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に、じゅう、ご。

All conversation  全て会話になります。








あ、おかえり大地。上がって?


おぅ…


にゃー


だめよ朔、今日は猫のままって約束したでしょ?


…。


大地?どうしたの、ほらこっち座って。はい、ビール。ちゃんとグラスも冷えてるよー。


あ、ありがと…。


…んにゃ。


拓、大丈夫よ。ちゃんと話せるから。


…猫の時も会話出来るの?


え?ああ、出来ないわよ?でも何となくこの子達が言わんとすることは分かるわ。


…へー








…あの、さ。あれから俺も冷静になって考えたんだ。やっぱり俺のしてきたことは自分勝手な束縛だったんだって。変だよな、付き合ってもいないのに束縛って。でもその言葉が1番しっくりくるんだ。


うん


俺、自分でもおかしいって思うくらいお前が好きなんだ。誰よりもお前の近くに居たいって思ってた。それなのに告白して振られるのが怖くてさ。それならずっと1番の友達でいようって思ったのに…。お前が俺以外の男と話をすることも目を合わせる事すら嫌で堪らなかったんだ。…気持ち悪いよな…


…ううん


このみはいつも俺の前では笑っててくれたから、俺がしていたことでお前を傷付けていたなんて微塵も想像できなかった。このみのことすげぇ大事にしてたのに、ずっと俺のせいで泣かせてたって知って…もう…本当さ……何なんだよ俺…


…大地


ごめん…ごめん…このみ…好きになってごめん…


…大地…


正直、猫と言えどこのみが男と一緒に暮らしているって、、嫉妬で狂いそう。でもさ、猫が人になるなんてぶっ飛んだことも、根底にあるのは俺のしてきたことだと思うと何も言えねぇ。それほど俺はこのみを追い詰めてた。でもってこいつらはそれほどこのみを守りたいって思ってた。そうだろ?


にゃー


ふにゃーん


にゃっにゃー


みんな…


こんなファンタジックなこと未だに信じられないっていうのが本音だけど、実際のところ現実だからしょうがねぇ。でも俺だって気持ちは負けてない。こいつらよりこのみを愛している自信がある。…だから、俺との将来を…考えてみて、くれないか?


…え?将来って…


このみ、俺と結婚してほしい。


けっこん…結婚…?


俺はこの先きっとお前以外愛せない。いや、断定できるね。初めて会った時から16年間、このみへの気持ちは衰えるどころかどんどん増していった。お前以外なんてもう無理だよ。このみ以外いらない。


…。


このみ、お前の気持ちを聞かせて?この10日間、お前は何を考えてどんな結論を出した?






私ずっと、自分は人の痛みが分からない最低な人間なんだって思ってたの。知らない間に他人を傷つけて、平気な顔して、だからこんな女を好きになってくれる人なんてどこにもいないって思ってた。気配りができるように頑張って周りを気にして、気を悪くさせないかビクビクしながら言葉選んで、でもそれがストレスになって肌が荒れたりして…もう悪循環が続いてノイローゼになるかと思ったことも、ある。


…ごめん…


大地が裏でそんなことしているなんて全く気づかなかった。大地はいつも優しくて、頼りになって、同い年なのにお兄ちゃんみたいで一緒にいてすごく楽しかったの。だから…ショックだよ。


…うん…


私が、気づいていれば良かった。自分のことに必死であなたが私を見ていてくれていることに気づけなくてごめんなさい。


このみ!そんな…お前が謝ることなんて一つもない!


あの日から今日まで仕事が立て込んでてね、正直言うとゆっくり考えている時間なんてほとんど無かったの。徹夜して駆け回って資料ひっくり返して、目が回るほどバタバタしたらなんだか逆にすっきりしちゃってさー。入稿終わると同時に頭の中のものも全部ザーって流れたみたいになっちゃって。猫と戯れたいって気持ちと…大地とお酒飲みたいって気持ちだけが残ってたの。おっさんみたいよね。ふふふ。


俺のこと、考えてくれたの?


あのね自分でも不思議なんだけど、あの日大地に過去のこと言われてショックはショックだったんだけど…なんだろ、前みたいに切羽詰っていないというか…


ん?どういうこと?


大地は私にたくさん謝ってくれるけど、私の中でそれはもうあんまり…気にしてないというか…


え?気にしてない?


