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123.休まる場所

ハッと目を覚ますと、部屋は明るくなっていて外では朝を知らせる鳥の鳴き声がする。


「え?…寝てた?」


体をおこすとフカフカのベッドの上にいた。でも布団を被ってないところを見るに、ベッドの上に倒れ込んでそのまま寝てしまったらしい。

昨日部屋に入って暗闇の中明かりを探したけど、電気のスイッチらしきものすら見つけられずに断念したんだっけ?燭台をくれなかったからこの部屋も電気がつくと思ったんだけどなぁ。


「とりあえず…顔洗うか」


のっそりとベッドから降りようと床に足を着くと痛みが走る。


「忘れてた~~~~っ」


昨日大して慣れてない靴で長時間歩いたものだから、酷い靴擦れになってるんだったよ…。

靴をぺいっと脱ぎ捨て足を見ると、かかとの皮が捲れて血が固まっていた。これお風呂とか入ったら死ぬほど痛いやつだよね?

軽く濡らしたタオルで拭くだけでも痛いんだろうって考えたら、鳥肌が立った。


「ま、靴さえ履かなきゃこっちのもんだね」


素足で立つ分には靴と擦れる事がないから痛みは皆無である。といっても昨日の疲労はあるけどもね。

部屋の中を初めて見渡してみると、カーテンからベッドのカバーまでフリルのついた女性仕様の部屋だって事に気付く。

前に誰か女の人が使っていた部屋なのかな?大聖堂の中にある部屋にしては似つかわしくないような気もするけど…。


「っていうか洗面台ないんだこの部屋。それぐらい備えついててもいいと思うのはうちだけかね?」


誰に言うでもない独り言をぼそりと呟いて溜息を吐く。

昨日はずっと歩き詰めで疲れたし、何も食べてないからお腹が空いた。でも…と自分の来ている洋服を見る。

昨日は暗くて気付かなかったけれど、白いワンピースを着ていたものだから転んだ時に土汚れが着いてしまったみたいで茶色くなっていた。


「これで出歩くのは流石に恥ずかしくない?」


いくら女子力が低いとはいってもこれで誰かに会うと考えたら凄く嫌だ。それに勝手に出歩いていいかの確認も取り忘れたものだから途方に暮れるしかない。

それよりもうちが先に望むのは、顔と体を洗いたいってとこだけどさ。


コンコン


馬鹿みたいにボーっと立っていると部屋をノックする音が聞こえたので、返事を返そうとして止まる。うちがここにいるって知ってる人間だよね?と思ったけど、知らなきゃノックしないよなって思い、少し遅れて返事をした。


「失礼します。おはようございます」

「おはよー…君は昨日の!そう言えばお礼ってまだだっけ?ありがとうね」

「いえ、昨日言って頂いてます」


入って来たのは昨日の天使のような優しい少年だった。素敵な笑顔での挨拶は癒されるね。


「着替えを持ってきましたのでよければ使って下さい。本当はあの後お伺いしたんですけど、眠っていたので改めて持ってきました」

「死んだように寝てたみたいだね。着替えたかったから助かったよ。あ、その前に体を洗いたいんだけどどこかない?」


手渡された服を受け取るついでに聞ける事は聞いておこう。汚れた体のままじゃ気持ち悪いから先に風呂だよね。

うちがそう聞くとこの部屋の隣に風呂場があるのだそう。といっても水しか出ないのでお湯を沸かして持って来てくれる事になった。

その間に中を覗き見ると大きくはないけど、人が一人入れる程の浴槽があったので客人にはここに湯を溜めて持て成すんだろうなと思った。自分で準備するから今度入ってもいいかな?


「よいしょっと…。これぐらいで足りますか?」

「十分十分。ありがとね、えーっと…」

「僕はトピーです」

「ありがとうトピー。うちは…ロキ。ロキって言うの」


思わず自分の本名を言うところだった。危ない危ない。トピーと握手を交わしてうちは鼻歌を歌いながら石鹸を使い体を洗うのだった。






☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆





ビュオオオオオオオオオゥ


獣があげる唸り声のように風がうねる音が鳴りやまない中を、わたしは白くて大きな獣、狐竜獣ジャスマーであるダリアの背中にしがみ付いて落とされないように小さくなっていた。


「うううう…寒い…」


ガチガチと歯がぶつかる音がする程に体は震えている。もう吹雪の山の中を横断してるから、仕方ないのだけど。

でもお姉ちゃんを助ける為だから、わたしが弱音を吐いたら駄目だよね。


「キューイ」


ダリアが飛ぶのを止めて、お姉ちゃんと最初に会った時のような洞窟に入って行く。着いたわけではなく、どうやら一休みするみたい。


「ここで休むの?」


わたしが話しかけても答えてはくれない。蒼玉さん曰く、狐竜獣ジャスマーという生き物は黒髪の人にしか懐かないのだそう。

本当は触られるのも嫌みたいだけど、お姉ちゃんの緊急事態だから大人しくわたしを乗せてくれてるんだろうなぁ。


わたしが洞窟の中の適当な所に座ると、ダリアは洞窟の外へと出て行ってしまった。

置いてかれた!?と思って追いかける頃には、もう姿は見えなくなっていた。わたし何か気に障るような事したのかな?


