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5 会社で受けた窃盗犯罪

 榛さんが仕事に出かけてから、私は昨日見せた書きかけの小説という形を取った日記みたいなものともう一度向き直って取り込み始めた。

 勿論榛さんと一緒に朝食も食べたし、薬も飲んだし、首にはカラーを巻いてから。

 約束したからね。


***


 社内で窃盗被害に遭った。


 この被害に遭ったことを誰かに知って貰いたかったのだ。 

 この事件の被害に遭った時、はっきりとしない特定出来なかった加害者が10年以上たった今でも許せない。

 相手は確実に社内の人間だと断言出来るけれど(社員しか入れない現場だったから)、特定するまでには至らなかった。

 でも、誰だか分からないけど、同じ会社の人間であったことは間違いないのだ。


 はっきりと言おう。


 死んでしまえばいいのに。

 そこまで言うとちょっと言い過ぎだと思うけれど、犯罪を犯したのだ。加害者は罰を受けるべきだと思っている。

 それ相応の痛みと罰は受けて当然だと、むしろ私が被害に遭ったことで長年苦しんだ辛い経験と今後も続くこの苦しみも併せて犯人は不幸になってしまえばいいのに。

 そう思っている。


 加害者に私が今でもそう思っていることを今後知ることが有るとは思えないが、書くことさえも、誰かに言うこともないのなら、私が何を思って、どんな目に陥ったのか誰一人知られることなく事件なんてあったことすら記録に残らないだろうから書き残す。

 10年の時間の経過でようやく書くことが出来るまでに思えるようになったのだ。

 今までふとした時に、昔の辛い記憶を何度も思い出しては心と体に不調をきたしていた。

 辛い事なんて忘れてしまいたいのに。


 だから、私はここに書き残す。

 私はこの恨みを忘れない、と。


***


 自分でもあの頃は警戒が足りなかったと今だからこそ思う。

 まさか勤めている会社の更衣室のロッカーが標的になってるなんて思いもしなかった。


 本社はもう一つの日本の首都とも呼べる場所にあり、国内外に数重もの関連企業がある。セラミックコンデンサを主力商品としている会社で、新年になるとCMが流れるようになって数年が経つ。自転車をロボットに乗っているのでも有名だ。

 私が就職したのはそのうちの中の1つだ。


 XX製作所。


 名前を伏せたところで、セラミックを扱う有名な会社と言えば従業員ならずとも知っている人は多いと思う。その中でも北陸の会社だ。(ちなみに県内には二社ある)

 地方で人口減少が問題となっているが、従業員数400人を超えればそれだけで大企業と言える。優良企業と世間でも謳われてもいる。

 それ程の会社に就職出来たことは入社当時は素直に嬉しかったのだが。

 まさか数年後にこんなことになるなんて。

 もし結果を知っていたら、給料や労働環境がいくら良くても、絶対に選ばなかったと断言できる。


 頚椎症という病気と人間関係の悩みもある程度の事はどこの会社でも有りえて仕方のないものだと割り切れるものだが、窃盗という犯罪の被害者となるなんて思いもよらなかった。


***


 仕事帰りにスーパーなどで支払いをするときにあれ?と思うことは何度かあったのだが、気のせいだと思っていた。

 それがある時、昼休憩を終えて更衣室へ入ってロッカーの前まで来ると、自分のバッグが床へと転がっていたのだ。朝は確実に入れて扉を閉めたのに。念のため、バッグの中に入れていた財布を確認すると数枚札が盗まれていた。

 その日は欲しいCDの発売日で足りるお金を朝入れておいたのに、足りなくなっていたのだ。


 この会社のロッカー数は従業員の数が多いにもかかわらず、施工した時から従業員数には完全に足りないロッカーしか用意されず、2人で1つしか使えない会社だった。しかも、鍵もなく、上下指定の作業服を指定されているのだが、出勤退社には着てはいけないという決まりがあった。仕方なくロッカーで着替えなくてはならないのだ。