うーん、ごめん説明しずらい。何かね、この子達がいてくれたおかげで一人でも寂しくなくなったの。猫でも人でも私を最高に癒してくれるこの子達の存在がすごく大きい。この子達がいてくれたら男なんていらないって本気で思うわ。以前は被害妄想に捕らわれて固執していたのかもしれない。


…そっか。男なんていらない、か。


私を好きになってくれてありがとう大地。あなたがしてきたことは簡単には許せないけど、それでもあなたの気持ちは嬉しい。


お前はどこまでも優しいやつだな。でも今は…その優しさが辛いよ…。


んにゃあ


もしも私が他の子達と同じように男の子達と話して、遊んで、お付き合いをしたりして学生時代を過ごしたらどういう今を生きていたんだろうって考えたの。そうしたらこの子達は一生普通の猫だったのかなとか。そもそもこの子達を飼っていたのかなとか。大地とこんなに長い付き合いになっていたのかなって。


俺も…考えたよ。でもお前が俺以外の奴と結婚するとか考えただけでも震えるほど怒りが涌いてくる。それがこのみにとって幸せのはずなのに、俺はそれを祝福するなんてできない。


私はね、どんな学生時代を過ごしたとしてもこの子達を飼って大地の隣に住んでいると思ったよ。


…え?


今までのことね、きっと大地じゃなかったら縁を切ってる。大地じゃなかったら泣き喚きながら罵倒するわ。私の青春を返せって。あの子達のおかげで寂しさは無くなったけど、過去の傷が癒えるわけじゃない。大袈裟かもしれないけどトラウマっぽくなってたのよ。それなのにどうしても大地を私の中から追い出すことが出来ないの。



男なんていらないわ。この子達がいてくれたら大丈夫だもの。でもね、一人では生きていけない。


…うん。


ねぇ大地。私のわがまま…聞いてくれる?


き…聞く!このみのわがままなら何だって聞くよ!どんなことだってやる!


ふふふ。大地、今まで通り私の隣にいて。男なんていらないって強がっている私のそばにいて。私しか愛せないと言うのなら、私を愛したままの変わらないあなたでいて?


そ…それって、いつかは俺に光が射すっていう希望を持ってても、いいのかな


さあ、それは…どうでしょうね。過去の大地が私から他を排除したように、私が大地の未来から他を排除してあげる。過去を罪と思っているのならこれ以上の償い方は無いよね。


あ…ああ、ああ…そうだな。俺はこのみに縛られたままお前を愛し続けるしかないんだな。


私が10日間で出したこの最低な提案、受けるも蹴るも大地に任せるよ。どうする?


もちろん、受けるさ。お前だけの俺になる。そしていつか、俺に振り向かせてみせる!ああどうしよう。俺のことを受け入れてくれたわけじゃないのに嬉しくて手が震えてる。お前を抱きしめたくて仕方がねぇ!!


近寄るな下衆野郎。


うわっ!!


あ!朔ー!人にはならない約束でしょ?


ケリは付いただろう?もう限界。このみは俺だけを見ていればいいって言ったのに…下衆が。


下衆下衆言うんじゃねえー!!


おやおや、お開きの時間ですか?このみさんお疲れ様でした。よく頑張りましたね。今温かい紅茶を淹れますね。


あー拓までー…


っいて!!おいおっさん!今思いっきり足踏んだだろう!!


みゃあーん


白いの!!猫だからってこのみの膝にばっかり乗るな!


うるさい人ですねぇ。


話が終わったんだから帰れよ。


んにゃ。


この…化け猫ども…


ま、まぁまぁ大地。朔も拓も、ほら陸もー。色々あったけど私は今が幸せよ。大地と和解?できて、君たちの体に何の異常も見られなくて変わらず人になれるし、とってもハッピーだわ。大地と君たちの掛け合いも楽しいわ!ふふ。何だか嬉しくなってきちゃう。


このみさん…私たちもこのみさんが楽しそうにしているところを見ると幸せになりますよ。やっぱりあなたには笑顔が1番お似合いです。


俺たちはこのみのそばから離れねぇよ。お前は俺たちの主人だからな、幸せにしてやるよ。


にゃ…みー…にゃぁーん!!


このみ…絶対こいつらよりいい男になってみせるから、いつか…いつか俺のものになってくれよな。それまでは三匹の同居人と一緒にお前を幸せにするよ。






ねぇ、みんな。


ふふ。


みんな、大好きよ!




和解です。

このみに若干ヤンデレ要素が加わってしまいました。

大地はM属性という新事実。

このみしか愛していないのに、この先ずっとこのみしか愛せないという心の軟禁に内心恍惚としています。残念すぎるハイスペック男ですね。

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