17話 正体と過去
「私達は×○高校のバスケ部だったの」
その高校は確か、俺達が居る高校の近くにあるライバル校だった。
良く見ると確かにその高校の制服を彼女は着ていた。
あまり気にして居なかったという事もあるが、他校の制服とか興味なかったから気付かなかった。
「それで何でお前等は俺を狙ってたんだ?」
「最初に言い出したのは私達が居たバスケ部の顧問をやってた先生。そこに居る銀髪の人がそうです」
そうか、一人だけ大人なのが気になっていたが先生だったのか。
「先生は私達に一つの提案をしました。それがニュースで映っていたあなたを捕まえれば賞金が貰えるという物でした」
所詮は彼等もヒーローになりたい奴等だったのか。
「にしてもただの生徒にそんな事させるなんて凄い先生ね」
風音さんはそう言った。
あなたも相当凄い事する先生なんだけど、というツッコミは言わないでおこう。
「それは、多分私達が実力者だからだと思います」
「実力者?」
俺達は口を揃えてそう聞いた。
「私達はバスケットボールの全国大会で優勝した事もあるメンバーなんです」
なるほど、身体能力がそもそも凄い人だから能力を得た今は最強だと思ったのか…
そう思っていると少女は俺の方を見てこう聞いた。
「緑髪の男子と戦ったなら分かると思うんですけど、彼なかなか攻撃当たらなかったでしょう?」
「あぁ、かなり手こずったよ」
俺が倒したわけじゃないが、まるで自分が勝ってきたかのように俺はそう言った。
「彼がうちのエース。彼のドリブルは誰にも止められたことが無いの」
全て納得がいった。
そりゃ、そんな身体能力持ってるやつに一般人の攻撃が当たるわけ無いよな。
「あの彼を倒すなんてあなた…凄いのね…」
彼女は見惚れるように俺を見ていた。
「まぁ…な」
俺は自慢げにそう言ったが、兄が暴露した。
「俺が倒したんだけどな」
「ちょい、そこは黙ってろよ」
恥ずかしいだろ…
「大丈夫、あたしは炎怒くんの事凄いと思ってるよ!」
風音さんが俺をそう擁護するが、お世辞のように聞こえてもっと辛い。
「私達は全部先生に言われて動いてたんです…! 許してください…!」
彼女はそう言って頭を下げる。
金剛も黒山さんも頼堂も彼女等に殺された。
正直許せない気持ちもあったが、彼女の言う事を信じる事にした。
「そうか、じゃあ逃げな…」
そう言うと彼女は驚いていた。
「許してくれるんですか…!?」
「悪いのは先生なんだろ?」
彼女はそう言った俺に「ありがとう…」と言うと立ち上がり、走って公園を出て行った。
「良かったの?」
風音さんは横から俺にそう聞いた。
「あぁ… 復讐は何も生まれない… そう学んだからな…」
俺が涼の仇を取ろうとして樋川を殺していたら今俺も死んでいただろう…
それを考えると復讐なんてしないほうが良いと俺は思った。
「それより…」
俺は話を変えた。
「風音さんと兄さんはどういう関係なんだ?」
そう聞くと二人は少し顔を赤くしてお互い顔を背けた。
え、何?その意味深な反応。
「あー、実は大学時代の知り合いで…」
「そっ、そうそう!大学でちょっと仲良くなってね?」
彼等の反応は少し怪しかった。
「ちょっと?」と聞くと、風音さんは肩をビクッと震わせた。
この反応、絶対ちょっとじゃないな。
「お前は本当、俺に似て疑い深いな… お前の予想通りだよ、付き合ってたんだ」
兄はそう言った。
まあ、反応からしてそうだとは思ったがまさか本当にそうだとはな。
「いや、あのね? 当時は彼が好きだっただけでね? 今はもちろん炎怒くんラブだよ?」
彼女は必死に何か別の心配をしていた。
「兄の元カノでも別に嫌いになりませんよ」
そう言うと彼女は安心したように息をついた。
ちょっといろいろ考える事があるが…まあ、嫌いにはならない…はず。
それにしても、突然居ないと思っていた兄が現れ、更にはその兄は俺と相思相愛の彼女の元彼だなんてな。
話がぶっ飛びすぎて頭が爆発しそうだ。
「でも、付き合ってたって事は別れた理由が?」
「あぁ、それは怖…」
「はーい!成瀬くん!!それ以上は言っちゃダメです!!」
俺が聞いた質問に兄が答えようとしたとき、風音さんは大声でそれを遮った。
だが、怖いと言おうとしたところから全てを察した。
何をするか分からない彼女が怖くなるのは兄弟して同じようだ。
「まあ、それは良いけど…そうだ」
大事な事を聞くのを忘れていた。
「兄さんは今までどこで何してたんだよ? っていうか何で俺と同じ家に居なかったんだ?」
俺が幼稚園児くらいの時には兄は居なかったはず。
年齢の差からしても俺が幼稚園児の時はまだ小学生なはず。
流石に家を出るには早すぎる。
「あぁ、俺は… 実は捨てられたんだ… 母さんと父さんに…」
兄はそう言った。
「本当に…?」
俺は母がそんな事をする人だとは思ってもいなかった。
「まあ、道端に捨てられたんじゃなくてちゃんと施設に預けてはくれたんだけどな」
彼はそう笑い話のように言うが、それでも捨てた事に変わりは無い。
だが、それだと一つ気になる事がある。
「何で俺を捨てなかったんだろう…?」
普通なら後から生まれた俺の方を預けると思うんだが…
「さぁ… それは本人に聞いて見ないと俺も捨てられた理由なんて知らないからな?」
俺は少しの間、黙ってその事について考えていた。
それから少し経って、俺達はこれからどうするか迷っていた。
「キラーズを倒した今、あたし達の敵という敵は居なくなった訳で…」
これからどうするべきか…
また何かを探すために街を見てもな。
もうすぐ日が暮れる。
それもあったからかとりあえず家に帰ろうかという提案を兄はした。
「っていうか兄さんは今どこに住んでるんだ?」
「ん? 普通に一人暮らししてるぞ?」
あ、そんな普通の生活してるのか。
「それなら良かった」
彼には彼の帰る場所があって良かった。
そんな事を思いながら俺達は帰り道を歩いていた。




