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外道が嗤う  作者: アタマ
3/19

現状

「なるほどね」


 転生から三年、元男、現リュベルは父親と共に畑へと来ていた。畑で働くのは父一人、母親どころか、七歳年の離れた長男の姿もない。リュベルが畑の近くで本を読み、父親が畑仕事を行う。これがここ最近の生活である。

 何故、父親とリュベルしか居ないのか。理由は母親にある。極端に息子たちに甘く、叱ることをしない。それでいて自分自身も何もしない。最低の部類の人間であったが故に、ほとんどの仕事は父親一人でやらざるを得なかったのである。

 リュベルは父親の必死の姿が実に滑稽だった為と、母親と兄弟たちが気に食わなかった為に、こうして父親の姿を嘲笑いながら、毎日を過ごしていた。ちなみに顔は本で隠している。

 しかし今までわからなかったのが、そんな母親に父はなぜ何も言わないか。それが今やっとわかった。そこで漏れたのが冒頭のセリフである。


「うちの母親は、村全体に崇められてるも同然、てか」


 母親は村全体、それこそ男女関係なく崇められていた。ただ単に村で一番魔力がある、それだけで。

 魔力、魔法を放つのに必要な力。どこから生産されるか、何故人によって保有量が違うのか、一切わかっていない。それだけに魔力量の多い人間は大切にされる。多くの貴族は沢山の子を産み、その中から一番魔力の多い物を選別している。田舎ではそうはいかず、極稀に生まれる魔力の多い者が優遇される。

 この村は例に漏れないどころか、優遇以上の扱いになってしまっているようだが。


「それにしても、まさか魔法なんてものがあるとは、ね……」


 実をいうと今日の今日まで、この世界が異世界なんて考えていなかったリュベルであった。


「そんなのはさておき……」


 リュベルは小声でそう呟き、耳を澄ます。

 聞こえてくるのは父に対しての陰口。どうやら母親との結婚に、村人たちは未だに納得していないようだ。やれ、合わないだの、勿体無いだの、果てには早く死んでくれないのかという内容まである始末。父が死ねば大切を通り越して崇められている母に男共が殺到するだろう。

 実に醜い、あまりにも残酷。


「だが嫌いじゃない……!」


 リュベルは嗤う。周りにばれないように顔は本で隠しているが、本音を言えば、大声をあげて笑いたい、そんな気分であった。

 リュベルが笑っている間にも、陰口は続く。似たような内容ばかりで次第に聞くのも飽きてしまったが、ここでひとつ、疑問が生まれた。


「久しぶりだな、あいつら……」


 畑仕事を終えたのか、父親がリュベルに話しかけてくる。その顔には疲れと呆れが浮かんでいた。

 そんな父はおそらくこの村で一番まともな人間だろう。決して母を崇めてはいないし、何よりリュベルの本性に気づきつつある。現に今もリュベルに目を合わせようとしていない。


「お父さん」

「お前が生まれてから今まで何ともなかったが、ついに再開したか。芸の無い奴らだ」


 そういってすぐさまリュベルに背を向け、畑を去っていく。それにリュベルも続いた。

 そこからは何一つ会話は無い。父がリュベルを嫌っているのと、リュベルに話す気が無い為である。聞こえるのは、村人の止まらない陰口。最早、わざと聞かせているように感じてくる。実際はただ単に隠すのがあまりにも下手糞なだけなのだが、父はどうやらわざと聞かせていると思っているようだ。その証拠に何度も舌打ちし、下手糞と悪態をついている。

 そんな中、一つ父親関係でないものをリュベルは聞き逃さなかった。


「五男のダメ息子が。なんであの人に懐かないんだよ」


 あの人というのは、間違いなく母親の事だろう。そこで陰口再開の理由にリュベルは気付く。


(原因は俺、てことか。良いぜ、喧嘩なら買うぜ)


 そんな事を考えていると、近くから視線を感じた。間違いなく父親である。睨みつけるような目で見ているのは、父も陰口再開の理由に気づいたのだろう。明らかに恨みのこもった視線を向けてくる。

 そんな父にリュベルは笑いかける。どう見ても子供のする笑顔ではない歪んだ笑顔で、父親にだけ聞こえるようにそっと呟く。


「同じだね、お父さん?」


 父は気味の悪い物を見たような顔をして、鼻を鳴らし、リュベルから顔を背けた。額には汗が浮き出てきており、その心境をリュベルには手に取るようにわかった。


「早く帰ろうよ、お父さん! あはは、あはははは!」


 リュベルは父の手を取り早く歩くように急かす。その時、父に顔が見えるようにするのも忘れない。これがお前の息子の顔だと、歪んだ笑顔を浮かべる気味の悪いガキは、お前の血が混じっているのだと、しっかりわからせるように。

 父親の顔が恐怖に歪む。実に面白い。リュベルは父親のことなど気にせず、その手を引っ張る。時々振り向き、今自分に出来る最高の歪んだ笑顔(いい笑顔)を見せる。

 無邪気な子供とその父親のように見えるやり取りは、家に帰るまで続く。


「あははは! あははははは!」


 夕日の中に無邪気な子供のように聞こえる笑い声と、不気味な笑顔を浮かべたリュベルが進む。

 やりたいことはまだ沢山ある。折角の転生、楽しまなければ損だ。


(いいね、いいね! これからが楽しみだ!)


 リュベル、生誕三歳。まだ彼の二度目の人生は始まったばかりである。

うん……。

更新機関にものすごく空きがありますね……。

ほんとに申し訳ない。読んでる人少ないだろうけど……。

これからもがんばりたいと思います!

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