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10:アヤカ、異世界で買い物をする

※念のため、残酷描写タグを追加しておきます(あんまりグロくないですが)。

 翌日、アヤカは昼食を食べた後で作業着のまま街へ繰り出した。掛け布団とシーツ、カーテン、下着の替え、その他諸々を新調するためだ。幸い、ウモウジールにもらった金がたくさん残っている。

 大きな荷物を一度には運べないので、アヤカは布団類を抱えて、街と騎士団宿舎とを二往復した。

 買い物を終えて宿舎に荷物を運び切ったアヤカは、三たび街へと繰り出し、弟のいる神殿へと向かう。

 門の前には、この日も武装した兵士が置かれており、彼らは不審者がいないか厳しく目を光らせていた。とても侵入できそうにない雰囲気である。


(シュウジの奴、今頃なにをやっているんだろう?)


 強行突破を諦めたアヤカは、肩を落として元来た道を戻る。そうして、街の広場に差し掛かった時だった。

 不意にアヤカの頭上を黒い影が覆った。上を見上げると、灰色の羽を持つ巨大な鳥が数羽宙を舞っていた。


「幽獣が出た!!」


 鳥を見た街の人々がそう叫び、一斉に逃げ出す。ある者は、近くの建物へ逃げ込み、またある者は、街に立っているオブジェの影や、荷馬車の下へ潜り込んだ。

 しかし、鳥を危険なものだと認識するのが遅れたアヤカは、うまく逃げることができずに一人取り残されてしまう。建物の扉は、すでに閉ざされてしまっており、内側から鍵がかけられていた。オブジェの影も荷馬車の下も、人がいっぱいで入り込める余地はない。

 アヤカは、建物の淵に飾り程度についてある屋根の下へ入り、壁に身を密着させた。どこまで効果があるのかはわからないが、壁と一体化して鳥の目を誤魔化すことができればいいと思いながら。

 自分の息の音が、ひどく大きく聞こえ、心臓が、どくどくと過剰なくらいにその存在を主張している。


 空中を舞っていた鳥達は、キィーキィーと不気味な声をあげながら、円を描くように空を旋回し、やがてそのうちの一羽が、広場に飾られてあるオブジェの一つへと急降下した。

 広場に垂直に飛来した鳥は、オブジェの下に隠れていた男を鋭い爪で掴み取り、強い力でそこから引きずり出す。

 無理に引きずり出された男をめがけて、残りの鳥も順々に広場に降り立った。

 四方を鳥に囲まれた男は、くぐもった悲鳴をあげているが、大きな鳥の体の陰になっており状態が見えない。

 やがて、男の声は、まったく聞こえなくなった。

 広場周辺は、先ほどの喧騒が嘘だったかのように静まり返り、鳥の羽音と咀嚼音だけが聞こえてくる。

 アヤカは、冷や汗を流しながらゴクリと唾を飲み込んだ。

 鳥の外見はハゲワシによく似ているが、その頭はハゲワシよりもさらに骨ばっており、目は血のように紅い。さらに、長いくちばしには、尖った小さな歯が並んでいた。

 厩舎にいるグリモとは似ても似つかない恐ろしい姿は、鳥というよりも博物館に展示されている恐竜のようだ。


(このまま、飛び去ってくれればいいけど……)


 犠牲になった男性は気の毒だが、鳥が彼で腹を満たしてくれれば他の人々は助かる。

 アヤカは、周囲の様子を確認した。他のオブジェの陰に隠れている者も、荷馬車の下に隠れている者もまだ動かない。まだ、危機は去っていないのだ。

 ややあって、食事を終えた鳥達は動きを見せた。数羽が飛び立ち、広場には二羽が残る。

 次なる餌を求め、二羽は広場を見渡した。


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