「お姉ちゃんを助ける為に、弟さんを連れて行かなくちゃいけないのに…」


途方に暮れてお姉ちゃんがわたしの為に買ってくれた上等な上着をギュッと掴んで地面を見つめる。視界は段々とぼやけて来て、ぼたっと地面に染みをつくる。


「駄目、泣いちゃ駄目」


ぐしぐしと出てくる涙を拭って気合を入れる為にパンっと両頬を叩いたら、寒さもあってもの凄くジンジンした。


「探しに行かなきゃ!」


ヨシ!と気合を入れて探しに行こうと洞窟の入り口まで行くと、ぬっとダリアが帰って来た。


「え?ダリア?」

「キュ」


ダリアが短く鳴くと、ドサドサッと木の実や果実のような物が地面に落ちたので、それを拾って拭いてからダリアに差し出すと、鼻で押し戻されてしまった。


「えっと…、もしかしてわたしに?」

「キュー」

「あ、ありがとう」


どうしよう凄く嬉しい。ダリアは獣だけど、わたしの事も頼まれたとはいえ考えてくれてたんだ。

他の落ちてる実を拾って顔を上げると、ダリアは再び出かけてしまったのか居なかった。

でも今度は置いてかれたとは思わなかったので、ありがたくいくつかの実を食べて待っていると、再びダリアが現れた。今度は木の実ではなく、大きなネズミの生き物であるチュレミーを咥えていた。


「え?え?流石に食べれないよ…」


困惑しながらそう言うと、ダリアはあんたのじゃないわよとでも言いたげに横目で見た後、がつがつとチュレミーを自分で食べ始めた。

少しばかり血生臭い光景に目を反らしながらも、一緒に食事をしている感覚が嬉しかった。


「ご馳走様でした」


お姉ちゃんに教えてもらった、食べ物に感謝する言葉を両手を合わせて唱えると、既に食べ終わっていて毛づくろいを終えたダリアがのそのそと近づいてきた。

そしてわたしのすぐ目の前で丸くなると、大きな口を近づけてきたので驚いて目を閉じると襟元が引っ張られたのと宙に浮く感覚が同時にやってきたと思ったら、ドサっと下におろされたので恐る恐る目を開けた。


「…いいの?ありがとうダリア」


降ろされたのはダリアが丸くなったお腹部分。

ふわふわで暖かくて、わたしが寒くないようにって気を使ってくれたみたい。

ダリアはお姉ちゃんや黒髪の人にしか触らしてくれないって言ってたから、その優しさが凄く嬉しい。


その温もりに包まれながらその日は寝て、次の日洞窟を出ると、雪は止みあたり一面に白銀の世界が広がっていた。


「わぁ」


余りの光景にため息が漏れる。ここはいつも吹雪いていて、こんなふうに雪が止んで晴れるって事はとても珍しい。

でも綺麗だなって感動する反面、お兄ちゃんの事を思い出して胸が締め付けられる。


「できた」


身を屈めて雪に手を伸ばして、小さな雪だるまを作った。こうやってお兄ちゃんがよく作ってくれたっけ。


「はい、ダリアにあげる」

「キュ?」

「わたしのとこではね、大事な人に大切な物を入れた雪だるまを作って贈り物をするのが習慣であるの。だからダリアにあげる。わたしの宝物」


雪だるまの身体には、お祭りの日に貰ったお花形の緑の宝石を埋め込んである。光を受けてキラキラと輝くのをダリアは興味深そうな見つめてた。


「お姉ちゃんから貰った初めての物なの。大切にしてね」


わたしは自分でずっと付けていた雫型の透明に近い水色の石から皮の紐を抜いて、緑の宝石をそこに通してから、ダリアの首に縛ってあげた。


「白の毛によく映えて綺麗だね!それは持ってる人の身を守ってくれるんだって」


そう言うとダリアが嬉しそうにキューと短く鳴いて飛び上がった。空を気持ち良さそうに飛んでから、わたしの前に降りて乗るように促された。


「急がなくちゃね」


お姉ちゃんの手を一種だけ見たけど、酷い傷だった。目を覚ましたらとても痛いと思うから、早く治してあげなきゃね!


待っててお姉ちゃん!



短くてすみません(;´д`)途中更新でした~汗

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