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53ラッケルタ

丘の木の下で小さな女の子が一人で泣いていた。近付いて声を掛けるとその子は体をビクつかせ、恐る恐る顔を上げた。黒髪に黒瞳。幼いがとても愛らしい顔をしていたその子供は、何処か見覚えのある顔だった。


「紗良…か?」

「お、おにいちゃん、誰?」

「俺か?リハルトだ」

「りはると?がいじんさんなの?」


「がいじん」とは何の事だろうか。分からないが適当に頷けば興味深そうに俺を見つめた。大きな瞳に涙が溜まってはいるが、もう泣き止んだらしい。


「紗良、がいじんさんはじめて見た!」

「やはり紗良か」

「おにいちゃんは、どうして紗良のこと知ってるの?」

「大人になったお前と会っているからだ」

「紗良はどんなおとなになってるの?」

「人を助ける力を持った、素晴らしい女性になっている。いずれお前がそうなるのだ」


それを聞いた子供の紗良は照れたように笑った。さっき泣いていたと思えば今は笑っている。表情がコロコロ変わるのは昔から変わらないのだな。子供が出来たらこんな感じなのだろうか。堪らないな。


「おにいちゃんの髪きれいだね!きらきらしてる!おめめもきれい!!」

「そうか?紗良のが綺麗だぞ」

「ほんと!?えへへ、うれしい。おにいちゃん、おうじさまみたい!」

「王子様だからな」

「えっ!そうなの?すごーい!!」


顔を輝かせながら俺を見る子供の紗良。こんな顔を今までに紗良から向けられた事ないな。子供だから素直なのだろうか。


「紗良おうじさまとしょうらいけっこんするの!」

「ほう。それはいい夢だな」

「うん!おにいちゃんみたいなおうじさまだったらいいな」

「どうしてそう思うのだ?」

「かっこいいから!」


やはり顔なのか?これは顔良くて良かったと喜ぶ所だろうか?いや、子供は純粋だからな。俺の様な王子と結婚したいと言われた事を喜ばねば。


「あとね、もういっこあるのよ!」

「何だ?」

「あのね、私の事を好きだと言ってくれるから」

「は?…大きくなった?」


子供の姿から気付けば現在の紗良の姿に変わっており、俺に寄り添う様に座っている。気付けば丘から自室へと場所が変わっていた。


「いつの間にこの部屋に…?」

「リハルト様寝ぼけてるの?ずっとここにいたじゃない」

「…あぁ、そうだったな」

「ねぇリハルト様」

「何だ?」


そうだ、俺はずっとこの部屋に居たな。少し疲れているのかも知れない。紗良が嬉しそうに俺の腕に抱きついているのも、気のせいだろう。


「ふふ、あのね、子供が出来たの!」

「そうか、良かったな。……は!?誰の子だ!!!」

「きゃ!痛いわリハルト様!!」

「あ、すまない…」

「もう、リハルト様の子に決まってるじゃない」


拗ねた様に紗良がそう言う。は?俺の子だと?そもそもそういう関係になった記憶が無いのだが、どういう事だ?そうだ、ファルドがいたはずだ。そう思って机の方に目を向けるとやはりいた。


「何を驚いているのですか?お二人は結婚されているのだから、子が出来るのも当然でしょう」

「結婚!?結婚しているのか?」

「ねぇファルド、リハルト様疲れてるんじゃ…」

「そうかも知れませんね。今日はお休みになられたら如何ですか?では紗良様、失礼しますね」

「うん」


結婚!?俺と紗良が結婚!?いつの間に?え、気付かない間に俺は紗良にあんな事やそんな事を…!ならキスをしてもいいってことだよな。不思議そうに俺を見ている紗良にそっと手を頬に持っていけば、幸せそうに擦り寄った。あぁ、本当に結婚しているのだな。


