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家電戦争Ⅱ 《Appliance WarⅡ》  作者: 黒川 想流
炎怒編 (前編)
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5話 キラーズ



窓から光が差しこむ。その光で目が覚めた。


目を開けると、俺の体に毛布が掛けてあるのが見えた。


俺が彼女に毛布を被せたという事を思い出した。


お返しか…


そう思いながら俺は起き上がった。


台所の方から物音が聞こえたからその音の方へ向かう。


台所を覗くと彼女が調理をしていた。


「あ、炎怒くん、おはよう」


「おはようございます…」


昨日の事があるからか彼女は少しよそよそしくなっていた。


「あの、昨日はごめんなさい。あたしただ炎怒くんに振り向いて貰いたくて…」


彼女は申し訳なさそうにそう言った。


「気にしてませんよ」


そう彼女を慰めるが彼女はよそよそしいままだった。


「あたしの事はやっぱり先生としか見てないんだよね…」


彼女は随分と消極的になっていた。


彼女らしく無いな。こんな消極的な彼女は風音先生…いや、風音さんらしくない。


俺は彼女に元に戻ってもらうために少し思い切る。


「確かに今までは先生として見てました。でも今は先生じゃない」


俺はそう言って彼女に近付く。


彼女は何かを察したのかこちらを向いた。


俺はそのまま黙って彼女の唇に俺の唇を重ねる。


そんなに身長差の無い俺達はそのままの状態でキスをする事が出来た。


俺は少ししてから離れる。


「風音さん、今はこれで我慢してください」


俺は彼女の目を見つめてそう言った。


「うん…! 分かった!」


彼女は今までのような笑顔に戻った。


これでこそ風音さんだ。


そう思いながら俺はリビングに戻り、ソファに座って彼女の料理を待った。



少しして彼女は料理を運んできた。


作っていたのはオムライスだったようだ。


しかし、運ばれてきて何とも言えない状況になった。


オムライスの上には定番なケチャップで文字が書いてあった。


その文字は少し乱れていたが『大好き』と書いてあると分かった。


さっきまで消極的だったとは思えない行動だな。


いや、まあこれが風音さんらしい。


今までとは少し違う気分で、俺はそれを何も言わずに食べた。


無言は肯定も否定も出来るんだな。


そう俺はその時思った。



彼女の手料理を食べ終わり、俺はこれからに備えていた。


これからまともに休む事なんて出来なくなるだろう。


そんな気がしていた。


とりあえずいろんな事を考えた結果、外に行けば何かが起きるだろうと思った。


それは良い事か悪い事か、それは分からないけど出なければ何も起きないのは確かだろう。


「俺はこれから外に出て何かヒントが無いか探すんですけど、風音さんはどうします?」


俺は彼女に答えが分かりきっている質問をする。


「もちろん、付いて行くよ!」


彼女は笑顔でそう答えた。


この戦争も止めるつもりだが、それ以前に彼女を守る。


今の俺の一番の目的はそれだった。



それから準備が出来た俺達は外に出た。


風音さんは先生だったから他の皆への連絡は簡単に出来た。


とりあえず集まるべきだと思ったから昼から集まれるように連絡していた。


俺達は集まれるかどうか確認しておこうと思い早めに出て目的地へ向かう。


「あたし達って付き合ってるのかな?」と彼女は急に聞いてきた。


そう言われて俺は我に返る。


今朝の事を思い出した。


「付き合ってるのかもしれないですけど、今はそんな事を気にしてる場合じゃないですよ」


俺は冷たい態度でそう言ったが、内心は恥ずかしかっただけだ。


彼女は少し悲しそうな顔をしていたから少し言葉を足した。


「でも、両想いではあると思いますよ」


彼女の方は見ずに俺はそう言った。


「炎怒くん!」と叫びながら彼女は俺の抱きつく。


必死に顔が赤くなっているのを隠すためにそっぽを向く。


だが、彼女はそれに気付いて顔を近づけてくる。


案外S気質だな…



そんなこんなで集まる予定だった広場に来た。


偶然にも人は居ないようだった。


「この調子なら問題ないですかね?」


俺はそう思い彼女に聞いた。


「大丈夫じゃないかな?」


彼女も確信が無いから少し不安そうにそう答えた。


そんな不安を実現させるようにそれは現れた。


真正面から歩いてくる男女4人組に俺達は目が行った。


その中の2人は普通じゃなかった。


一人の男子は髪の色が半分ずつ青と白で分かれていて、一人の女子は赤と青で分かれていた。


あの色からして恐らく能力者で間違いは無い。


だが2色に分かれている…?


そしてもう1人の男子は風音さんより少し濃い色の緑髪だった。


更に驚く事に、その奥に彼等より少し年上であろう男性の髪色は銀色だった。


また時を操る…? でも何か違う気がする。


俺には時又とは違う銀色に見えた。


彼等はどうやら俺達に用があったようだ。


俺達の前で立ち止まった。


「やあ、成瀬炎怒くん」


リーダーのような前に立っている男子は俺の名前を言った。


「お前らは…?」


そう聞くとその質問にはすぐ答えてくれた。


「僕達はキラーズ。それ以外の何者でもない」


キラーズ… そんな名前は聞いた事無いな。


その後、俺は威嚇するようにそう聞いた。


ただその迫力に圧されていたくなかっただけではなく、風音さんを守りたいという気持ちもあっただろう。


だが、その質問に答える事なく彼はこう言った。


「単刀直入に言おう。大人しく僕達に捕まってくれないか?」


その質問は随分とおかしなものだった。


犯罪者が警察に「待て」と言われて待つ人なんて居ないだろ。


「捕まってくれなかったら君が辛い思いをするだけだ」


彼は追い打ちをかけるように俺にそう言った。


でも、俺は負ける訳がなかった。


「悪いけど、大人しく捕まる気なんて無い」


俺はそう言った。


彼等は困るどころか少し笑った。


「そうか、後悔する事になるぞ…」


そう言って彼等はどこかに去って行った。


「何だったんだあいつら…」


俺は去っていった彼等の後姿を見ながらそう呟いた。


だが、彼等の言う通り俺はこれから後悔する事になる…



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