6セクハラならぬパワハラ
「確かに嘘はついてないがな」
「真実ですから」
「へぇ」
「王子の仮面はどちらに置いてきたのですか?」
「そこらへんに」
いつもの王子様スマイルではなく、何か企んでいそうな顔で私を見ていた。ニヤニヤしてるという表現がしっくりくるかも知れない。最初に見た素敵な王子様を返して!
「このような模様は無いと言ったな」
「はい」
「ならどのような模様ならあるんだ?」
あー……詰んだ。嘘はつかない様に上手く答えたと思ったんだけどな。いや、カマをかけられてるのかも知れないから、ここは逃げ切る作戦で。
「…言葉の通りで他に他意はありません」
「なら何故、この模様が他にもあるのか聞いたんだ?」
「ふと思っただけです。リハルト様はそう思われたことはありませんか?」
「無いな。この長い歴史の中でこれ以外の印は見たことがない」
「そう、ですか。なら知らない故の発想ですね」
よしっ流れはこちらにある!このまま逃げ切れそうだ。厄介ごとには首を突っ込まない。これ鉄則ね。ただ面倒なことしたくないだけなんだけれど。
「なぁファルド。どこにあると思う?」
「そうですね…目には見えない場所となると、手足や顔以外になりますね」
「な、なに言ってるんですか」
「胸、腹、背中、足裏…」
箇所を見ながらありそうな場所を上げていく。そんなこと言われても答えませんからね。
「首裏、尻、あぁ、額も見えないな」
「あ、あの、こんな場所で時間を潰してても良いのですか?」
「立派な仕事ですよ。紗良様の正体を知ることも」
サラッと言われてしまった。それ言われたらもう何も言えません…。うぅ…王子執念深いよ!もう忘れようよこの話。ジロッと王子を睨むも気にならないようだ。
「嘆いても意味ないぞ」
「嘆いてません」
「そうか。ファルド、マリーを呼べ。調べさせろ」
「はっ」
「え、ちょっと、なに言って…」
「お前も早くこの時間が終わって欲しいだろ?ここはハッキリさせるべきだと思わないか?」
「思いません!」
私の抵抗も空しく、マリーさんが来て隣のシャワールームにある脱衣所で隈なくチェックされた。うぅ…バレたどころか新しい物まで見つかった…。
「やはりな。それにしても本当に別の印とは…」
「うぅ…もう離れてください…」
王子が私の前髪を上げ、印をまじまじと見つめる。おでこ丸出しは私にとって羞恥プレイだ。だって似合わないんだもん!
「申し訳ございません。まさかこのような場所にあるとは」
「かまわん。上手く隠れていたようだ。額でも上の方だしな」
「それで、もう一つはどちらに?」
「はい、その、背中なのですが…」
「そうか。紗良、悪いが服を脱げ」
「絶対、嫌です!!」
なんで性格の悪さがバレたとはいえ、イケメンの前で脱がなきゃいけないんだ!訴えれるレベルだぞ!セクハラ、嫌、パワハラだ!この国の王子に逆らえる筈がないんだから!
「マリー」
「はい。紗良様、お着替えを用意しましたので」
「っいやー!引きずらないでー!」
「元気な女だな」
私よりも断然強い力に抗える筈もなく、渋々着替える羽目になった。上と下が別々の衣装だ。背中の印がこれなら良く見える。っていうか、この衣装誰が着るんだよ…。踊り子?踊り子でもいるの!?
「何かの紋章か?紗良、これはなんだ?」
「わかりません!」
「強情な奴だな」
「リハルト様、紗良様は嘘はついていないと思います。何故なら、この印に一番驚いてましたから」
「…気づかなかったのか?」
「…背中はわざわざ見ませんから」
背中を見せている為、後ろを向いたまま返す。王子は今、多分呆れた顔をしているだろう。顔が見えなくて良かった。私の顔もきっと凄い顔をしているだろうから。
「ファルド調べておけ」
「は」
「この本には載ってないの?」
「ならその本の内容は紗良に任せる」
「えっ」
「任せたからな。マリー、紗良のサポートを」
「かしこまりました」
そう言い残して二人は部屋を出ていった。マリーさんの顔見るとリハルト王子のあの態度を見慣れている様だった。くそぅ猫被ってたってことか。
「マリーさん、あんな意地悪な王子だなんて聞いていません」
「言ってませんから。それより印があるなんて聞いてません」
「何なのか私にも分からなかったので」
「そのようですね。さて本の内容を確認していきましょう」
トンと目の前に本を出された。えっ?マリーさんが読み上げてくれるんじゃないの?そんな意味を込めて見つめるも首を横に振られた。
「これも勉強の一環です。さっ読んで下さい」
「そんな…」
泣く泣く本を開いて一文字づつ読んでいく。全然頭に入ってこないんだってばー!時間をかけて読み進めていくが1ページ読んだだけで疲れてしまった。
「今日は疲れたのでまた明日にします」
「仕方ありませんね。今日はここまでにしましょうか。食事の準備をして参ります。寝ないで下さいね」
「頑張ります」
よく準備中に寝てしまう為に釘をさされてしまった。だって頭使うと凄く疲れるんだもん。仕方ないよね。