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1ここは何処?私は誰?

「あー…今日も疲れたなぁ」


毎日ある残業を終えて家路につく。私はしがないOLをしている三上紗良みかみさら。変わらない日々に物足りなさを感じながら今日も一日中、仕事をしてきたのだった。


「仕事辞めたいな…」


子供の頃から大した夢を持つこともなく、なんとなく生きて、当たり前の様に就職してといったなんの変哲もない人生だ。何かに情熱を注いだこともない。皆が好きな事に情熱を注いでいるのをいつも冷やかに見ていた程に。でも同時に羨ましかった。なにかに夢中になれるという事が。


「はぁ、ご飯食べよ」


一人暮らしをしているのだが、どうにも独り言が多くなってしまう。周りは結婚している人も多い中、私はまだ独身だ。現代じゃ仕事に生きる女性も多いし、まだまだ若いつもりなので焦ってはいない。まぁ仕事を一生していきたい訳じゃないんだけどね。いつかは結婚して家庭に入りたいとかも思うけど、家でじっとしてるのも性に合わないのよね。


「うぅ…怠いなぁ」


重たい身体を引きずりながら風呂に入る。湯船につかり一時間経ってようやく風呂から上がる。いつも中で本を読んでしまう悪い癖のせいで、ついつい長風呂になってしまうのだ。


「私も世間みたいに夏休み欲しいな…」


ベッドに横たわりながら仕方の無いことを呟く。私の仕事はカレンダー通りの休みは無く、まとまった大型連休も無い。だから世間でやれ夏休みだの、やれお盆休みだのっていうのをテレビで見ると、休まず働けとか思ってしまう。


「明日会社がなくなればいいのに」


決して叶うことの無い願いに苦笑し、電気を消して眠りについた。せめていい夢を見れますようにと願いながら。




☆ー☆ー☆ー☆ー☆




鳥の鳴き声が聞こえる…。なんだか眩しい…?もう朝なのかなと考えながら重い瞼を開く。日差しが顔にあたり眩しくて思わず目を閉じた。時間を確認しようとベッドの横の机に置いてあるだろう目覚ましを探そうと体を横に捻り目を開くとそこには机が無かった。


「…………?」


机が無いどころかベッドのシーツの色も違うし大きさも違う。シーツは赤だったのが白に。ベッドはシングルだったのがクイーンぐらいになっていた。極め付けは部屋の様子が全く別物だった。あぁ夢かと思い再び目を閉じた。私は稀に夢の中で「これは夢だ!」と気づける時があり、今回もそれだと思ったからまた寝ることにした。夢なら色々おかしくても仕方のないことだから。




☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆




「っはっ!!」


布団からガバリと飛び起きる。心臓がバクバクして煩い。何が起きたかと言うと、怖い夢を見た。貞子みたいな髪の長い女がジワリジワリと少しずつ近づいて来るのだ。逃げたいのに体は思うように動かず、女はどんどん距離を縮めて来る。そしてとうとう目の前にドアップで現れたのだ。

青白い顔に白い部分が全くない黒く塗り潰された瞳。酷いクマの様なものが目の下にはあった。ダラリと垂れ下がる舌を垂らし、焦点の合わない目で私の顔を見てニヤリと笑う。これで怖く無い人なんているのだろうか?まぁそんな夢のせいで冷や汗をかきながら思いっきり飛び起きたワケなんですけどね。


「はぁ、はぁ…夢?…よかった」


夢だったことへの安心感から、力が抜けクタリと倒れこむ。出来ればもう二度と見たくない。死んだかと思ったよマジで…。誰が夢に出てきていいと許可したんだよ、本人の許可とれよまったく。


「だ、大丈夫ですか?」

「はぁ、だい、じょうぶ、です」


まだ心臓がバクバクしており、口から本当に飛び出ちゃうんじゃないかと心配になる。おかげで息も切れてるワケなんだけど……ん?えっと、私今誰と会話したの?だって私は一人暮らしのはず…。


「………」

「こ、今度はなんですか?水飲みます?」


顔を上げると其処には鎧を身につけた人が二人居た。一人は金髪の青年で二十代前半だろうか。もう一人は赤髪で三十代だと思う。ちなみに先程から声を掛けてくれてるのは金髪の青年の方だ。こちらを心配そうに覗きこんでいる。


