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10 望みが叶うなら

 二日続けて榛さんと過ごした夜が明け、パンを中心とした簡単な朝食を取っていると。

「一葉は動物って好き?犬と猫だったらどっち?」

 脈絡もなく唐突に榛さんから質問を受けた。

「えーとね。今まで動物を飼ったことがないから、どっちと聞かれても両方好き、かな。動物は割と好きだから」

「そう?なら良かった」

 何だろうと不思議に思いつつも答えた私に榛さんは嬉しそうに笑った。

「明日は土曜日で俺仕事が休みだからさ、連れていきたいところが有るんだけど一緒に行かない?」

「どこへ?」

「うちのアパートの割と近くにある店なんだけど」

「行きたいですっ」

 意味深に笑みを向けている榛さんに、私はどういう店か聞いて居なくても嬉しくて直ぐに承諾した。

「分かった、分かった。そんなに慌てなくていいから。じゃあ、明日約束ね」

 前のめりになってまで返事をする私が可笑しいと笑われた。

 だって、嬉しいんだもん。

「外でデートって初めてだから嬉しいんです」

 今までスーパーなどの買い物は一緒に行ったことはあるけれど、約束をして外にデートに出かけるということはしたことが無かったのだ。

 だから、ついはしゃいでしまった。

「ごめん、そんなに喜ぶならもっと早くからデートに連れて行けば良かったな。一葉は人混みが苦手だと思ってたから。今度からは家デートばかりじゃなくて、一葉の行きたいところ連れて行ってあげるから許して?どこに行きたいかリクエストある?」

「えっ、いいの!?」

「勿論」

「あのね、まだ先の事なんだけどクリスマスは二人で過ごしたいなあって。キャンドルを灯した部屋でチキンとか飲み物も用意して、小さくていいからホールケーキも買って来て二人で半分こして食べるっていうのが夢なの」

 子供っぽいと言われるかもしれないけど、彼氏が出来たらいつかこんな風に過ごしてみたいっていう理想を告げた。

 学生の頃、友達が彼氏と過ごした話を幾つも聞いて羨ましいなと思うだけだった私。叶うなら榛さんと初めてのクリスマスはそんな風に過ごしてみたい。

「それは、全然構わないんだけど。一葉の言うそれって家デートじゃないの?」

「あ」

 何処に行きたいかと聞かれたのに、私が言ったのは確かに家デートだった。

「クリスマスは一葉の希望通りに決定ってことで。どこにデートしたいかはゆっくり考えていいから。で、取り敢えず明日の初デートは、コーヒーショップね」

「コーヒーショップ?」

「うん、詳しい事は今は言わないけど、そこの店、一葉好みだと思うんだよね。明日は天気もよさそうだし、散歩がてらに行こうかなって。ずっとパソコンに向かってばかりだと運動不足でしょ?あ、そろそろ会社へ行く用意しないと遅れそう」

 時計を見れば思っていたより時間は進んでいた。

 片づけは私が引き受けるから、榛さんは会社に行く準備をしてもらった。


 玄関のドアを開けようとしていた榛さんは思い出したように振り返った。

「あ、そうだ。今日俺が仕事終わったら自分の荷物を取りに来るついでに、一葉も迎えに来るから泊まる用意をしておいてね」

「えっ、泊まるって、どこへ?」

「俺ンち。明日行く店はウチから近いって言ったでしょ?一葉の体調もいいみたいだし、宣言通り二晩も一葉に手を出さずに頑張った俺にご褒美として今日は一葉を頂戴?」

 榛さんからとんでもない爆弾発言を投下された。

 真っ赤になって返事を言えずにはくはくしている私に榛さんは身を寄せたかと思うと、ちゅっとキスをおとした。

「約束だからね?それじゃあ、行ってきます」

 いい笑顔を見せる榛さんはスーツを翻し鍵を外から忘れずに書けると会社へ向かって行ったようだった。

 足音も聞こえなくなっても、かなりの時間一葉はその場から動けずに立ちすくんでいた。

 榛さんのとんでもない発言のお陰でその日は書籍化の事を考えられずに、断然褒美の事ばかりを考えていた一葉だった。


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