「紗良、愛してる」

「私も愛してる」

「っ、キスしてもいいか?」

「ふふ、いつもしてるじゃない」


そっと顔を近づけて唇を重ねた。そうだ、確か一年ほど前に結婚式を挙げたのだったな。いかんなこんな大事な事を忘れているとは。やはり今日は疲れているのかも知れないな。


「……ま」

「ん…」

「……さま」

「何だ、騒がしいな」

「もう、リハルト様ったら!着いたよ?起きて!」


今日はローズレイアの南側にあるラッケルタの地に来ているのだけど、疲れていたのか珍しくリハルト様が馬車の中で熟睡していた。寝かせてあげたい所だけど、着いてしまったので起こしていたのだった。


「…紗良か」

「そうだよ。起きて?」

「あぁ、紗良」

「何?へ?」


ボーとした顔で私を見ていたので、寝ぼけてるんだなって思っていると強く抱き締められた。リハルト様も寝ぼける事あるんだな…ってそろそろ離して頂きたいんですけどね。


「おはよう紗良」

チュ

「ちょっ!?」

「なんだ何時もしているだろう」

「っ!いい加減に起きろーーー!!」


何時もってなんだ何時もって!してないけどね!?一体どんな夢を見てたんだか…。大きい声を出せば、漸く目が覚めたのか、何だか物凄く残念そうな顔をしていた。


「そうか、夢か」

「…どんな夢かは聞かないけど、疲れてるんじゃないの?」

「そうか聞きたいか。紗良とな…」

「いいです!何だか嫌な予感するもん」

「何してるのですか。早く降りて下さい」


耳を塞いで話を聞かない様にしていると、ファルド様が馬車の扉を開けた。そうだ、一瞬忘れてたけど仕事で来ているのだったわ。馬車から降りて暫く身を置かせてもらうラッケルタ侯爵のお屋敷に案内された。どこかで聞いたことある様な気がするんだけど、なんだったかな。


「リハルト王子、神子様、ようこそおいで下さいました!私はリットベル・メルロ・ムスタファと申します。こちらは妻のメリッサです」

「初めまして神子様。リハルト王子、今回は態々この様な地に足を運んで頂き恐縮ですわ」

「いえ、民の生活を守るのが王族の務めですから」


ラッケルタ侯爵も夫人も二人とも整った顔をしていてお似合いの夫婦だった。これは子供もさぞかし綺麗&格好良いのだろうな。部屋を案内されて暫しの休憩を取り、着替えて食事の場に向かった。何回も繰り返される食事会に大分慣れてきたわ。コルセットだけは未だに慣れないのだけど。


「娘達も一緒ですみませんね。どうしてもお二人にお会いしたいと言うものですから」

「いえ、構いませんよ。紗良もいいかい?」

「えぇ。大勢の方が楽しいですわ」

「有難う御座います神子様、リハルト王子」


席に着いていたのは三人の女性達だった。全員とても美しかった。いいな、皆金の髪で羨ましい。あの二人から生まれたのだから、最強のサラブレッド達よね。更に二人いるそうでそちらも女性で嫁いでいったそうだ。挨拶がされるなか、聞き覚えのある名前が聞こえた。


「五女のジョセフィーヌですわ。神子様とは以前遠目からですけどお会いしましたのですけれど、覚えていらっしゃいますか?」

「えぇ。私、あまりの美しさに見惚れてしまいましたもの」

「まぁとんでも御座いませんわ!神子様には到底及びませんわ」


ご謙遜を。そんなに綺麗なのに、謙遜しちゃうと下手したら嫌味に聞こえちゃうわよね。三女のレティシアさんと四女のディアナさんも本当に綺麗だった。世の中の男性全て彼女たちに惚れてしまうんじゃないんだろうか。


「神子様、質問しても宜しいかしら?」

「えぇ、答えられる範囲であれば」

「その様に美しくいられる秘訣を教えて頂けませんか?」

「へ?秘訣ですか?」

「私も知りたいですわ!」

「私にも教えて下さい」


そんな風に言われても私特に何もやってないんだけどな…。皆の方が私の何千倍も綺麗なのに聞いてどうするのだろうか?それともリハルト様の元にいる私に対する当て付けなのかな?え、どう返すのが正解なの?


