3話 風音の部屋
今回は平和な話です?
もう家に入ってきた…
咄嗟に俺はソファの陰に隠れた。
見つからないと信じて…
しかし、そんな恐怖は一瞬で去った。
「あれ…?炎怒くん居ないの…?」
聞こえてきたのは風音先生の声だった。
気になって顔を出すとそこには少し汗を掻いている風音先生が居た。
「あ、居た。 良かったぁ~」
「良かったぁ~じゃないですよ… 一瞬警察かと思って焦ったじゃないですか…」
寿命が縮むかと思ったよ。本当に。
「私も警察が来てるんじゃないかと思って助けに来たんだよー?」
「もし、俺が捕まってたらどうするんですか…」
俺は思った事を聞いたが、「え?そりゃ…」と言われた所でまずいと思い、「やっぱり良いです」と言った。
この人は何を言い出すか分からないからな…、聞くだけ怖い思いするだけだろう…
そう思って彼女の答えは聞かなかった。
彼女は頭を傾げて不思議そうな顔をした後少しして「それで、これからどうするの?」と俺に聞いてきた。
「このまま家に居ても恐らく警察が来るだろうし、誰にも見つからない所にとりあえず行かないと…」
そう言うと彼女はそれを待ってましたと言わんばかりにニヤニヤしだした。
「んー? 誰にも見つからないところか~ 例えばあたしの家…とか?」
そう言われて俺は一瞬戸惑った。
確かに見つからないかもしれない。だが、先生の家に行って良い物なのか…?
「あたしは構わないよ?」
「あの、俺の脳内と会話するのやめてくれませんか」
少し考えて俺は行く事にした。
他に行く場所も無いから仕方なくだ。
ここで警察に捕まってたら元も子も無い。
それも考えた上で彼女の家に行く事にした。
「このままここには居れないんでそうします」
そう言うと彼女は「よし!!」と渾身のガッツポーズを見せた。
「ただ隠れ家にするだけですからね? 他には何も無いですよ?」
俺は念のためそう確認したが彼女の耳には届いて居なかった。
彼女は俺の家まで車で来ていたので、その車に乗って彼女の家に連れて行って貰う。
俺は間違った行動をしていないと信じて。
「着いたよ」と言って車を降りる彼女に続いて俺も車を降りた。
彼女の家は何の変哲も無いアパートだった。
大学生の頃からそのアパートに一人暮らししてると前聞いた。
ドアを開けて家に入る彼女に続いて俺も入る。
「じゃあお邪魔させてもらいます」
と俺が言うと彼女は満面の笑みで「どうぞ」と言った。
ただ喜んでいるのか何か企んでるのか分からないから怖いな。
入って見ると先生の家は案外ちゃんとしていた。
入ってすぐの部屋はリビングになっていて壁で見えない先に台所が、そして隣の部屋は寝室になっているようだった。
「案外ちゃんとしてるって思ってるでしょ?」
「隠せないから正直に言うとそう思いました」
もしかしたら俺のポスターとか作って貼ってるなんて事もありえなくも無いと思ったが、流石にそれは無かったようで安心した。
流石にそんな熱狂的なファンみたいなことはしないか。
「座ってていいよー」と言われてとりあえずソファに座った。
時間は既に午後12時になっていた。
そういえば昼飯は食べてないから少し腹が空いてきたな。
「お昼食べる?」と彼女は台所の方に居ながら俺に聞いてきた。
こういう時は思ってる事を気付いてもらえると助かるな。
「良いんですか?」と聞くと、「手料理食べてもらえるなんてご褒美だよ」と言われて少し納得が行かなかったが食べさせてもらえるならお言葉に甘えよう。
「じゃあ欲しいです」
「あたしが欲しいって!?」
「いや、ご飯です」
数十分後には彼女の手料理が運ばれてきた。
台所に居たため気付かなかったが、彼女はエプロンを着ていてそれには『炎怒LOVE』と書いてあった。
やっぱり俺のファンだったみたいですね。
ファンが出来るような事はしてないんだけどな。
ツッコんでも多分どうしようも無いからそのエプロンは無視する事にした。
「お待たせー」と言って彼女は料理が乗った皿をテーブルに並べる。
早く作ろうとしたからかそんな時間の掛かる料理は無かったが、十分な出来だった。
「こんな物しか無くてごめんね?」
「いや、十分だと思いますよ」
そう言いながら俺は箸を取って適当に食べる。
味も悪くない。 寧ろプロとまでは言わないが良い方だった。
「一人暮らししてるだけありますね… 美味しいです」
「良いお嫁さんになれるよね! じゃあ結婚しよう!」
そう言ってきたが俺は聞こえて無いフリをして目の前の料理を黙々と食べた。
彼女は「無言は承認されたって事かな…」と言いながら一緒にご飯を食べていた。
ツッコんだら負けだと自分に言い聞かせて無言を貫き通した。
二人で食べるとすぐに無くなって、十分に満足した。
「「ご馳走様でした」」
二人でそう言って俺は食器を片付けようとした。
「あっ、あたしがやるから良いよ」と彼女は言って俺から食器を奪い取る。
何か台所に見られたらまずい物でもあるのか…?
そう思ったが、疑うのも悪いし、ただ客だからというおもてなしだろうと思って何も言わなかった。
さて、これからどうするべきか。
とりあえず何か情報を得るために外に出るべきか…?
いや、でも今出たら間違いなくこの辺は警察が多いだろうから見つかるだろう。
かと言って何もしないのもな…
そういろいろ考えていると彼女は二つのコップを持ってきた。
中身は普通にお茶だった。
「喉が渇いたら飲んでいいからね」と言ってそのコップを俺の前に置く。
「ありがとうございます」
俺は一応お礼を言って何をするべきか考えていた。