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16憂鬱

あの、赤面事件からもう一週間経ちました。只今絶賛避けまくり中です。べ、べべ別に大した事を言われた訳じゃないけど、いや、大した事あるけど、リハルト様からしたら大した事ないと思うし……わーん!!この事考えるとテンパって良く分からなくなる!


「あの日が無かったことになればいいのに…」

「何言ってるんですか。怖いこと言わないで下さい」

「うぅ、だって…」

「結局なんて言われたのですか?」

「そ、わ、私の口からは言わない!」


あの日からリチェと、話を聞いたマリーが、リハルト様から何を言われたかの詮索が入ってくる。あんな恥ずかしいセリフ言えるわけないでしょ!大体、あれはリチェとファルド様のせいで言っただけに過ぎないし、言わされたんだよ!うん、そうだ!


「何一人で納得されてるんですか」

「あれはあの場の雰囲気に呑まれて仕方なくだと思うの!」

「でしたら大丈夫ですよね。それでリハルト様はなんて?」

「お、おおおおおお…」

「紗良様、落ち着いて下さい!焦らされれば焦らされる程、気になります」

「うぅ、リハルト様から聞けば良いじゃない…」


ちなみにこの一週間の間に部屋を引っ越しました。リハルト様の隣にいぃぃぃ。お陰で部屋に閉じこもってますけどね!


「侍女が直接聞ける訳無いじゃないですか」

「リチェがいるじゃない」

「リチェル様もリハルト様相手では聞き出せないみたいですよ。聞いても、紗良様に聞けってそればっかりだそうで」

「なら私もリハルト様に聞けしか言わない」


これ以上答えませんと耳を塞いで、机に突っ伏した。引きこもったお陰で字がスラスラ読める様になった。これはマリーに褒められたし、本を読める様になったのは嬉しかった。それに、力を知る為に色々試してたりもして、充実した一週間になった。


「紗良様、たまには散歩に行きませんか?最近籠ってばっかりですし」

「部屋も広くなったし、浴槽も付いたから問題無いよ」

「脱走したり、籠ったり、忙しいですね」

「何とでも言えばいいわ」


まぁでも、薔薇もそろそろ欲しいから仕方ない。外に出ますか。飾ってる薔薇は祈る事で三週間は持つようになったのだ。新しい薔薇と交換する時に、お風呂に浮かべてゴージャス風呂にしてるんだ。


「分かったわ。薔薇も欲しいし外に行こう」

「はい。少し冷えて来ましたので、こちらを羽織って下さい」

「ホントだ、肌寒い。もう秋なのね」

「早いですよね」


ワンピースの上からストールを羽織り久しぶりの外に出た。うん、いい空気だわ。この世界も四季があるのらしい。冬には雪も降るそうだ。そうなると薔薇は温室でしか収穫出来なくなるので、今年最後の薔薇風呂になっちゃうな。


「こんにちは、薔薇下さいな」

「おぉ神子様。はい、どうぞ。あーそうそう、冬は収穫出来ないから今年は最後ですよ」

「知ってるわ。また来年、綺麗に咲くのを楽しみにしてるね」

「はい、冬の作業は来年綺麗に咲く為に必要ですからね。頑張りますよ」


いつもより多めに渡された薔薇を持ち、庭師のエドガーさんと別れて厨房に向かった。半分はジャムにしよう。


「お、神子様。またジャムですかい?」

「うん、今年最後の薔薇だから、冬の間に楽しめる様にジャムを作っておこうと思って。こないだのじゃ足りないだろうし」

「俺等が作りますよ。こないだと同じ作り方で良ければ」

「じゃあ、お願いしちゃおうかな」

「任せて下さい」


料理長に手を振り、残りの薔薇の半分を抱えて部屋に戻る道を歩いていると、奥の方から見知った人が此方に向かって歩いて来てるのが見えた。素早くストールを頭から被り顔を隠した。


「紗良様、とても怪しいです」

「しっ、いいから無視よ無視」

「出来ませんよ…」


ドンドン縮まる距離に、マリーの後ろに隠れて進む。運が良ければバレない筈。息を潜めて、出来るだけ小さくなる。


「おい、何だその不審者」

「ひぃ」

「リ、リハルト様」


すれ違いざまに腕をがしりと掴まれた。その拍子に頭から被っていたフードが落ちる。思わず悲鳴が出て、マリーがどうしたものかと、リハルト様に声をかけた。


「今度は何をしてるんだ。前に言っていた隠れんぼとかいうやつか?」

「そ、そんなところかな」

「へぇ。捕まえたから連行な」

「そんなルール無いよ!」

「そうか。何故ずっと目を逸らしてるんだ?目を見て話せと教わらなかったか」


腕を掴まれたまま話してはいるが、一度も目を合わせていない。思い出してしまいそうだし、また赤面する事態は避けたいからだ。意地悪なリハルト様がそれをを見逃す筈も無く、責められた。


「っ、離して下さい」

「捕まえたと言っただろう」

「ば、薔薇が萎れちゃうので!」

「おい、薔薇持って戻って良いぞ」

「は、はい」

「マリー!裏切り者ぉぉぉぉ」


リハルト様に言われて薔薇を受け取り、急いで去っていったマリー。やられた敵みたいなセリフがでてしまった。くそぅマリーじゃ立場が弱すぎる!誰か、もっと上な人を…って王か王妃しか居ないーーー!もう何でリハルト様が王子なんだよ!