「すみません、特になにもしてませんの。逆に皆さんは何されてるのですか?」

「何もされてないのに、その美しさですの?素晴らしいですわね」

「私達はジョセフィーヌの作る化粧品を使用していますのよ」

「まぁ、ジョセフィーヌさんは凄いのですね」

「女性に生まれたからには、いつまでも美しくありたいのですわ」


美意識高い女性というやつね。私も少しは見習わなくちゃいけないわ。その後ずっと美容の話を聞かされる羽目になった。多少は興味あるけどこの三人程ではない。正直少し苦痛だったけれど、これも仕事のうちと割り切った。


「そうですわ!今日は満月で庭の池に映ってとても綺麗ですのよ。神子様、リハルト様見にいかれませんか?」

「見たいですわ!リハルト様、行きませんか?」

「紗良が望むのでしたら行きましょうか。失礼しても?ラッケルタ侯爵」

「あぁ、どうぞどうぞ。本当に勝景ですのでゆっくりご覧下さいな」


席を立ち上がるとリハルト様が手を差し出して来たので、その手を掴もうとするもレティシアさんとディアナさんがリハルト様の両腕に腕を絡めた。しかも豊満な胸を押し付けている。…少し分けてくれないかな、その胸。


「さぁ行きましょう。あちらですのよ」

「きっとリハルト様も気にいりましてよ」

「あ、あぁ…」

「行きましょう、神子様」

「あ、はい」


どうやら上の二人はリハルト様狙いらしい。リハルト様はそのまま連れてかれた。まぁそうだよね、王子様だものね。ジョセフィーヌ様はいいのかなって見れば、私の視線に気付いて優しく微笑んでくれた。私が男性ならイチコロです。


「すみません、お姉さま達が」

「いえ、宜しいのですか?ジョセフィーヌさんもリハルト様とお話されたいのでは?」

「ふふ、そうですわね。でも私は神子様とお話したいのですわ」

「私とですか?何も面白い事ないですよ?」

「そんな事ありませんわ!薔薇ジャムの発想、素敵でしたもの」


私の両手を持ってそう言われてしまった。私の知らない間にリハルト様が薔薇ジャムを渡していたらしい。ジャムの素晴らしさを説明してくれるジョセフィーヌさんに、私もつられて笑顔になった。


ボソ

「これではリハルト様が落ちてしまうのも、頷けますわね」

「はい?」

「いえ、何でもありませんわ。行きましょうか私達も」

「そうですね」


ジョセフィーヌさんと一緒に庭園に向かうと、そこは日本式の庭園のような造りになっていた。何でも庭師の故郷の風景らしくてジョセフィーヌさんも気に入っているのだとか。その故郷にとても行ってみたいわ。


「凄いわ、とっても素敵!」

「ふふ、あの場所でゆっくり見れますのよ」


指を差された場所には、庭園の真ん中に屋根付きの座れる場所があった。流石に外に座敷は無理か。その場所に近付けば、既にリハルト様達がいて池に映る月を眺めていた。


「神子様、ジョセフィーヌ、遅かったですわね」

「すみませんお姉様。神子様と少しお話していましたのよ」

「どうぞ神子様。お座りになって」

「有難う御座います」


リハルト様の両隣には相変わらず二人が居たので、その反対側にジョセフィーヌさんと一緒に座った。


「とても綺麗だわ。ね、リハルトさ、ま…?」

「あぁ。池に映る月を眺めるのは情緒がありますね」

「ですわよね。リハルト様と見られて嬉しいですわ」

「私もですの。幸せですわ」


思わず何時もの癖でリハルト様に話しかけてしまったものの、レティシアさんとディアナさんがウットリとした表情でリハルト様の腕に抱き付いているのを見てしまい、何だか気分が萎えてしまった。


