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さん。

閑静な住宅地に建つ真新しいタワーマンション。

15階建ての12階に私の住まいはある。


独り暮らしなのにこんな大きなマンションを買うなんて。

しかもペットと一緒に暮らしてる。

ああ、ついに結婚は諦めたんだな。


私の周りにはとてもいい人たちばかりだけど、その人たちが影ではそう囁いているんじゃないか…

そんなことに気を病んでいたときもあった。


大丈夫、大丈夫。

男なんていなくたって私は幸せなんだから。



―カチャ



ゆっくりと鍵を開けて、ゆっくりとドアを開ける。

腰を低く落としてそぉっと部屋の中を覗き見る私こそ、傍から見たら不審者だ。


誰もいないで。お願い、誰もいないで。


そんな切なる願いも空しく、隙間から溢れる光は、部屋の中に人がいることを物語っていた。



「どうしよう、まだいるかも…」



危険そうな人ではないことは今朝分かったが、やはり見覚えの無い男が自分の部屋にいることが平気な女はいない。



はっ!

もしかすると、甘いマスクで女性を騙して一思いに殺ってしまう凶悪な人なのかもしれない。



いやいやっ!!

もしかすると、記憶がないだけで本当に私がどこかからかお持ち帰りしてきてしまったのかもしれない。



ああああ。

いろんな意味で怖い。


ちらりと向かいのドアを盗み見るが明りが点いておらず、隣人は不在と思われる。

こんな時に使えない奴だ。

私に何かあったらどうしてくれる。



少しの隙間を開いてから、ドアノブを握ったままどうにもこうにも動けなくなってしまった。

どうする。

どうする私。



「このみさん?」



中から彼の声がした。

びくっと肩が震える。



「このみさん?どうしたんですか固まったままで。ほら、中へ。おかえりなさい。疲れたでしょう。ちょうどご飯が出来上がったところなんです。温かいうちにお召し上がりください」



流れるように手を取られ、エスコート付きで部屋の中へ招き入れられる。

今朝と変わらない彼の優しい笑みに、私の丸くなった目はまたも釘付け。

自宅のはずなのに、無意識に「お…お邪魔します」と小さな声でつぶやいた。



「このみちゃん!おかえりー!」


「やっと帰ってきたか。早く飯食おうぜこのみ」



…人間、あまりにびっくりすると声が出ないらしい。

ここはマイスイートホーム。

私の城。

なぜ。

どうして。

ホワイ。



不審者が増えている。



幼さが残る銀髪の可愛らしい少年(推定12,3歳)は、パタパタと私に駆け寄ってきてそのまま腰の辺りに腕を回してきた。

ぎゅーっと力を込めて抱きしめた後、キラキラ眩しい笑顔を全開にして上目遣いに私を見上げる。



「このみちゃん、待ってたよー!」



鼻血、出そうです。



切れ長の目をした黒髪のスマートな青年(推定27,8歳)が、長い足を持て余すようにリビングのソファで寛いでいた。

ふっと笑うと表情が一気に柔らかくなり、男の色気を凝縮した…ピンクというより濃い紫色のオーラがバンバンに出ている。



「そんなところに立ってないで、こっち来いよ」



鼻血、出していいですか。



そして、私を出迎えてくれたダンディーでなアッシュグレーの髪を持つおじ様(推定42,3歳)は、キッチンから美味しそうな香りのする食事を運んできた。

ここはどこのレストランか、と錯覚するような料理の数々に完璧すぎる彼の給仕。

その姿にポ―っと見惚れていると、優しく微笑みながら私の頬に触れてくる。



「どうしましたか?あんまり可愛らしい瞳で見つめないでください」



鼻血、出ました。





「…って…アンタら誰なんだーーーーー!!!!」



鼻を押さえながら叫んだ私の声は、もちろん、思いっきり鼻声だった。


ダンディーなおじ様欲しい。

ダンディーなおじ様ください。

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