18話 再戦
帰り道、話すことはいっぱいあった。
兄さんはどういう生活をしてきたのか。
それについていろんな質問があった。
「俺は小学生の頃、突然母さんに『あなたはもうこの家には居れない』って言われたんだ。 それで俺は孤児院に連れて行かれてそこに預けられた。それから孤児院で高校まで行って、それから必死にバイトしながら大学まで行ったんだ」
彼の過去は悲しい物で、聞いていて胸が痛くなった。
「兄さん大変な思いしたんだな…」
俺はちゃんと育てられている事に感謝していた。
それにしても何故母さんは兄さんを捨てたのか…
いくら考えても正しいと思う答えは見つからなかった。
「ただ、それでも楽しい事だって沢山あった。その中の一つは川崎さんと会った事だったりな?」
そう言われて俺と風音さんは少し反応に困る。
今彼女と実質交際関係のような状況である俺達にそんな話をされてもな。
「そうだったんだ…」
風音さんはそう言った。
「あれ? 付き合ってたのに知らなかったんですか?」
俺は初めてそんな事を聞いたような反応をした風音さんに疑問を持った。
「うん、彼はいくらあたしが過去の事を聞いても一切話してくれなかったからさ…?」
まあ、確かに話したくない事だよな…
「そんな事も知らずにあの時怒っちゃってごめんね?」
風音さんは兄にそう言っていた。
「別に良いんだ、俺も話しておくべきだった」
彼等の会話からして恐らく過去の事を話さないからって喧嘩にでもなったんだろうな。
そんな時、近くで聞いた事のある叫び声が聞こえた。
「成瀬 炎怒おおおおお!! どこだああああああ!!!」
明らかに俺の名前を言ったその声に驚いて俺は声の方へ近付いた。
その時、俺は同時に近くにある場所を思い出す。
すぐそこはかつて、その声の主と戦った場所、通称決戦の地だ。
まさか、ここに居るのは…
俺は一人の名前を思い浮かべながら歩いて行くと、思っていた人物が居た。
「時又…!」
俺は彼の名前を呼んだ。
「成瀬 炎怒…! やっと来ましたね…!!」
そう彼は時を操る者… 時又 秀…
「あなたもやっぱりまた能力を手に入れているようですねぇ…」
彼はそう言ってきた。
だが、俺も全く同じ事を思っていた。
「そっくりそのまま返すよ…」
俺はそう彼に言った。
「何だ?敵か?」
後ろに居た兄さんは俺にそう聞いてきた。
「あぁ… 1回戦った事のある相手だ」
俺はそう返すと時又は高らかに笑いながら喋る。
「成瀬 炎怒の兄!! 強そうですねぇ!! 是非この私とバトルをしませんか!!」
兄は「いいぞ」と言って前に出ようとしたが、彼は急に兄を止めた。
「いや!お兄様は後です! 先に成瀬 炎怒!! あなたから倒させてもらいます!!」
俺は彼が言っている事に一つ疑問を抱いた。
「先だとか後だとか言ってるけど…どういう事だよ?」
「簡単な事でしょう? まずはあなたと戦うだけです! 1対1で!!」
なるほど、怠慢で勝負しろって事か。
前は金剛と協力したから1対1にしたいのか。
「あんな挑発に乗っちゃダメよ、炎怒くん」
風音さんは後ろから俺を止めた。
「大丈夫です、絶対に勝つんで…」
俺はそう言って前に出た。
「分かったよ、1対1で勝負だ。 兄さんと風音さんは見ててくれ!」
彼に勝負を乗った事を伝えた後、後ろに居た彼等に確認でそう言った。
「それでいい! 今回は手加減無しで行きますよ!!」
彼はそう言って眼鏡の位置を中指で直すとそう言って目の前に瞬間移動した。
すぐに俺はもう一人の俺に変わって全力で炎を出す。
彼とまともに戦っても勝ち目はもちろん無い。
何か罠を用意するしか…
そう考えながらも俺は必死に攻撃を耐える。
彼は時を操れる代わりにそれ以外の攻撃は無いから炎で押さえればダメージは少ない。
だが、流石に前後左右から攻撃されると不意打ちを嫌でも食らってしまう。
早く何かを考えないといつかは負ける…
いや…待てよ… 敢えてここは…
俺は一つの作戦を考えてそれに賭ける事にした。
俺は彼の攻撃を只管受けていた。
彼が油断するまでずっと…
彼は高速で四方八方から攻撃を仕掛ける。
「どうしました? 反撃も出来ないんですかね?」
だが、彼はいつまでも油断する様子はなかった。
俺は耐えられなくなって炎を消した。
そこに彼は同じ調子で攻撃を仕掛けてきた。
炎の無くなった今、彼の拳は直接俺の体に突き刺さる。
流石にその攻撃に耐える事は出来なかった。
俺は体から力が抜けて、その場に倒れそうになった。
その時、彼はとうとう動きが早くなくなった。
俺はこれからに全てを賭ける。
俺は動こうとしたら自分の動きが遅くなっているのが分かった。
恐らく彼が時を遅くしている。
だが、それは俺の計算内だった。
「動けないあなたを殺すなんて後味が良くない気もしますが、私は1位になれればそれで良い…」
彼はそう言った。
だが、俺は殺される気なんて勿論無い。
彼がこちらへ近付いた時、炎の弾が大量に落ちてきた。
不意打ちで降り注ぐ弾に「なっ…!?」と彼が驚いた瞬間、彼の体を弾は貫いた。
そしてその場に彼は倒れた。
その瞬間、体が自由に動くようになった。
「何をした…」と倒れている彼は俺の方を見て聞いてきた。
「俺は自分に炎を纏っているのをやめた時、予め上に弾を出していたんだ。 そう周りの時を遅くさせられてもちょうど落ちてくるようにな」
俺がそう言うと彼は悔しそうな顔をして目を閉じた。
お前がもし周りの時を遅くさせて居なかったら恐らく当てる事は出来なかった。
「お前の負けだぜ」
俺は彼にそう言ったが、既に息をしていなかった。