「神子様。もう一つ素敵な場所がありますの。其方に行ってみませんか?」

「行きたいですわ!リハルト様、どうぞごゆっくり」

「は?おい!」

「行ってらっしゃいませ神子様」


リハルト様達を置いてジョセフィーヌさんに着いていった。移動しながら上を見上げた。池の月を見なくても、上を見れば綺麗な満月が見える。


「やっぱり直接見た方が綺麗だわ」

「すみません神子様。お姉様達がリハルト様を占めてしまって…」

「いえ、リハルト様も楽しそうでしたし。私にはジョセフィーヌさんが居てくれたら充分ですわ」

「神子様にはそう見えまして?」

「はい。綺麗な女性二人に囲まれて嫌な男性はいませんもの。皆さん本当に綺麗で羨ましいですわ」


ジョセフィーヌさんが私に謝る必要ないんだけどな。ただ綺麗な景色を眺めているのに、邪魔だなとは思ったけど。勿論リハルト様ごとね。


「私は神子様が羨ましいですわ」

「え?」

「リハルト様に愛されているのですから」

「え、あの…?」

「お気付きになりませんか?リハルト様が嫌がっているのを」

「いえ…」


ジョセフィーヌさんが足を止めて私の方に振り返った。突然何を言い出すのだろうか…。リハルト様が嫌がってる?王子様バージョンの時は常に笑顔だから分からなかったわ。


「そして神子様がどんな表情をされているのか、知ってますの?」

「え、普通の顔していたつもりですけれど…」

「いいえ、物凄く寂しそうな顔をされてましたわ」

「うそ、そんな顔してませんわ。きっとジョセフィーヌさんの気の所為ですよ」


思わず右手で頬を押さえる。知らずにそんな顔してたの?何の為に?寂しい顔?絶対ないわ!…だけどジョセフィーヌさんが嘘を付く様には見えないし。


「ふふ、神子様って本当に可愛らしいですわね」

「へ?」

「リハルト様の事をお好きなのですね。でもそれをご自分で気付いていらっしゃらないのですね」

「私がリハルト様を…好き?」

「えぇ。お姉様達とリハルト様がいるの嫌なのですよね?顔にそう書いてありますわ」


もう片方の手でも頬を押さえた。私がリハルト様を好き?初めてお話したジョセフィーヌさんに、そう見える程の態度を私はとっていたの!?嘘よ、そんな事ないもん!好きだなんて…そんな。


「駄目ですわよ神子様。他の人に隙を見せてはいけませんのよ。付けいられてしまいますわ」

「え、隙?付け…?」

「えぇ。ですが私には見せて下さいませ」

「えっと…?」

「私、神子様とお友達になりたいのですわ」


ジョセフィーヌさんと友達?それは嬉しいけど、何か裏があるのかな?…ううん、話していて分かったけどそんな人じゃないわ。でも急すぎて…。


「私綺麗な物や人が好きですの。神子様の容姿も綺麗ですけど、心がとても美しいのですわ。純粋に私達や庭を綺麗だと褒めて下さる神子様とお友達になりたいと思いました」

「だって本当に綺麗なのですもの。誰しもそういう心を持っているわ」

「いいえ神子様。私達貴族の中ではその様な綺麗な心を持っている方は、あまりいませんのよ」


そんなにドロドロした世界なのだろうか?言葉の裏には他の意味があるのが普通なのだとか。人間だから多少はあるけれど、息の詰まりそうな世界で嫌だな。


「ジョセフィーヌさんの様なお友達が出来たら、自慢しちゃいますわ」

「ふふ、私は神子様とお友達になっても周りには秘密にしますわ。神子様の素敵な所を知られたら、皆さんもっと神子様の事好きになってしまいますもの」

「まぁ、ふふ」


ジョセフィーヌさんと顔を見合わせて笑った。思ったよりも気さくな人で良かった。綺麗で飾らない人って最強だよね。友達ならと名前で呼んで貰う事にした。話し方も砕けた話し方に変えた。そうするとジョセフィーヌは更に嬉しそうに笑ってくれた。


