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9お茶会

神子みこと判明してから4日。先日ファルド様にお願いした、謁見前の最終日。どうなったかと言うと…。


「どうしてこうなった…?」

「心の声が漏れてますよ、紗良様」


心労から少しフラついた所をマリーに支えられる。その時、本音が出てしまったようだ。いかんいかん。

そもそも勉強もレッスンも無しで1日お休みを頂く話だったのだか…。それはいいのだ。そこ迄は良かったと言う方が正しいか。


「どうした?」

「いえ、何でもありません。少し目眩がしただけです」

「そうか、休むか?」

「大丈夫です」


何故、何故王子がいるんだー!!聞いて無いんですけど!?休みなのにぃぃぃぃ…。神様のバカヤロー!


「あの、リハルト様はお忙しいのでしょう?」

「そうだな」

「なら、こんな場所に居て宜しいのですか?」

「構わん。たまには息抜きも必要だからな」

「そ、そうですか」


何故こうして一緒にいるかと言うと、部屋から出たら王子が居たのだ。用件を訪ねたところ、休みやるから付き合えって事だった。それ、休みじゃない。

だから今こうして庭園を散策しているのだ。勿論、マリーもファルド様もいる。少し離れた場所だけど。


「リハルト様も花を見たりされるのですね」

「あぁ。特に薔薇の花はローズレイアの特産品でもあるからな」

「だからあたり一面、薔薇ですのね」

「そうだ。花は好きか?」

「はい。綺麗な物は好きです」


庭園の中に温室があり、其処でお茶が出来るらしい。温室の中にも様々な薔薇が、所狭しと咲いていた。品種改良なども手掛けているみたい。


「いい香りですね!」

「部屋にずっと居るより良いだろ」

「えぇ。あ、部屋に薔薇を飾れば良いのでは?」

「そうだな。今度そうしてみよう」


マリーが用意してくれたお茶とお菓子を頂きながら薔薇を楽しんだ。それにしても、いいのかな?一国の王子が私何かと一緒にいて。この現場を目撃した婚約者に恨まれ、殺されるとか嫌よ?大丈夫?


「今日は意地悪しないんですね」

「なんだ、して欲しいのか?」

「お断りです!」

「あの時は紗良が隠すからいけないのだろう」


隠すと言うと語弊があるんだけどな。当たり障りなく生きていく為に仕方なくだもの。誰が好き好んで、厄介そうなことに首を突っ込むのか。


「自分でも分からないことでしたから」

「へぇ」

「その笑み…初めてお会いした時は優しそうな笑顔をされてたのに」

「表向きの顔だな」

「ですよねー。でも、嘘の笑顔ではなかったと思うんですけどね」


作り笑いじゃなくて、あれも王子の笑い方の一つな気がするのよね。こんなに意地悪なんだけどさ。何て言ったらいいのか、上手く言えないけど。


「紗良は人を疑う事を覚えた方がいいな」


心なしか優しげに微笑んでる気がして、思わずドキっとしてしまった。うぅ不覚。顔はとても良いのよね、忘れてたけど。


「あら、人を見る目は確かですよ」

「どうだか」

「そう言えば、リハルト様は他に御兄弟はいらっしゃるのですか?」

「ん?あぁ、妹がいるな」

「えっそうなんですか!?」


嬉しさで思わずテンションが上がってしまった。しまった、少し引いてるな…。でも仕方ないよ、だってリハルト様、顔はとても良いのよ。顔はね。

この美しい顔を持ったその子はきっと凄く可愛いわ!あぁ、いつか会えるかな?


「いつかお会いしたいです」

「近い内に会えるだろう」

「きっとお人形さんの様に愛らしいのでしょうね」


嬉々として言えば何かを考える素振りをした後、王子はニヤリと笑った。あ、またこの笑い方だ。


「それは俺の顔を見て、か?」

「リハルト様、其れは考え過ぎでございます」

「お前ぐらいだぞ。女で俺にそういう言い方をしてくるのは」

「…さぞオモテになるんでしょうね…」


嫌な物を見るような目を思わず向けてしまった。王子は下を向いて肩を揺らしている。気分を害したのかな?と恐る恐る覗きこむと笑ってた。いや、笑いを堪えてた。


「リハルト様?」

「くくっ、お前は、本当に、期待を裏切らないな」

「…それは、どういう意味でしょうか?」

「そのままの意味だ」

「……気をつけます。少し調子に乗ってしまったみたいです」

「いや、そのままでいてくれ」

「え?」


俯いた顔を上げると、またあの表情をしていた。あの優しげな微笑みを浮かべて此方を見つめている。頬がほんのりと紅潮するのを感じた。王子様スマイルは反則ですよ。


「お前の前だと、王子では無く、リハルトとして居れるからな」

「…えっ……」

「リハルト様、そろそろお時間です」

「あぁ。じゃあ、失礼するよ。明日は王への謁見だ。失礼の無いようにな」

「あ、はい…。あのっ」

「なんだ?」

「無理、なさらないで下さいね」


そう言えば目を少し見開いた後、手を振って去って行った。王子ではなくリハルト様として居られるって…。私は少しでも王子の役に立てているのだろうか。

優しいだけじゃ生きて行けない世界なのかな?だってリハルト様は本当はとても優しい人だもの。じゃなきゃ、あんな風に笑えないわ。


「ずるい。きっとこれも作戦なんだわ」


色づいた頬を誤魔化す様にそう呟く。私を油断させる為の言葉なんだ。最大限利用したいが為の。そうだ、絶対そうなんだ。誤魔化されるな私!思わず気遣う言葉をかけてしまったじゃない!


「紗良様、顔が赤いですよ」

「き、気のせいよマリー」


パタパタと顔を仰ぎながら、誤魔かして部屋に戻るのを促す。顔が赤いのはきっと薔薇のせいね。そうだよ、うん。


「ねぇ、この薔薇を少し貰えないかな?」

「そうですねぇ、庭師に聞いてみます」


マリーにここにいるから聞いてきてと促し、しゃがんで薔薇の花を間近に見る。一つ一つ瑞々しくて芳醇な香りを漂わせていた。鼻を近づけて香りを思いっきり吸い込んだ。


「いい香り…」


愛情をかけて育てられている薔薇の美しさに微笑みながらマリーの戻りを待つ。10分ほどしてマリーが薔薇の花束を持ち、戻ってきたのに目を輝かせたのだった。


「紗良様!快く頂けましたよ」

「わぁ、ありがとうマリー!」

「いえ、この花をどうされるのですか?」

「飾るのよ?」

「そうですか」


何故そんなことを聞くのだろう、と思ったらマリーが説明してくれた。こちらではパーティの会場などの場や誰かをお招きする時などの場合に、花を飾りつけることが多いのだそう。部屋に飾り、自分で楽しむのはあまりしないそうだ。


「せっかく綺麗なんだから、ゆっくり鑑賞するのもいいものよ」

「そうですねぇ、お部屋にあれば華やかになりますね」


後で、王子に持って行ってあげよう。多忙な彼が少しでも癒される様に。あ、そうだ。神子の力って花にも有効なのかな?きっと花も少しでも長く綺麗でいたいと思ってるよね。日持ちします様にと願いを込めて薔薇に口づけをした。


「おぉう」


キラキラキラと細かい粒子が薔薇の花束を包み込んだ。エフェクト出るのかよー!思わずおっさんみたいな声出たじゃないか!

もしかして、私の気持ちに反応してるのかな?後、もう一つ分かったこと。この粒子は私の額から出ていた。正確には額の印からだ。まぁ、とりあえず、一歩前進かな?




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