行動開始
リュベルは家を後にし、広場へと足を進めた。村の端にあり、子供たちの遊び場となっている広場は、所々に木が生えているだけのほとんど何もない開けた土地である。実際は生えている木に、食べられる木の実や野草があるだが、村人たちはおそらく知らないのだろう、完全に放置し近づかない。おかげで食卓に並ぶのは、苦いそこらに生えている一応食べられる草と豆だけ。この村の頭の悪さにリュベルは感服した。
しばらく歩けば広場が見えてくる。かなりの広さがあるのだが、子供たちは簡単に見つかった。この村の特徴の一つとして、あまり深く考えない、新しいことをしないというものがある。これは子供たちも例外ではない。新しい遊び場を見つけることなく、いつも通り広場の入り口付近で遊んでいた。
(見るたびに思うが、飽きないのかねぇ……)
リュベルは広場に入ったことは無いが、近くを通ることはある。そのたびに目に入るのは、入り口付近でかけっこらしき遊びをする子供たち。決して他の遊びをすることもなく、同じことの繰り返し。自然と溜息が出た。
少し足を止め、子供たちを観察する。大半の子供が楽しいのか、つまらないのか、よくわからない顔をしていた。また、ただ単に走り回っているようにしか見えない。ルールなんてものは見られなかった。
「なんだか、同じ人間として恥ずかしい限りだ……」
再度溜息が出た。
一瞬、改革、復興という言葉が頭がよぎるが、すぐに否定する。このつまらない村を改革し、復興したところでなんも利益が無い。何より、興味がわかない。つまらないことはするべきではないと考え、リュベルは止めていた足を動かし始めた。
「やぁ、僕も仲間に入れてよ」
広場に足を踏み入れ、いつもの笑顔で子供たちに声をかける。反応は二つ。睨みつけてくるものと、ガタガタと体を震わせるもの。震えているのはリュベルの兄弟、朝の事が未だ忘れられないのか、目を向けようともしない。
そんなこと気にせず、リュベルは子供たちに近づいていく。近づくにつれて、震えだすものが増えたが、やはり気にしない。ある程度の距離で立ち止まり、再度言う。
「僕も仲間に入れてよ」
これで自然と子供たち全員が、体を震わせる事になった。それでも気にせず話しかける。もちろん笑顔は忘れない。
「今日はね、面白い話を持ってきたんだ。皆のお父さんやお母さんにも教えてあげなよ」
そういって、今できる最大の笑顔を子供たちに贈った。子供たちは小さく悲鳴を上げる。中には泣き出す者すらいる。
これから話すのは、流したい噂話。意外と子供たちからの方が噂が広まっていく。これは村の特徴のせいである。
この村の特徴、新しいことしないこともそうだが、何より閉鎖的である事。村の外と、というだけではない。この村は子供と大人、大人に至っては年齢でグループをつくり、お互い干渉しない事が暗黙の了解になっていた。例外は、リュベルとその両親だろう。いい意味でも悪い意味でも村人全員が干渉してくる。リュベルは後者である。
しかし、自分の親と話さない子供は少ない。そこは干渉していると言えた。噂を村全体に広めるには、まだ年齢でグループ分けされていない子供からの方が、様々な年代に伝わるのである。
リュベルは嗤う。
「実はね……」
この翌日から村である噂が流れだす。それはこの村で崇拝していると言ってもいい人物の悪口。その噂を話した子供は村人に罰を与えられたが、その子供はよりにもよって、その崇拝対象の子供。崇拝対象である彼女が止めることにより、罰は軽いもので済んだ。
しかし、村人は学習しない。貴様のせいで、という理由で子供に罰を与える。やはり母親が止めるのだが、彼女は村人のもうしない、という言葉を信じる。しかし、また罰を与えて、の繰り返しである。
そのうち、村の若い者から噂を信じる者が出てきた。これはのちに村全体に悲劇を巻き起こす。
―――もうこの村の崇拝者は魔力が無い。
この噂を広めた子供、リュベルは思う。
(つまらねぇ……)
実はこれ、前日に上げようと考えていたものです。書いてたら、ちょっとしたミスで、データが飛んだよ。
相変わらずの更新期間の空き、本当に申し訳ない。