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俺の魔武器と使い魔と

 そんなこんなで夜。

 地下にある使用人の男部屋へ行けば、そこには既にユースやスウォンを始めとした使用人メンバーが勢揃いしていた。


「トウリの時よりギャラリーが多いって」


「やっと主役が来たさね。なら、早速始めようかね」


 ユースの言葉に昼間貰った袋から魔法石を出す。


「魔力を込めればいいんだよな?」


「そうさね。使い魔召喚みたいな詠唱は必要ない。ただ無心に魔力を流してくれればいいさね」


「了解」


 手の平に収まるサイズの魔法石に魔力を流せば、トウリの時程ではないが淡く光だす。

 その光が収まれば、そこには一枚の布が。


「……布?」


 深緑色の普通のそれより少し大きめな布。


「え? 俺の魔武器布?」


「布やね」


「ただの布ってより、腰布だな」


「腰布ってあれかい? オシャレとかで腰に巻くヤツかい?」


「あぁ、あれな」


 ……え、だから?

 いやいや、腰布でどうやって闘えと?

 何これ、俺死亡のお知らせ?


「まぁ、何はともあれ名前をつけてみろや。そしたら特性が分かる」


「名前ねぇ……"緑布唯(りょふい)"で」


 唯の緑の布ってな。

 ……笑えねぇ。


 名前をつけた瞬間、緑布唯の情報が頭の中に入って来た。


「えっと、特性が無制限収納、緑布唯をつけている間の魔力回復率10%上昇、無属性の魔法を自分で自分にかけた時の影響20%増し、緑布唯に乗れば空を飛ぶ事が可能」


 え、何これ。

 意外に強いんじゃない?


「唯の緑の布なんて言って悪かった。名前を"緑布威"に変えてやる」


 そう言えば、再び頭の中に情報が入って来る。


「は? 添付特性追加? えっと、魔力断裂特性を持った刀をプレゼントって、なんでキャンペーンみたいなノリ? てか、魔力断裂特性って何それ。そっちのが本物の魔武器っぽい」


 言いながらも緑布威に手を突っ込んで中を探る。

 平面の布に手を突っ込めるって何か新鮮だ。

 流石異世界イリュージョン。


「お、あった。これか」


 手に当たった硬い物を引っ張り出せば、そこには柄も鞘も抜いてみたら刀身まで真っ黒な一本の刀があった。


「なになに、あぁ、名前はもうあるんだ。"輪廻(りんね)"ね。うん、厨二乙」


 勝手に頭の中に流れてくる情報にも大分慣れた。

 輪廻を一振りして部屋の隅に居る皆を見れば、あら不思議。口をあんぐりと開けた皆々様方と目が合った。


「おいツキヨ」


「ほいほい、なんですかスウォンさん」


「なんだその魔武器」


「腰布という新感覚の魔武器、緑布威でっす☆」


「うん、ちょいこっち来て話そうか?」


「え、え?なんで? 俺何かしくった? ☆がダメだった?」


 無駄に笑顔のスウォンに手招きされて大人しく従う。

 他の人達は何やら難しい顔して黙りこくってるし……


「あのな、普通魔武器の特性ってのは一つなんだよ。なのに何だそれ? 特性四つに加え別の魔武器まで付いてくるって何のつけ売りセールだ? うん?」


「え、いや、俺に言われましても……」


 てか、特性が一つってのは今初めて知った。


「うーん、あれかね? ツキヨの魔力量の少なさと属性が無属性しかない事に対しての反動かね?」


「あぁ、確かにそりゃあり得るな」


「俺が弱い反動って……」


「いえいえ、ツキヨさんは決して弱くはないと思いますよ」


「カンナさん!!」


 カンナさんの優しいフォローに思わず感涙。

 てか反動って……

 昼間俺の事強いって誉めてくれてたじゃんよ、スウォン!!


「まぁ、それは置いといて次は使い魔召喚やろうかね」


「詠唱が要るんだっけ?」


「そうさね。教えた通りに言えばいいさね」


「分かった。あー、あの詠唱恥ずかしいんだよな……」


 溜め息つきながらも緑布威を腰に巻き、魔法陣の描かれた紙を取り出す。


 そこらにあった机の上にその紙を置いて、魔法陣に両手をついた。


「うは、なんかどこぞの錬金術師みたい」


「いいからやれ」


「はーい。"我が名は桜庭月夜。我が力に応えよ! 召喚!!"」


 唱えれば魔法陣が光出す。


 光が収まった魔法陣を見れば、そこから手が一本生えていた。


「これなんてホラー……」


《え、何これ!? 喚んどいてこの魔法陣の狭さはないんじゃね?てか笑える見てみて!! 俺片手しか向こう行けないの。まぢ、向こうからしたらホラーじゃね?》


「……」


「……」


「召喚失敗?」


「いや、一応成功だ。……と思う」


 魔法陣の向こう側からたぶんこの手の本体だろう声がするのだが、なんだか元の世界の道ずれにしそこなった友人と似たようなテンションだ。


《おーい、もしもし聞こえてる?》


 魔法陣の向こうで変に盛り上がってた声がこちらに語りかけてきた。


「ぉ、おぉ、はいはい。聞こえてるぞ」


《あー、君が召喚者?》


「そうっす」


《オッケオッケ。悪いけど、ちょっとこの魔法陣狭くて俺そっちに行けないからさ君がこっちに来てくんない?》


「え、どうやって?」


《ん? どうって、こうやって……》


「ウギャァ!?」


 魔法陣から出てる手に腕を掴まれる。

 何これ! 何これ!? まぢ恐い!!


「ツキヨ!」


「ツキヨさん!」


「うわ、ちょ、助け、」


 俺を助けようと差し出される何本もの手を掴むより早く、俺は魔法陣の中に呑まれた。


ーーー

ーー


「あぁ……なんかデジャブだよ、うん」


 気付いたら知らない部屋。

 巻き込まれた時を思い出させる。


「手荒な呼び方して悪かったね」


 そう声をかけて来たのは黒髪に一部赤メッシュを入れた蒼い瞳のテライケメン。


「このイケメン率の高さ笑える……何これ、新手のイジメ?」


「……えっと、大丈夫?」


「あ、はい。大丈夫ッス。通常運転ッス」


「通常運転って! ウハ! 気が合いそう!」


「は?」


 イケメンからえらいテンション高い声が聞こえた。

 てかこの声、魔法陣の向こう側から聞こえた人の声だ。


「あぁ、ごめん。自己紹介をしようか。俺はリュウイン・ダークウェント。皆は発音しにくいからってリンって呼んでるから、それでいいよ。魔王やってます」


「俺は……魔王?」


「そう魔王」


「誰が?」


「俺が」


「……は?」


「よろしく」


 魔王を召喚しました。

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