16話 最期のチームワーク
彼等と分かれた場所まで走って俺達は戻った。
そしてそのまま彼等が進んだ方向へ向かって俺達は走る。
少し進んだところで公園の入り口があった。
もしかしてと思いそこから中を見ると、そこに居たのは赤と青の髪の少女と銀髪の男、そして何故かそいつらの仲間のようにしている風音先生、後は… 血の水たまりの上で倒れている金剛だった。
すぐに俺は非常事態だと察した。
「あの倒れてる金髪、炎怒の仲間か?」
兄はそう俺に聞いた。
言葉が出なかった俺は黙って頷いた。
「それと、奥に居るのは… 川崎さん…!?」
兄は彼女の名を知っていて、その姿に驚いていた。
「知ってるのか…?」
俺は声にならない声でそう聞くと、「あぁ…ちょっとな」と兄は何かを隠すように言った。
知り合いなら説明は必要無いかもしれないな。
「もちろん彼女も仲間なんだ… だけど今の彼女はどう見ても奴等の仲間だ…」
俺は確認で彼女が仲間だと兄に伝えるが何故敵対していないのかが謎だった。
「まるで、操り人形みたいだな?」
兄がそう言って俺は分かった。
「操り人形…? まさか操られてるのか…?」
それなら確かに納得が行く…
そして、それと同時に俺は不安になった。
もしかしたら金剛を殺したのは風音さんなのでは無いかと…
それを確認するためにも俺達は彼等に近付く。
歩いていくと彼等はすぐに俺達に気付いた。
俺はすぐに金剛の姿を確認する。
彼の胸には穴が開いていた。おそらく穴を開けたのはすぐ近くに転がっていた木の枝… 間違いなく彼女の技だ…
仲間に殺させるなんてな…
俺は涼を樋川に殺されたときよりそのタチの悪いやり方に怒りが込み上げてきた。
自然に俺はもう一人の俺に変わっていた。
「てめぇら… 覚悟は出来てんだろうな…!」
俺は怒りで炎が全身を包んでいた。
すぐに俺は銀髪の男に向かって走る。
赤と青の髪の少女を放っておいたのには理由が二つある。
一つは赤と青の髪の彼女が風音さんを操っているとは思えなかった。
赤と青は間違いなく今までの経験から炎と水しかない。
だから確定では無いが、違うと思った。
そしてもう一つの理由は兄を信じていたからだ。
彼女は銀髪の男に近付く俺に水を飛ばしてきた。
だが、俺は何も考えず銀髪の男に近付いた。
そう、兄を信じていたからだ。
兄はそれに気付いて、彼女の水を炎で防ぐ。
やっぱり彼は間違いなく兄だ。俺はそう確信した。
なぜなら俺の記憶の中じゃ一切話した事など無いのに俺の考えを分かっていた。
それはやはり血が繋がっているからこその奇跡じゃないだろうか。
赤の他人ならそう簡単にはこんな事は出来ないだろう。
俺は銀髪の男性に殴れる。そう確信したが、彼の操る風音さんが俺の前に出る。
正直今の俺は怒りに任せて彼女ごと銀髪の男性をぶっ飛ばすという方法も考えた。
だが、俺の本能がそれを止めた。
やはり敵を倒すためとは仲間を傷つける事なんて出来なかった。
俺は殴ろうとした腕を引いて下がる。
仲間を盾にされるとこんなにも戦いずらい物なのか…
そう思っていたとき、俺は視界の隅で動いた物に気付いた。
その瞬間、暗い部屋に光が差し込むように、勝ち筋が見えた気がした。
俺はこれからの一瞬に全てを賭ける。
「兄貴! 本気で奴を殴れ!!!」
俺がそう言うと彼は全てを察したように動いた。
「任せろ…! 最終時間だ!!」
手を押さえながらそう言うと炎を纏いながら銀髪の男まで走った。
その瞬間、俺は近くに居た風音さんを抱きしめるようにして抑える。
これで風音さんを操っても能力を使うことは出来ない…
だが、それだと赤と青の髪の少女が止められない。
その少女は水を兄へ飛ばそうとしていた。
その時、俺は勝つための想いを全て込めて叫んだ。
「金剛おおおお!!! やれえええええ!!」
そう叫ぶと倒れていた彼は少女の方を見て、少しだけ手を伸ばして指を鳴らした。
光は弱かったが彼女の目を眩ませるには十分だった。
「きゃあああ!!」と少女は悲鳴を上げながら水を飛ばす。
だが、兄の姿が見えていない彼女は兄の少し上に水を飛ばした。
兄はそれを少し屈んで避けると、拳を振り被って銀髪の男の顔に当てる。
能力で防ぐ事の出来ない男は人間の顔ではないくらい顔を歪ませ、後ろへ吹き飛んだ。
兄の力は男性を一瞬で気絶させるほどの力があった。
男は白目を向いて倒れていた。
その瞬間、必死に抵抗していた風音さんは落ち着いた。
「炎怒くん!大丈夫!?」
彼女はそう聞いてきた。
「風音さんこそ大丈夫でしたか?」
俺がそう聞くと彼女は「うん!」と元気に笑って頷いた。
振り返って倒れている金剛を見ると少し笑った顔で目を閉じていた。
「黒山さんの仇を取ったと言っても過言ではないな」
俺はもう息をしていない彼にそう呟いた。
あの世でまた彼女と仲良くしていてほしい。
俺は切実にそう思った。
「成瀬くん… なんでここに?」
風音さんは兄へそう聞いていた。
兄はその質問には答えず、「後で説明する」と言って少女の方へ構えた。
俺はその少女が一人で戦うとは思って居なかったから構えず見ていた。
「まだやるか?」
俺がそう聞くと少女は黙って首を横に振った。
「良かった、さすがに3対1で虐めるなんて嫌だったからな」
俺はそう言って微笑んだ。
すると、兄はまた突然倒れた。
風音さんは「成瀬くん!?」と驚いていたが、俺はさっきと同じ現象だったからそんなに驚かなかった。
少しすると彼は目を覚ました。
風音さんは起きた彼に「大丈夫?」と聞く。
兄は少し照れたように「大丈夫だ…」と言った。
俺は少し彼等の関係に違和感を感じていた。
「何で倒れるんだ?」
俺は兄にそう聞いた。
「最終時間は使った後、絶対気を失うんだよ…」
なるほど、使って一時だけプラスになる代わりに時間が経つとマイナスになるのか。
「それでさっきも倒れたのか…」
体に問題があるようじゃなくて安心した。
ふと、横を見ると赤と青の髪色の少女は困ったように座り込んでいた。
あっ、この子の存在を忘れていた。
「さて、それじゃまずはお前等が何だったのか教えてもらおうか?」
俺は彼女にそう聞いた。




