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12:アヤカ、異世界の石畳の上で寝る

 脇腹から吹き出した真っ赤な血が、アヤカの手のひらを濡らす。

 とっさに体をひねり、腹に風穴が開くことを回避できたのは奇跡に近かった。


(ひゃぁ、ものすごく血が出てる!)


 アヤカは、今までにない出血量を目の当たりにして戸惑いつつ、巨大な鳥から距離をとる。その間も脇腹からは、おびただしい量の血が流れ出てアヤカの作業着を赤黒く染めていた。

 獲物を仕留め損なった鳥は、苛立った様子で再びアヤカに狙いを定める。

 握ったままだった建物の破片を振り上げたアヤカは、鳥に向かって至近距離からそれを投げつけた。

 運動神経だけは抜群で、数々のクラブの助っ人として活躍していたアヤカのコントロールは正確だ。石はまっすぐに飛び、鳥の目に命中した。

 それを確認したアヤカは、すぐに別の建物の破片を拾う。


「うわぁぁぁ!」


 余裕のない状況の中、渾身の力を込めて破片で鳥の喉笛を殴りつけた。鋭く尖った部分が鳥の喉に刺さり、皮膚を切り裂く。生きることに必死なアヤカには、鳥への同情の念など微塵もなかった。

 けたたましい叫び声をあげた鳥は、暴れながら周囲の建物をさらに破壊する。そうしてしばらく暴れた後、電池が切れたように動かなくなった。

 その様子を、アヤカは石の破片を握りしめたまま黙って眺めていた。脇腹から溢れ出す生暖かい液体は、アヤカの服全体を濡らし、地面にも滴っている。


(なんだか、体がふらふらする。力が入らない……)


 近くの建物に背を預けてもたれかかり、日の沈みかけている空を見上げる。空は、アヤカの流す血のように真っ赤な夕焼け色だった。


(ああ、私、こんな場所で死ぬのかな?)


 鳥の脅威が去ったからだろう、周囲の人間が徐々に動き出している。

 オブジェや馬車の下に隠れていた人々は、おそるおそるそこから這い出し、建物に隠れていた人々は扉を開けて外の様子を確認していた。

 しばらくすると、数人がアヤカのいる方へやってきた。


「おい。こいつ、まだ生きているぞ。騎士団に連絡だ」


 ザワザワと人々の話し声が聞こえるが、弱りきったアヤカには、彼らの言葉を判別することができない。そのまま、糸の切れた人形のように石畳の上に崩れ落ちた。


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