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零
『死』という言葉のことを考えるだけで胸がどきどきした。
なんとなく冷たいけど甘い、アイスクリームに似ている言葉だと思っていた。
ほうっておくと溶けてしまう儚さゆえ、口にいれずにはいられない。
そして……口にすると、舌の上で不思議な甘さが広がり、一瞬でふわっと溶けてなくなる。
誰もが口にすることはいとわないけど、直接さわるなんてことはしない。
冷たいけど甘い魔法の言葉。
人間なら誰もがそう思うのではないか。
このたった一言に悲しみ、畏怖、恐怖、喜び、狂気……など様々な感情が入り混じっている。
この言葉から逃げたいけど逃げられない、話したくないけど話さずにはいられない。
口にした瞬間、体温が奪われほんのちょっぴり死に近づく、と同時に生きている実感が湧いてくる。
誰もが目と耳と心を奪われる。
そんな瞬間が好きだ。