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利害一致で手を組ました

「……てか、なんだ? ここに来て新キャラが王子様で、使い魔は風の精霊王で、魔法に秀でた国でその実力は中々のモノって……あれか? 新しい嫌がらせか何かか? もう滅べよ。チート滅べよ。いや、ダメか。そういや俺の使い魔と魔武器も軽くチートだった。じゃぁあれだ。やっぱイケメン滅べ」


「あ、あの~、ツキヨ君?」


「何だ? チートイケメン王子様」


「それだとユース王子も含まれないかなぁ?」


「……何だ、チャラ男?」


「うわぁ、酷いなぁ。俺は別にチャラ男じゃないよ~」


「別にそんな事どうでもいい。それより何だよ?」


 問えばチョイチョイと手招き付きで人気の無いバルコニーの奥に招かれる。


「ね、俺いいこと思い付いたんだけどさぁ。聞いてくれる?」


 ニコニコと、楽しそうな笑みを浮かべて言われた言葉に思わず一歩下がってしまった。


 だってしょうがないだろう!?

 この世界の奴等の笑顔での提案でいい事だった試しなどないのだ。


「聞いてくれるよね~?」


「いや、遠慮する……」


「その黒猫がリン君で、君の使い魔で、ついでに魔王だって皆にばらしちゃうよ~?」


「喜んで聞かせて頂きます! ……てか、何で知ってる!?」


「言ったでしょ~? ジンがっと見てたって。だから、その黒猫がリン君だって知ってるし、俺が見た君の目の下に刻まれてる紋章をジンに聞いたら、直ぐに魔王のだって分かったよ~。"精霊"は物知りだからねぇ」


「……」


 精霊って、思ったより厄介かもしれない。


 "精霊"。

 魔物でも魔族でもない独自の生態と進化を遂げた"精霊族"。

 火・水・風・土・雷の精霊が居て、それぞれの属性の精霊を纏めるのが"精霊王"である。

 因みにトウリが使い魔にした属性神とは強さは均衡している。

 更に余談だが、そんな属性神や精霊王より頭一つ分抜きん出て強いのが魔王だそうだ。


 ……以上、リンからの知識でした。


 さて、じゃぁそろそろ現実に戻ってタクトの話を聞こうじゃないか。


「あのねぇ、俺があの子と行動を一緒にすればいいんだよ~!」


「うん?」


「だから~、俺があの獣人のセーラちゃんだっけ? と行動を一緒にすればいいって言ったの」


「何でだ?」


「この城に一日中閉じ籠っとくのはあの子の為にならないでしょ~? 下手に城内うろついてバカな貴族に何かされるよりは、俺と城の外で街を見て回ったり、ギルドに入って力をつけた方がよくない?」


 意外すぎるところからまともな意見が出てきた。


「けれどそれだと、この国の内情調査が目的のアナタからすると有益な情報が得られないのでは?」


 軽く空気になりかけてたスウォンから声が上がった。

 てか、


「国王騎士団団長のスウォンが堂々と"内情調査"と告白したタクトを野放しにしていいのか?」


「まぁ、名目上は"他国間交流"だからな。裏でどんな画策がされていようが俺達は下手に手出し出来ない。相手が反論出来ない位の徹底的な証拠がなけりゃ、逆にこっちが牢獄行きさ。それに、ユースは兎も角、国王様や姫様は余り守る気しねぇんだよなぁ」


「最後にどえらい本音ぶちまけやがった」


「まぁ何だ、あの二人は今勇者様に御心酔で、護衛も彼だけでいいって(のたま)う位だからな。平民出身の団長とその部下は信用ならないそうだ」


 肩を竦めて呆れた様に言ったスウォン。


 だから、"団長"という肩書きを持つスウォンがこんな大々的な夜会で王様達の側に居なかった訳か。


「俺的には、"他国間交流"も"内情調査"もぶっちゃけどうでもいいからさぁ。まぁ、お目付け役から俺の動きを報告される以上、何らかのアクションは起こさないといけないんだよ~。そこで、さっきの提案にプラスして、ツキヨでもユース 王子でも、街で一緒に居たキサラギって言う人でもいいからさ~、俺と一緒に行動して欲しいんだよねぇ。そうすれば一応、"敵国の人間と親しくなっている"って印象が与えられるからさぁ。後はもう、適当にそれっぽい事言っとけばいいからさ~」