「それにしても、紗良が自覚するにはどうしたものかしら。答えは出てると思うのですけどね」

「私に言われても…。別に何とも思ってないし」

「絶対にそんな事ありませんわ!」

「は、はい。すみません」


考え込んでいるジョセフィーヌを放置して、池の中を覗くと鯉の様な魚が何匹か優雅に泳いでいた。やっぱりこの庭師凄いわ、分かってるわね! もしかしたらこの庭師の人も私と同じ異世界から来た人だったりして。


ズル

「うん?」

バシャーン!!

「え?紗良!!?」


踵を返そうとしたら足を滑らせて池の中に落ちてしまった。突然の事で肺の中の空気も出てしまい、息が苦しい。浮き上がろうにも、ドレスが水を含んで重くて上がれない。え、私こんな場所で死ぬの!?っていうかこの池広いし深いし、泉のようだわ!そういえば水の中なら蒼玉ソウギョクを出せば!と思っていると、リハルト様の姿が見えたので止めた。月とリハルト様と魚のシルエットが重なって神秘的だった。


バシャン

「プハッ、紗良!大丈夫か!?」

「ゲホッ、ゲホッ!はぁ、何とか…」

「紗良!リハルト様!!無事で良かったですわ」

「リハルト様!!大丈夫ですの!?」

「人を呼んで来ますわ!行くわよディアナ」


リハルト様に抱えられた状態で池から這い上がり咳込んだ。レティシアさんとディアナさんは人を呼びに、ジョセフィーヌはタオルを持って来ると行ってしまい、二人で取り残されてしまった。春とはいえ夜はまだ冷えるから少し寒い。そんな私をリハルト様が更に抱き寄せた。あ、暖かい…。


「怖くてお前から目が離せないな」

「ごめんなさい。ドレスもリハルト様の服も台無しにしちゃって」

「いい、お前が無事ならそれで。それに濡れただけだ」

「…楽しんでる所、邪魔してごめんね」

「馬鹿なのかお前は?折角の景色も紗良と見れなければ何の意味もない。他の女に微塵も興味無い。何度そう言えば分かるのだ」


濡れた髪を鬱陶しそうに掻き上げて、私の顔に手を当てるリハルト様。サファイアよりも綺麗な青い視線と言葉に、心臓があり得ない音を立てて鳴った。リハルト様の手から私の顔に熱が移って。水の中にいる訳じゃ無いのに、息が苦しくなり、胸がぎゅーと締め付けられる。


「っ苦しい…」

「は?大丈夫か!?紗良!」

「息が、苦しい…」

「大量に水でも飲んだのか!?」


頭を横に振る。水はそんなに飲んでいない。じゃあ何なのだと言われても、私には分からない。兎に角頭を横に振るしかなかった。私は病気にでもなってしまったの?でもこの感覚、知ってる気がする。何だっけ?何処で…?


「紗良!タオルを持って来たわ!リハルト様もどうぞ」

「あぁ。ほら」

「わぷっ!わ、私はいいからリハルト様、自分を拭きなよ!…っくしゅん」

「俺はそんなやわではない。頼むから風邪引くなよ」


ジョセフィーヌからタオルを受け取り、使用人達が慌ててやって来た。そのまま湯浴みに連れてかれ、着替えを済まして部屋に戻る。マリーは最初心配してくれていたのに、落ちた理由を聞いて呆れていた。すいませんね、足元覚束なくて。ヒールのある靴苦手なの知ってるでしょ?


「明日はきっちり仕事しなくちゃね」

「本当ですよ。ドジな神子のままでは帰れませんからね」

「ですよねー」


寝る前にリハルト様が風邪を引かないように、祈っておいた。私のせいで風邪引かれたら困るしね。



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