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43:騎士団長、決意する

 ハインの報告を聞いたユスティンは、青ざめていた。

 神殿の敷地内は、関係者以外の立ち入りが禁止されている。だから、先触れとしてハインを走らせたのだ。

 当日にアヤカと神殿の外で合流できればと踏んでいたのだが、神殿側はユスティン達が思っていた以上に馬鹿だったらしい。

 力を抑えるという薬の効果が消えないままの聖人を拘束して、幽獣の前に引っ張り出す。武器は聖剣という名の脆い短剣だけ。

 しかも、幽獣が現れた瞬間、神殿騎士団は聖人二名を置き去りにして逃げたという。

 アヤカは弟を逃し、自分は幽獣と戦っているらしい。聖人としての力が不完全な状態で。


「すぐに向かいます。場所は!?」


 ユスティンは、ハインからアヤカのいる場所を聞くと、グリモに乗って羽ばたいた。

 神殿内への立ち入りは禁じられているが、それどころではない。それに、上空から確認したが、神殿の者達は誰も外に出ていなかった。

 神殿騎士団は、全員建物の中に避難してしまったようだ。出てくる気配もない。

 ハインに言われた場所付近を、上空から確認する。


「……見えない」


 鳥型の幽獣から身を守るため、屋根の下にいるのかもしれない。


「アヤカ!!」


 名前を呼ぶが、それに対する返事はなかった。

 近くに幽獣がいないことを確認し、地面に降り立つ。


「アヤカ、どこにいるのですか!?」


 幽獣の死体が多いあたりを捜索する。きっと、倒したのはアヤカだ。

 神殿の建物の隙間に、彼女は倒れていた。


「アヤカ!!」


 倒れているアヤカを発見したユスティンは、グリモを連れて慌てて彼女に駆け寄る。


「申し訳有りません! アヤカ……あなたを、こんな目に遭わせてしまうなんて」


 ユスティンは、聖人至上主義の神殿の管轄下では、滅多なことはされないだろうと踏んでいた自分を責めた。

 アヤカは、全身傷だらけで今にも死にそうな有様だ。

 それを見て、ユスティンは、今までいかに彼女に酷なことを強いてきたかを思い知った。

 聖人なんて大層なことを言われても、アヤカは年若い少女なのだ。


 ユスティンには、騎士団の団長としての責任があった。

 人々を守り、騎士達の犠牲を少しでも減らす。そのためならば、聖人を利用することも厭わなかった。

 アヤカに接するたびに、自分の選択を迷った。

 聖人を利用している自分が、彼女に触れて良いのかという葛藤から、恋人になったアヤカに手を出すこともできずにいた。


「僕が、間違っていましたね……」


 地面に横たわるアヤカを抱き上げ、素早くグリモに乗せる。アインハルド騎士団の医療施設へと運ぶのだ。

 これ以上、彼女に負担はかけられない。

 自分たちの世界の問題を聖人に押し付ける……本当にそれでいいのか?

 今まで何度も葛藤してきたことだった。


(でも……もう迷いません)


 ユスティンは、聖人に頼らずに赤い夜を乗り切ることを決意した。


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