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外道が嗤う  作者: アタマ
2/19

転生

 どれくらい、時間が経っただろうか。男の意識はどこか、暗い空間の中を漂っていた。死んだあとの世界がどうなっているか、男にとっては知ったことではないが、今の状態は受け入れられない。さっさと何か出てきて欲しい、そう考えていた。

 ただ待つだけではなく、何度も体を動かそうとしてみたが、全くと言っていい程反応が無い。この現状に男は内心ため息を吐いた。湧き出てくる感情は、つまらない、それだけだ。これなら地獄にでも落とされた方がよっぽど愉快だった。


(つまらない、ああつまらない)


 時間がどれほど経とうが、男には関係なかった。大事なのは脅す相手がいないこと、待つに至っても、死ぬ前のように取引先からの返事を待つのならばいい。しかし、今はそれすらない。男に脅しの無い生活など考えられなかった。

 よくある転生物ならば、ここで神のような存在が現れるのだが、その様子すらない。たとえ現れたとしても、男の遊び道具にしかならないのだが。それでも男の機嫌は良くなるだろう。

 だんだんと苛立ちが強くなる。もしも男の顔を見ることが出来れば、それこそ鬼という表現が当てはまる。それほど男は苛立っていた。


 苛立ち始めて直ぐだった、男の現状に変化があったのは。

 よくはわからないが、何かに圧迫される感覚が男を襲った。


(なんだ?)


 男は一度意識を失った。










 とある家、さほど裕福ではなさそうな雰囲気のある一人の男は頭を抱えていた。単なる平民であるこの男は、なぜか子宝に恵まれていた。今度の子供で5人目になる。結婚してわずか数年、安定した収入もない平民に養えるものではない。

 実際のところ、今回の出産は反対であった。子供4人でも酷いものである。妻は育児に追われ、仕事である農業は人手不足。このまま増え続けるならば、間違いなく食糧不足に陥る。それだけは避けたかった。

 しかし、妻はいう事を聞いてくれなかった。子供が育てば何とかなると、楽させてくれると、そう言って聞く耳を待たなかった。結果、今回の出産が行われた。


「どうすればいい? どうしたらこれからもやっていける?」


 男はそう呟く。さっきから何度も何度も繰り返している。周りはそんな男に対し、冷たい視線を向けていた。彼の周りはほとんどが妻の味方。男に賛成する者はいなかった。

 しばらくすると、今現在、出産が行われている部屋が騒がしくなる。よくは聞こえないが、子供が生まれたようだ。そんな様子を感じて男は、余計頭を抱える。それに反して、周りは全身で喜びを表す。男だけがその場で浮いていた。

 しかし、いつまで経っても、部屋から男を呼ぶ声は無い。騒ぎが起きてから、もう大分経つ。流石に周りも心配しだした。

 そんな中、男はある一つの可能性が出てきたことに、喜んでいた。もしかしたら、出産に失敗して流産になったかもしれない、生まれた子供が弱っており、今にも死にそうなのかもしれない、そんな期待が、男の頭によぎった。もしこの場で死ななくとも、病弱になる可能性も考えられる。ならば病気に見せかけ、殺すこともできる、男はそう考えた。

 漸く、部屋から男を呼びに産婦が出てきた。やはり浮かない顔をしている。男は顔に喜びが出ないように、産婦に話しかけた。


「出産はどうなった!?」


 ここで無事に済んだかどうかではなく、結果を聞くあたり、男の出産に関しての考えが窺える。しかし、そんなことに気が付く者は今この場にいない。産婦はゆっくりと道を開ける。


「こちらです……」


 気を落としたように言う産婦に従い、男は部屋に入る。そこにはベッドに横になっている妻の姿。数人の産婦に布に包まれ産婦に抱かれている何か。男はその産婦に近づいた。

 出来れば、死んでいて欲しい、そんな事を考えながらゆっくりと歩く。


「子供は……?」


 産婦に話し掛けると、産婦は男に布に包まれた何かを手渡した。男はそれを確認する。そこにいたのは目を閉じ、ほとんど動かない赤ん坊だった。よく見れば胸が上下しているので、生きてはいる。その様子に思わず舌打ちしそうになった。

 男は顔を産婦に向ける。産婦の顔は先程の産婦と同じ、浮かない顔をしてばつが悪そうに言う。


「男の子です……。ですが、生まれてもなくこともなく、今のように目を閉じ、眠っています……」


「そう、か。なら、いい」


 死んで欲しかった、なんて口が裂けても言えない。それだけに注意して男は口を開く。今度はベッドに横になっている妻に目を向けた。どうやら眠っているようで、起きる気配はない。

 近づけば起きるのでは、とも思ったが、やはり起きない。そんな妻に対し、若干の嫌悪感を覚えた。

 再度子供を見る。歩く途中目が覚めたのか、最初から起きていたのかはわからないが、男をじっと見つめていた。

 湧き出るのは恐怖。生まれたばかりの赤ん坊は、なぜか濁った灰色の目をしていた。まるで大人の汚い部分を見てきたかのような目は、男の考えを見抜いているようだった。

 不気味に感じながらも、子供を天井に掲げる。


「お前の名前は、リュベルだ。お前の母さんと考えたんだ。賢く生きろ」


 出来れば早く死んでくれ、そんな事を考えながらながら、ゆっくりと子供、リュベルを下す。

 その際、産婦に呼ばれて顔を逸らしたがゆえに気が付かなかった。リュベルが歪んだ笑顔を向けたことに。その顔はまるで、男の、自分の父親の考えを見抜いたようだった。

約1週間ぶりになってしまった……。

2話目なのに時間がかかってどうすんだか……。言い訳すると少し遠出しており、PCに触れませんでした。

書きためしておけばよかった。

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