1話 再発
やっと本編入っていきます!
父を殺し、能力が無くなって1ヶ月は経っただろうか。
今は平和な日常を過ごしている。
今日も学校だ。前は学校が面倒だった事もあったけど、あの戦争があってからは学校が面倒だと思った事は無い。
俺は軽い足取りで学校へ向かう。
学校に着いていつも通り風音先生は飛びついて来る。
「炎怒くーん!今日もカッコいいね!」
相変わらず風音先生は俺に夢中だ。
「先生も可愛いですよ」
出来るだけ気取った声でそう囁くと、「はぅん…」と言って彼女は倒れる。
これが新しい対応の仕方だ。これが一番手っ取り早い。
「おい! 先生に何した!」
誰かが後ろから声をかけてきた。
声で誰なのかは予想出来ていたが、振り向いて確認する。
「何もしてないぞ、頼堂」
後ろから声をかけてきたのは頼堂だった。
「じゃあ何で先生が倒れてるんだよ!」
「さあ、貧血か何かじゃないか?」
俺は適当な事を言って誤魔化す。
「お前が助けたらどうだ?」
俺がそう頼堂に言うと、ちょっと何かを考えてから「そうする」と言って彼は彼女に肩を貸しながら、何処かへと向かった。
恐らく保健室だろう。
そう思いながら俺は隣の教室まで来た。
通り際に見えたのは相変わらず仲が良さそうな金髪と黒髪のバカップルだった。
教室のドアに凭れ掛かりながら彼等に話しかける。
「相変わらずのバカップルだな」
そう言うと二人ともが振り返る。
「俺はそんなんじゃない。こいつが一方的に来るだけだ」
金髪の男、金剛はそう俺に返した。
「とか言って、昨日『お前が居なきゃ生きていけない』なんて言って…「何言ってんだ!!」
黒髪の彼女、黒山さんが話してる途中で金剛は割り込んできた。
「やっぱりバカップルじゃねぇか」
と俺は呟いてその教室を後にした。
自分の教室に着き自分の席に座り一息つく。
やっぱりこんな平和が一番だ。
そう思いながら俺は1時間目の授業の準備をした。
学校が面倒だとは思わないなんて言ったが、やはりそんな事は無い。
多少はもちろん面倒な時もある。
だが、どれだけ面倒でも、大事な親友を失うような戦争より楽しいのは確かだ。
俺はもう何も失いたくない。
俺の思いはその一心だった。
そう思っていたとき、授業の始まるチャイムは鳴った。
授業も終わり、俺は家に帰ろうとした。
風音先生が付いて来ようとしていたが、教頭先生に止められていた。
まあ、ちゃんと仕事をしていない風音先生が悪いだろう。
そう思いながら俺は家へ歩き出した。
帰り道は特に変わった事は無かった。
でも、何か変な予感を感じていた。
何かが起きそうな気がした。
でも、何が起きるか何て俺には何も分からない。
それにただの予感だ。何もある訳はないだろう。
そう思って気にせずその日は過ごした。
翌日、朝起きて顔を洗おうと洗面所に向かった。
そこで俺は驚く光景を目にした。
俺の髪は赤色に染まっていた。
「…えっ?」
俺は目を凝らして鏡をよく見る。
だが、どう見ても俺の髪は赤色だった。
色覚障害とやらになったのか…?
でもそれってこんな急になる物なのか…?
そもそも周りの他の物は普通に見えてるからそんな事は無いか…
そう思って周りの物を見て何も異常が無い事を確認してもう一度鏡を見る。
しかし、やはり俺の髪色は赤く染まっている。
髪色が変化する体にでもなったんだろう…
そんな意味不明な理屈を思いつつも俺は手から炎が出るかを試した。
微かに感じる熱気と共に暗かった洗面所を照らすように炎は出た。
ここで確信した。いや、分かってはいたがもう現実逃避は出来なかった。
「えええええええええええ!?」
俺は驚いて叫んだ。
何でまた能力があるんだ…?
やっぱり昨日の予感は合ってたのか…
いろいろ考えすぎて頭がおかしくなりそうだった。
とりあえず一人で考えていても仕方ない。
今の俺には同じ能力を持っていた仲間達が居る。
彼等も能力が再発しているのかも気になる。
だからすぐに学校へ向かおうと、俺は支度をしていた。
しかし、その邪魔をするように家のチャイムが鳴った。
こんな時間に来るなんて誰だ…?
玄関のドアを開けて見ると、そこには緑髪の彼女の姿があった。
「炎怒くん… あたし能力が…」
彼女はそこまで言った所で俺の髪色にも気付いたんだろう。
「あれ、炎怒くんも…?」
「はい、また能力が…」
彼女も再発しているって事は頼堂や金剛もなのか…
俺は一応彼女を家の中に入れて支度をした。
その時急いでてテレビの音が聞こえて無かった。
大事な情報が流れていたとも知らずに…
家を出て学校に向かっていると、何かと人が多かった気がした。
その人達は俺達を見ると少し警戒しているようにも見えた。
でも、能力の事が知られてるとは思えなかったから知らないフリして真っ直ぐ学校へと向かう。
学校に来たのはいいが、学校の姿は昨日までとはまったく違った。
いろんな部分が爆発したように壊れていたり、水に覆われたりしていた。
「何だよこれ…!?」
俺は風音先生の横でそう呟いた。
その時だった。
「炎怒!」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声のする方を見ると、黄色い髪の頼堂、そして能力が発現しているのか分からない金剛と黒山さんが居た。
でも恐らく皆発現しているんだろう。
「お前等もやっぱり能力が再発したのか…」
俺がそう言うと皆は黙って頷く。
「それよりこれは一体どうなってんだよ…」
俺は変わり果てた学校を見ながらそう聞いた。
「そうだった!今回は僕達だけじゃなくて生徒の過半数が能力を持ってるんだよ!」
頼堂は俺にそう言った。
「じゃあ、これはこの学校の生徒達がやったって事か…」
俺はその世紀末のような景色を見ながら呟いた。
再び戦争は始まる。