8ファルド様にお願い
マリーにお願いして今日はファルド様に来てもらいました。
「私に御用ですか?」
「すみません。来て頂いて」
「かまいませんが、どうしたのですか?」
「あ、その前に。マリー外に出てて?」
「何故ですか紗良様」
「ファルド様にしかお話出来ないことなの。お願いマリー。部屋の外でいいから!」
「…はぁ、分かりました。早くして下さいね」
「ありがとマリー!」
マリーを追い出すことに成功して、ファルド様と二人きりになることに成功した。ファルド様はこのやり取りを不思議そうに見ていた。
「随分、打ち解けたのですね」
「マリーが神子は侍女に敬語使うなと言われまして。そしたら距離が近くなったのですよ」
「そうですか。それでご用件は?」
「あ、はい。あのですね、王様にお会いする前日に一日お休みを頂きたいのです。休みって言っても街に出るとかではないです」
「はぁ。それなら侍女に言えばいいのでは?」
分かるよ、言いたいこと。たかがそんな用件で呼ぶなってことでしょ?でも聞いて!私のお願いはほぼ聞いてくれないのよ!!
「マリーは、熱心すぎるので私からじゃ聞いてもらえないのです。なので別の方に言って欲しくて…」
「なら私ではなくリハルト様に直接お願いされては?」
「駄目です。何を言われるか分かったもんじゃないので!」
「…そうですか」
ぐっと拳を握りしめて力強く言えば、少し引いてるものの、納得してくれた。王子の文句を言いたいところだけど、従者だし怒られそうだから止めた。
「後、湯あみに侍女は必要ないと説得して頂けませんか?」
「ご不満でも?」
「自分で出来るので必要ないです」
「分かりました。リハルト様に伝えておきます」
直接言うより、人を挟んだ方が揉めなくていいのよね。王子に馬鹿にされることもないし、でも用件は伝えられるしで良いことづくめね。
「そういえば、ファルド様の優れた能力って何なのですか?」
「紗良様程の力はありませんよ。能力と言うか特技に近いですが」
「私なんか優れた特技すらないですよ。降って湧いたこの力は私の力ではありませんし」
「今はそれが紗良様の立派な力ですよ。私は武が人より優れていると言うだけです。ですが努力無しに得られるような物ではありません」
「そうですよね…印のおかげとか言われたく無いですよね。何をやるにしても皆努力してますしね」
「そうですね。神子の力とは別の物とお考え下さい」
そっか。別物なら参考にできないよね。でも、いまの話を聞いて、私も頑張らなくちゃって思った。この力を使うなら知らなくちゃいけないんだ。何が出来て何が駄目なのか。強い力は時に脅威になるのだから。
「っありがとうございますファルド様!」
「はい?私は何も…」
「いえ、やるべきことが分かりました!自分を知るって凄く大事ですよね」
「えぇ、まぁ」
「困った時はお願いしますね!」
「はぁ」
何が何やらといった様子のファルド様を気にせずに、お礼を告げた。ファルド様って凄く落ち着いてるし、何でも難なくこなしそうだよね。何だか同じ年齢とは思えないわ。王子といると気づかなかったけど、ファルド様も整った顔立ちで、黒髪が知性を際立たせてくれている。同じ黒髪でも全く違うのね。やっぱりそれを持つ人の力よね。
「それで?結局何をお話されたのですか?」
「内緒」
「…おおよその予想はつきますけどね」
マリーは苦笑しながら紅茶を出してくれた。ファルド様はマリーと入れ替えに帰って行った。本当は此方から出向こうと思ったんだけど、王子の側に居ることが多いと聞いて辞めた。部屋の外に出られるようになったが、王様に会うまではあまり人目につくなと言われてるのだ。
「マリーは兄弟はいるの?」
「はい。妹が二人います」
「三姉妹なんだ」
「えぇ。初めて紗良様とお会いした時に、末の妹と同じぐらいかと思いましたわ」
「嫌な予感するけど、幾つ?」
「15です」
「やっぱり…そんなに下に見えるの?何故かしら」
実年齢と10歳も違うのよ?自分で鏡見ても見た目が変わった様には見えないし、ホントどうなってんだか。
「顔が幼いからでは?」
「言われたことないよ?」
「そう言われましても」
まぁそうよね。その後マリーに用事は済んだからと、勉強会が始まった。マナーも必要だが文字を読める様にするのも大事だしね。神子は馬鹿ではいけません、とこないだマリーに言われたのを思い出した。あれ?涙が…。
「真ん中の妹さんは幾つなの?」
「23ですね。紗良様に一番歳が近いですね」
「やっぱり皆マリーみたいに働き者なの?」
「そうですね。ただ、末の妹だけのんびりしてるので、少々心配なんですよね」
「心配?どうして?」
「物にぶつかったりとか、知らない人に付いて行ってしまったりとか…なんか抜けてるのよ、あの子」
「のんびりと言うか注意力散漫な妹さんね」
「ふふっ手が掛かる子だけど、其処がまた可愛いんですよ」
マリーが思い出した様に笑ってる。お姉さんの顔だね。仲が良くてなりよりだ。そう言えばこの国の王子や王女って他に居るのかな?大体は何人か居るわよね。今度聞いてみようと心に決めて、ベッドに潜り込んだ。