 お金を盗まれたことは周りにいた人にも当然言ったが、会社に届け出は出さなかった。警察を呼んでいいのか悩んだのと、自分の警戒心が足りなかったからというのもあって。


 それからはなるべくお金を持ってこないようにはしていたのだが、食品を買わないことには生活が成り立たない。少量だけ持ち歩くようにはしていた。


 それから、どれだけ経ったころだったか。


 作業場の机の中に入れていた財布を数分離れた間に財布ごと盗まれたというのが、昼になって気が付いた。

 午前中はほぼその机にいたのだが、仕事の関係で上の階へ行ったのと、トイレに行ったことがあったのだ。その間にやられたらしい。

 中には現金のほか、ポイントカードも入っていたが、今回はクレジットカードが二枚入っていたのだ。流石に黙ってはいられなかった。

 すぐさま上司の主任に言って、探してもらったのだが見つからなかった。

 その日は取り敢えずクレジット会社に連絡を取り紛失したことを告げると、何故無くなったのかと聞かれた。

「会社で財布ごと盗まれました」

 そういうと、

「警察に盗難届を出してください」

 と言われた。

 次の日、主任にクレジット会社から盗難届を出す様に言われました、と告げると信じられないことを言われたのだ。


「落としたことにして届け出を出しない」と。


 この時の私は盗まれたことによる動揺と、頚椎症がかなり酷くて体調を崩しがちで大変だったのだ。真面にその言葉を受けたまま仕事が終わってから警察へ一人で出向き、最初会社で財布を落としたと言って届け出を出したのだ。(どうして上司の言われるままに言ったのか、今でこそ馬鹿だなとは思うけど、当時は余り考えることが出来ていなかったと思う)


 警察官に調書を取るからって別室へと連れていかれ、どこで無くしたかと聞かれて会社の机の中というと、それは落としたじゃなく盗難でしょと言われた。

「上司から落としたことにして届け出なさいと言われました」

 そこで私がそういうと警察官は呆れていたように思う。(この時の警察官の顔は全然覚えていないが呆れていたように思う)

 それから何やら別の紙にもう一度書き直していたように記憶しているので、最初から書き直してくれていたのだろう。

 ごめんなさい、二度手間をとらせてしまって。上司のせいだよ。


***


 それからというもの、私は会社内の職場を転々とさせられた。というか、出来ない仕事が増えた。

 頚椎症の他に、手をよく使う現場だったので、両手首を炎症起こしたりして箸も持てないこともあったのも理由の一つだろう。

 兎に角体調が悪化するばかりで会社側もいらない人間として扱っていたのではないだろうか。よく分からないけど。

 役に立たないことは自分でも分かっていた。

 医者から暫く休職するようにも言われて暫く会社を休んだし(家にいると眩暈もほとんど出なかったので、頚椎症とうつ病が出かかっていたんじゃないかなと今では思ってる)

 この頃は眩暈もそうだけど、一番酷かったのは仕事中に過呼吸が起きて病院へ運ばれたことだ。

 30分以上呼吸がまともに出来なくて、肘から指先まで動かすことが出来なかったのを覚えている。その時初めて過呼吸になったから、私もしかしてこのまま死ぬのかなと?と思う程に酷かった覚えがある。


 仲のいい友達もいたのだけれど、財布を盗んだ人が誰なのかわからないのと、ロッカーでお金を盗んでいたのは絶対に女なので誰の事も信じられなくなって暫くして会社を辞めた。


 会社を辞めたことで、心がほっと出来た気がした。


 今ではもっと早くに止めることを決意すればよかったと思うのと、ロッカーやバッグに二人で使っているロッカーと言えども犯罪を記録する機械を購入して誰かということを突き止めればよかったとそれだけは後悔している。


 大企業で祝日もきちんと決められていて給料は安定しているのかも知れないが、XX製作所で働きたいと言う人がいるのなら、犯罪には気を付けた方がいいとだけ声をあげて伝えたいと思います。



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