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10薔薇の使い方

とうとうやってきました。王様との謁見の日。うぅ緊張するな…大丈夫なのかな?なんのお話をするのだろうか。落ち着かず部屋の中をウロウロと歩き回っている。


「紗良様、落ち着いて下さい」

「だって、王様よ?この国の王よ?それに私、得体が知れない存在でしょ?切り捨てられたらどうしよう!」

「紗良様は神子様ですよ!お気を確かに持って下さい。良いですか?神子の存在はとても尊いものです。ここだけの話ですが、一国の王が手を出せるような存在ではないのですよ」

「マリー…」

「…と、資料にそう書いてありました」

「うわあぁぁん、マリーの馬鹿ぁ、気休めにもならないわよ!…ん?そもそも侍女によく資料見せてくれたね」


ふと疑問に思ったことを口にする。いっぱしの侍女が見れるような資料じゃ無いよね。なんで?と顔を向けると、とんでもないことを聞いた。


「私、リハルト様の侍女でしたから」

「な、なんですと…」

「勿論、侍女頭ではありませんが。こう見えても侍女としては結構優秀なのですよ」

「…それは、なんか分かる…けど」

「紗良様が神子様と分かってからは、神子様の侍女として知っておくべき情報を与えてくださるのですよ」

「そうだったんだ…お手数おかけします」


有無を言わさず勉強をさせる姿から納得出来た。むしろそれぐらいじゃ無いと、王子の元ではやって行けないだろう。

まぁ、色々知らない所で話が進んでると分かった。今の話をしてたおかげで少し気が紛れたことだし、よし!なるようになるよね!気合入れなきゃ。


「マリー、変なとこないよね?」

「ふふ、ドレスとてもお似合いですよ、紗良様」

「あ、ありがとう。初めて着るからドキドキする」


王の謁見の日に合わせて作られたドレスを着て鏡の前に立ち、くるりと回る。触っただけで分かる上質な生地にレースや真珠がふんだんにあしらわれていた。凄く可愛いのだけれど一つ問題が。


「ねぇ、なんで黒なの?」

「紗良様の髪に合わせているからです」

「ドレスに黒って縁起悪くない?」

「とんでもございません!印を持つものの特別な色でございます!ファルド様のお召し物も黒ですし」

「確かに黒ね。…でもこれじゃぁ、神子って言うより…悪魔じゃない?」

「そんなことございません!!」


私の世界とこの世界じゃ色に対する認識がちがうみたいね。マリーが延々と黒の素晴らしさを話してくれている。でも乙女心としては、可愛らしい色を着たかったな。


「それじゃぁ仕上げね。黒でもいいや、おかげで色が映えるもの」

「え?まさか、それを付けられるのですか?」

「うん。綺麗でしょ?」


昨日の薔薇をドレスにつけていく。安全ピンは無かったので、糸と針でちょちょいのちょいだ!簡単に付けるだけだから短時間で出来る。それをマリーがぽかんと口を開けて見ていた。仕上げに髪にも差して完成だ。ちなみに髪は肩までしかないのだが、髪を降ろした状態で耳元の髪をねじり髪飾りがついている場所に2、3本薔薇を差し込んだ。

本当はアップが良かったんだけど、長さも足りないし、顔に合わないそうだ。残念。ただ化粧をしたことで20はたちぐらいに見えるようになったみたい。よかった。


「凄い…こんなに綺麗な姿をした女性を私は見たことがありません!花をドレスに付けるなんて、誰も試した事がありませんが、良いものですね!」

「えっと、ドレスの間違いよね?…生花を使うから一日しか持たないけど、だからこそ華やぐのよね」

「いえ、間違いじゃありません!一国の姫にも劣りませんよ!いえ、比べ物になりませんわ」

「もうマリーってば。でも、ありがと。冗談でも嬉しいよ。あ、マリーにも付けてあげるね」

「わ、私なんかに勿体無いですよ!」

「花は使ってなんぼよ!ふふっマリーの赤毛に映えて綺麗ね」

「あ、ありごとうございます、紗良様」


マリーが恥ずかしそうに笑ってくれた。黒じゃなくて、明るい髪のが綺麗よね。マリーとじゃれ合っていると、迎えが来たので部屋をでた。この城の騎士だろうか。兜を着けてるので顔は見えない。重くないのだろうか。


「では神子様。お時間ですので、参りましょうか」

「はい」


黙々と長い通路を渡る。本当は色々お話したいのだけど、神子は気軽に喋っちゃ駄目なんだって。神聖さが損なわれるのだそう。つまり、私の話し方が馬鹿っぽいってこと?…軽く殺意が湧くわね。


「こちらでお待ち下さい」

「はい」


騎士に案内されて大きな扉の前で立ち止まる。ここがどうやら謁見の間らしい。緊張し過ぎてあんまり周りを見てなかったな。次一人で来いと言われたら無理かも。迷子になりそうだ。


「どうぞ、中にお入り下さい」


私が中に入るのは時間で決まっており、時間になると扉の両端にいる騎士が扉を開けてくれた。


「ありがとう」


彼らに感謝の言葉を笑顔と共に掛け、扉の中に足を踏み入れたのだった。ありがとうございますと言いかけて、辞めた。マリーの耳に入ったら怒られるから。そんなの、私は気にならないのにな。


「本当に美しい物を見ると、言葉は出ないものだな」

「あぁ…。あの方が神子様か」

「綺麗な方だな…。俺、あの薔薇になりたい」

「花をあの様に使う発想が素晴らしいよな」


扉の閉まった向こう側で騎士の方々がそんな話をしてたとは、紗良は知るよしも無かった。



この1話で王様編終わる予定だったのに、まさか出てきませんでした( ;´Д`)

次回、王様出てきます。


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