覚があった。
しっかり縛られている事が確認出来ると、袋が外れた。
周りが見えるようになって見えた物は何も無かった。
ただ、何も無い部屋にさっきの二人が居て、僕が椅子に縛られているだけだった。
こいつらの目的は何なんだ…?と思っているとその目的はすぐに分かった。
赤と青の彼女はポケットから写真を取り出して俺に見せた。
写っていたのは金髪のオールバックの少年と黒髪ロングの少女。
間違いなく僕が知っている人物、金剛くんと黒山さんだ。
「彼等の居場所を教えなさい」
と彼女は聞いてきた。
「知らない」と僕は素っ気無く答えた。
だが、これから炎怒達と集まる予定は知っているが、今どこに居るかは本当に知らなかった。
すると、彼女は僕の顔を殴る。
この時、僕は気付いた。 これは拷問だと。
本気で顔を殴られるのなんて久しぶりだな…
いじめとかで暴行されていた僕はこんなもんでは屈しない。
「早く言わないと苦しむだけよ?」
彼女はそう言ってくる。
だが僕は嘘をついていないから「本当に知らない」としか言えなかった。
するとまた殴られる。今度は2発。
知らないといえば殴られる。 それが当たり前になりそうだった。
すると彼女は何かを思いついたかのようにして、僕のズボンのポケットを触る。
触って気付かれたのは右のポケットに入れていた携帯だった。
彼女は僕の携帯を取り出して画面を点ける。
「番号は?」
恐らくロックを解除する番号の事を言ってるんだろう。
「教えるわけないだろ」
俺は余裕を見せてそう答えた。
だが、その余裕が仇となった。
彼女は殴るのをやめて炎を出した。
僕の顔はどんどんと焦げていく。
電気でバリアを張りたかったが手を塞がれていると上手く能力が出せない。
「うわあああああああ!!!!」
流石に殴られるより何百倍も痛みがきて耐えられなくなって声を出した。
彼女は何秒間か僕の顔を炙った後、炎を止めて「番号は?」と聞いてきた。
まだ耐えてやる…
「教えないよ…」
恐らく僕の顔はもう醜い事になっているだろう。
でもまだ僕は答える気は無かった。
すると今度は炎じゃなくて水の球が僕の顔を包みこむ。
もちろん水の中じゃ息が出来ない。
でもその息が出来なくて苦しい中、僕は一つ分かった。
彼女の髪の色が半分ずつ違うのは両方が使えるからだ…
それが分かったが、分かったところで何も出来なかった。
もう意識を失う…と思ったところで彼女は水を止めた。
ダメだ… これは苦しすぎる…
まさか焼けるだけじゃなくて溺れさせることも出来るとは…
予想外の出来事で僕はもう挫けていた。
「番号は? 言えば命だけは助かるわよ」と聞かれて自然と口が開いていた。
「6、3、2、5…」
僕は弱い人間だ。もっと強い人間になりたかった。
そう心の中で思いながら僕はぐったりしていた。
彼女は黙って携帯を弄っていた。
すると携帯からピコンという着信音が2回聞こえた。
恐らくそれはチャットが出来るアプリの着信音だ。
まさか…
「ありがとう、お陰で彼等の位置は分かったわ」と彼女は言って携帯の画面を僕に見せる。
そこには、僕がチャットで「今どこに居る?」って書いて、それに金剛くんが「近くのショッピングモールだ」と答えているのが映っていた。
その画面だけでは分からないが、おそらく黒山さんの位置も聞いているんだろう。
ごめん、金剛くん、黒山さん、僕が弱いばかりに…
そう思うと僕は涙が零れた。
僕のせいで彼等が危ない目に…
そう思っていたら予想外の事に彼女は急に僕の前で手を構えた。
「えっ… 待って命は助けてくれるんじゃ…」
僕は助かると思っていた。
でも、そんな甘い訳が無かった。
「あなたはもう用済みよ」と彼女は言って、炎を出そうとした。
僕はその瞬間、「うおおおおおおおおおお!!!」と叫びながら最後の力で電気を纏った。
身の危険を感じたからか手が縛られているが出せた。
すぐに電気でうまく縛っている物を壊そうとしたが、その縛っている物はゴムで出来たチューブのようなものだった。だから電気は通らなくて壊れそうになかった。
だが、それと同時に僕は紐じゃなくてゴムだという事に疑問を感じた。
何で、こんなあまりなさそうなゴムで縛っているんだ…?
電気を通さないため…だろうが、何故僕が電気を使うって知ってるんだ…!?
こいつら… 只者じゃない…!
そう気付いたが、もう遅かった。
電気を纏っていればとりあえず攻撃はされないかと思ったが、また金縛りのように動かなくなった。
動けなくなると自然と電気も消えた。
何で動けないんだ…と思いながらも僕が最後に見たのは僕が動けない間は銀髪の男性も動いて居ないという物だった。
あの男性が何かをしているのか…
そんな事を考えていたが、もう意味が無かった。
僕は動けないまま彼女に炎で焼かれた。
叫ぶ事も出来ないまま、彼女の炎に焼かれるしかなかった。
薄れていく景色の中、僕は最後に一つ思った。
『みんな、ごめん…』
明確には記載していませんが頼堂は死にました。 頼堂ファンの方には申し訳無いです。(そんな登場してないからファンなんて居ないと思うけど)