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3私に侍女がついた

トントン

「はい」

「失礼します」


30分ぐらい経って頭が少し冷静になった時、可愛らしい赤毛の女性が入って来た。彼女が私の世話をしてくれるらしい。


「今日からお世話させて頂きます、マリーと申します」

「紗良です」

「紗良様ですね。宜しくお願い致します。では早速ですが、お食事はどうされますか?」

「こちらこそ、お願いします。食事は…その、お腹空いたので食べたいです」

「三日も寝てましたからね。準備させて頂きますので少々お待ち下さいませ。湯浴みは如何なさいましょうか?」

「えっと、入りたいです」

「かしこまりました。こちらも準備させていただきます」

「あ、シャワーがあればそれで大丈夫です」


私のイメージだと王子様がいる様なお城とかだと、お風呂とかで服とか脱がされるイメージがあるからタオルと着替えさえあれば問題無いと伝えると、少し困った顔をした後、渋々納得したようだ。別の場所に湯船があるらしいが、ひとまずシャワーで問題ない。この様な扱いをしてくれるという事は、敵じゃないって事を分かってもらえたのかな?


「はぁ、さっぱりした…。三日も入ってない状態で王子様に会うなんて…、せめて先に身だしなみを整えたかった」


シャワーを浴びて着替えながら溜め息を吐く。着替えには白のワンピースが用意されていた。上質な生地で肌触りがとても良かった。それにしても、何度思い出しても王子様は格好いい。恋煩いの様な溜め息がでてしまう程に。無理なのはちゃんと分かってる。ただ少し夢をみているだけだ。妄想という名の夢をね。


「いい匂いがする…」


シャワールームから出ると美味しそうな香りが漂ってきた。マリーさんが食事の準備をしてくれたみたい。匂いを嗅いだせいか急にお腹空いて来たな。


「紗良様。お食事の準備が出来ておりますので、此方にお座り下さいませ」

「ありがとうございます!あ、あの、」

「はい?」

「様とかいらないです。紗良で大丈夫です」

「そういう訳には行きません。大切なお客様ですから」

「お客様?」

「えぇ、その様に伺っております」


そうですか…と返して食事を摂ることにした。一応、お客様扱いしてくれるって事なのかな?思ったよりも良い扱いでホッと胸を撫で下ろした。目の前に並んだ食事に手をつける。星形の様な形をした葉とトマトのみたいな味のするシャキッとした野菜のサラダに、なんのお肉か分からないけれど弾力のあるお肉のソテーに黄色のソースが掛かっていた。深いコクと爽やかな風味があり初めての味でとても美味しかった。他にもスープやらパンやらデザートなどが付き、豪華な食事だった。


「御馳走様です。食べた事のない物ばかりでしたけど、とても美味しかったです」

「それはよかったです。料理長が喜びますわ」

「やっぱりお城のコックさんの腕は確かなんだなぁ」

「こっく?」


ぼそりと呟いた言葉に反応したマリーさん。コックさんってこっちじゃ伝わらないのかな?何だか伝わらない言葉が多くて困っちゃうな。


「まぁ、紗良様の国ではそう呼ぶのですね」

「はい。そう呼ぶこともあるだけで調理師とか料理人も同じ様に使います」

「そうなのですね。紗良様、私の様な者に敬語など必要ありませんよ」

「え、でも…急に初対面の人にそんな失礼なこと出来ません…」

「ふふ、大丈夫ですわ。私は紗良様の侍女ですので、気軽に何でもお申し付け下さいね」

「は、はい…」


マリーさんは後片付けの為、部屋を退出していった。ボフンとベッドに倒れこむと仰向けに寝転がった。良く見ると天蓋付きのベッドだった。気づかなかったな。こんな私の侍女をやらされるなんてきっと嫌だろうに、マリーさんはそれを微塵も表情に出さなかった。しっかりと教育されてるんだろうな。


「夢じゃないのかな…」


変化の無い毎日に嫌気がさしていたものの、ここまでぶっ飛んだ変化は望んでいない。会社が無くなる処か世界を超えちゃったんですけど…。ぶっ飛び過ぎてるせいか、この生活に順応しそうな私に吃驚する。食事を平らげる所とかもうね、図太いよね。


「ご飯美味しかったな」


先程の食事を思い出して幸せになる。それだけが今の所、私の救いになっている。とりあえず食事が口に合ったのは良かった。これが合わないとなると死活問題だしね。


「あー…ねむ、い…」


ふわぁと大きなあくびをする。寝て起きたら夢だったらいいのに。これからどうなるんだろう。このままここにお世話になる訳にもいかないし…はぁ、何か疲れちゃったな。お腹が膨れたら眠たくなってきたから寝る事にした。夢でありますようにと願いながら。




☆ー☆ー☆ー☆ー☆




「失礼します。紗良様…あら?寝てるわね」


紗良様はベッドの上で丸まって寝ていた。何処から来たのか分からない少女ですけど、敵ではないとリハルト様から伺いました。ですのでお客様の様に扱う様にと言われているのです。


「どんな子かと心配でしたが、普通の少女ですわね」


紗良様は肩まで伸びた黒く美しい髪と黒曜石の様な黒い瞳の持ち主で、見る者を虜にしてしまう容姿をされている。思わず言葉が出てこなくなりそうだったけれど、顔に出さない様に教育されていたお蔭で何とか思いだし、何事も無かった様に言葉を紡ぐ事ができた。


「紗良様、お風邪を引きますよ?」


ベットでは寝ているものの、布団を掛けていないので声を掛けるも反応はなかった。きっと色々と安心したのでしょうね。

この世界では黒髪の持ち主は何らかの力に優れているとされており、欲しがる者も多いのですよね。その為にリハルト様は持て成す事に決めたのだと思われるのですが、この容姿も関係しているかも知れませんね。実際の年齢は聞いてないけれど、今年15になった妹とあまり変わらない様に見えますわ。なのに人の顔色を伺い気を使う姿は大人びて見えた。


「ファルド様もとても有能な方ですもの、紗良様もきっとそうなのかもね」


ファルド様はリハルト様の従者をしており、軍事方面や剣の腕がとても優れているお方なのです。他の国にいらっしゃる、黒髪の者も皆優れた才能を持っているそうです。ただかなり希少な為、滅多に拝見することは出来ないのですけどね。


「紗良様はどの様な才能をお持ちなのかしらね」


紗良様に布団を掛けて髪を撫でる。突然現れた少女はこのローズレイアに何をもたらしてくれるのだろうか。出来れば恩恵をもたらしてくれるといいのですけれど。


「お休みなさい紗良様」


マリーは微笑みながら静かにドアを閉めて部屋を出た。



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