「どっ…」

「ど?」

「ドロボーーーーーー!!!!」


ぎゃーっ!!!と大声で叫ぶ。誰かっ誰か!この悲鳴で警察を呼んでくれ!!私はもうダメだ!二人も居たら逃げられない!!あぁきっと夢からツイていなかった。死亡フラグだ、あぁ終わった。私の人生早かったな…まだ25年しか生きていないのに。明日になったらきっとニュースになってるんだろうな、犯人は逃亡中で見つからなくてお蔵入りするんだあぁぁぁぁ!


「はっ?ちょっ落ち着いて下さい!」

「ぎゃー!殺さないでー!!」

「殺しませんから!落ち着いて!」

「いやー!物なら盗ってってもいいからぁ!命だけは助けてーー!!!!!」

「ちょっ物も命もいりませんから!」


驚いた金髪の人が私の肩を持ちなだめようとしてくれるがパニックに陥っている為、ギャーギャー騒いでしまう。それでも金髪の人は根気良く優しい言葉を掛けてくれてようやく落ち着く事が出来た。ちなみに赤髪の人は眉を顰めて見ていただけだった。騒ぎに気付いて何人か入って来たが赤髪の人に話を聞いて苦笑いしていた。


「ドロボーじゃないなら、何なんですか?それに……ここ、何処ですか?」


落ち着いて見てみれば、私の部屋じゃなかった。…あれは夢じゃ無かったんだ…。それにこの人達の格好もおかしい。鎧なんて今の日本で着ている人なんて見たことない。しかも凄く本格的な鎧だった。頭は着けてないけれど首から下はガッチリ鎧で覆われており、腰には刀らしき物体が見えた。…マジでなんなの?銃刀法違反ですけど。


「…覚えてないのか?何故自分が此処にいるか」


ダンディーな低音ボイスが聞こえてきたので顔を向けると、赤髪の人だった。私の言葉の真意を確かめる様に此方を見ている。


「覚えてるも何も、私は自分の家で寝てたはずなんですけど」

「はぁ?」

「はぁ?って言われても私がはぁ?です」


悲しいかな。初対面の人にはキチンと敬語を使ってしまうのは日本人のサガなのか、仕事によるものなのか。まぁ一番無難だよね。一人そう頷いていると吹きだすような声が聞こえてきた。


「ぶはっ!くくっ」

「た、隊長⁉︎」

「人を見て笑うなんて失礼ですね」

「いや、悪い。中々肝の座った女だな。おい、お前ら女が目覚めたってあのお方に伝えてこい」

「はっ!」


先程の騒ぎで集まった兵士達にそう告げた赤髪の人。隊長さんなんだ…まぁ余裕がある大人な雰囲気するから納得だけどさ。つまり私が起きるまで見張りをしていたという事だよね?よだれ垂らしてなかったかな?


「泥棒じゃないならなんなんですか?」

「この城の騎士だ」

「騎士?あぁ騎士のコスプレをされてる劇団員の方ですか?」

「こすぷれ?げきだんいん?なんだそれは」

「え?分からないんですか?」

「意味が分からんな」


普通の人なら分かる言葉しか使ってないのに。てかそうじゃないなら本当になんなんだろうか。この城ってどの城かもさっぱりだし、そもそも日本にこんな洋風な部屋のついたお城なんて存在しないだろう。ならここは日本じゃないって事?日本語通じるのに変な話だ。


「女、お前名は?」

「怪しい人に名乗れません」

「はぁ…。おいロイド、この女に状況の説明をしてやれ」

「はっ。ここはローズレイア王国の中心、ローズレイア城の一室です。貴女は先日この城の中庭に倒れており、一先ず保護させて頂きました。三日程お眠りになられてたんですよ」

「……はぁ……」


何の話かさっぱり分かんないんだけど。ローズレイア王国?城?三日?何言ってんの?って感じなんだけど。日本にはそんな王国無いし、世界でも聞いた事ない。小国とか?でも言葉通じるし…はぁ…溜め息しか出ないよ。




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