「つまり、セーラちゃんを出汁に俺達を利用したいと」


「その言い方されると身も蓋もないねぇ」


 ヘラリと笑って、それでも否定せず俺達の答えを待っているタクト。

 スウォンと顔を見合わせて俺達は考える。


 確かに、姫さんを筆頭に録でもない人間がわんさかいる城にずっと身を置くのはセーラちゃんにとってよろしくない。

 俺やユースだって四六時中彼女と一緒に居れる訳ではないのだ。

 なら、せめて日中だけでも街に出た方が色々とセーラちゃんの為になる。


「分かった。お前の提案に乗ってやる」


「そうこなくっちゃね~。なら、明日の朝8時に城門でねぇ」


 言うが早いか、ヒラヒラと手を振って去って行ったタクトを見送って俺とスウォンも中に戻る。


「……信用出来るのか?」


「タクトの事か?」


 会場に戻る手前でスウォンが聞いてきた。


「まぁ、少なくとも人を喚んどいてそのままほっぽりだす様な連中よりは信じられる」


「確かに」


 苦笑して頷いたスウォンが会場の方を見てその顔を険しいモノに変える。


「……面倒なのが来やがった」


「ん? ……あぁ、姫さんか」


 きらびやかなドレスに身を包んだ姫さんがトウリを引き連れて此方へ向かって来ている。

 ……逃げてもいいだろうか?


「ここの一角だけやけに霞んで見えると思いましたら、案の定アナタでしたか」


「ブハ!!」


 開口一番の嫌みに思わず吹き出してしまった。

 スウォンからの呆れた視線が痛い。


「な、何が可笑しいんです!?」


「いやぁ、どんなに綺麗に着飾ってもやっぱ中身までは綺麗にならないんだなぁって」


「なっ!!」


 言った瞬間、隣のスウォンが軽く咳き込み顔を反らす。

 スウォンさん、スウォンさん、肩が揺れてます。


「ちょっと月夜、女の子に余り酷いこと言っちゃダメだよ」


「いや斗里、それさっきの俺の言葉否定してることにならないから」


 せめてそこはキッパリ否定してやれよ。


「アナタ最近少し調子に乗りすぎです! 獣人の養子まで貰ってくるとは! 少しは自分の立場というものを鑑みなさい!!」


「……いや、俺立場とかないし。てか人の身内の問題にまで口出しするとか、そっちこそ何様?」


「身内の問題ですって!? 妾の子まで巻き込んでいるではないですか! 彼は一応この国の王子です! そして私はこの国の王女です!!」


「あぁ、はいはい。けど、ユースが王子とかアンタが王女とか俺には関係ないし、そもそもあの子を養子にするってのはユースが決めた事だ。ユース自身の事を姫さんがどうこう言える訳ないだろ」


「言えます! 彼は王族。民の代表であるべき立場の者がどこの馬の骨とも知れない獣人などを養子にしたなど、民に示しがつきません!!」


 顔を真っ赤にして怒鳴る姫さんを目尻に俺は笑う。


「民に示しがつかない? それは、獣人を"など"と貶し、親の無い幼子であろうが人間が養護するべきではないと言った、アンタの今の発言の方がそうなんじゃねぇの?」


「そんな事言っておりません!!」


「言ったも同然だろ。それとも何か? アンタは"人間以外"の親の無い子供を養護してくれる施設を知っているからそんな事言ってんのか? そちらに預けろと?」


「そんな施設この国には……彼等の里にならある筈よ!!」


 その言葉にプツン、と俺の中の何かがキレた。

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