「まだ怒ってるのか?」

「……怒って、ない」

「なんだ照れてるのか」

「照れてない!!」


思わずカッとなって王子の目を見てしまった。サファイアの様な深みのある青に、透き通る様な透明感のある瞳。それは見るものを魅了し、惹きつける色。時折、この目には魔法が掛かってるんじゃないかと思う。


「…私をからかうのは、やめて下さい」


やっと絞り出せた一言。あの目に囚われたら、簡単には反らせない。王子に会いに来てる人を盗み見した事がある(お忍びごっこと称して。精神年齢低くてごめんなさい。勿論マリーに怒られたわ)。皆同じ様に、あの目にうっとりする様な顔をしていた。勿論、女性だったけれど。


「からかってなどない。あれは本心だが」

「み、皆しておかしいよ。私は前の世界では、平凡で通ってたし、そんな事言われても、困る」

「なら、前の世界での奴らは見る目が無かったのだな」

「っ、そういうのも困る。どうして良いか、分かんない」


日本に居た時に何人か付きあった事はあるけど、こんな破格のイケメンに、こんな風に言われた事なんて一度もない。私みたいな子だったら、腰が砕けてもおかしくないレベルだ。そんな私の様子にリハルト様の後ろにいたファルド様は、少々驚いた様に見ていた。


「可愛らしい反応ですね」

「だからこそ、自覚して貰わねばな」

「っしました!もうしたので離して下さい!」

「そうか。あぁそうだ。民には神子の存在を伝えたからな。他国にも広まっただろう」

「えっ?」

「最近異常な現象が各地で起き始めている。天変地異と言っても良いぐらいのな。お前に話が幾つか来ていから忙しくなるぞ」


天変地異?なんで?てか、私の力で如何にか出来るもんなの?不安な顔でリハルト様を見れば頭をポンポンと撫でられた。


「過去の文献に、神子がそういう役割をしていたと書いてあった。俺も一緒に行くから心配するな」

「…子供扱いしないで。リハルト様は王子なのに城を離れていいの?私は一人でも平気よ。ただ、天変地異をこの力でどう対処すればいいのか、分からないけど」

「それは俺にも分からん。ただ、お前が行くなら俺も行く。これは決定事項だ」


神子の所有権の問題かな?前に国同士の〜とか言ってたしね。それか、王子が神子を管理するって事になってるのかな?


「分かった。それはいつ?」

「早ければ来週には向かって頂きたいですね。神子様がいると分かった以上、遅くなれば平民の方々の不満も出てくるでしょう」

「そうだよね。分かった。また詳しい日が決まったら教えて?」

「分かりました」


ぺこりと頭を下げて失礼する。天変地異と神子か…。どんな関係があるのだろうか。


「なぁファルド」

「はい」

「頭を撫でるのは子供扱いなのか?」

「人によるかと」

「そうか」


ファルドじゃ話にならんと歩を進めた。安心させる為に撫でたのだが…子供扱いだったのか。どうにも、紗良の扱いは難しいな。




☆ー☆ー☆ー☆ー☆




「う~ら~ぎ~り~も~の~」

「きゃーーーーー!!!」

「酷いよマリー!」

「もう吃驚させないで下さいよ…。仕方ないじゃないですか。リハルト様に逆らえば首が飛ぶんですよ」

「そりゃそうだけどさ」


部屋に戻り、ドアを少し開けて恨み言を呟けば、マリーはビクっとなり手にしていた物を落とした。そんなマリーの驚いた姿に満足したので部屋に入った。


「それより聞いてる?来週から異変が起きている場所に赴くそうよ」

「はい、平民の方たちへの発表の時に伺っております。紗良様にはリハルト様から伝えると言われましたので、黙っておりました」

「そっか、まぁ仕方ないわね。子供扱いされてるみたいだし」

「いえ、紗良様をなるべく困惑させない様にだと思いますが」

「困惑はしなかったけど…ちゃんと出来るかな」

「大丈夫ですよ紗良様なら」


根拠のない大丈夫って苦手なんだよね。大丈夫じゃ無かった時に、人のせいにしたくなるから。って言っても私は良く使うんだよね。まぁ相手に心配させない様に使う言葉だよね。

それにしても前の神子はどの様にして、天変地異をおさめていたんだろうか。その場に行けば何かわかるのかな。


「最後に神子が存在していたのって、どのぐらい前なの?」

「そうですね…約1000年前じゃないでしょうか」

「そんなに前なの!?」

「はい。詳しくは分からないですが神子がなんらかの原因で居なくなってしまった様です」

「そもそも神子は血縁なのかな。それとも、一族の中から印が現れたのかな」

「そこまでは、残されておりませんでした。元々特別な一族だったのでしょう。詳しいことは何も。ただ、印があるものが神子と名乗れるそうです」

「そっか。分からない事だらけだね」


分からない事は仕方ない。出来るか出来ないかじゃなくて、やらなきゃいけないんだから。私は神子なのだから。


「マリーが黒髪だったらなぁ」

「何故ですか?」

「身代わりに出来たのにと思って!」

「紗良様…そんなのお顔が違うのですぐバレますよ」

「神子の力で、何とかならないかな?」

「多分なりませんよ」

「やってみようよ!」

「お断りします!」


こうしてずっとダラダラと楽しく過ごせたら幸せなのにな。嫌がって逃げるマリーを追いかけながらそう思った。



王子を好きな訳ではなくて、イケメンに甘いセリフを言われる事に慣れておらず赤面しています。戸惑いと、恥じらいですね。

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