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羊の三題噺。

【三題噺】君が私にくれたもの。

作者: シュレディンガーの羊
掲載日:2011/08/16


君から貰ったものは数え切れなくて。

泣きたい時の笑い方。

前を向いて生きていく方法。

誤解の優しい解き方。

だから、君が私の前からいなくなるなんて信じたくなかった。


「ごめんね」


見送りに来た私に君は淋しげに笑った。

私は黙って俯く。

口を開いたら泣いてしまいそうだった。


「……さよなら」


顔を上げたいのに、笑いたいのに。

教えてもらった笑い方が思い出せない。

さよならじゃないよ。

唇が震えただけで声にならなかった。




君が誕生日にくれた紅葉のしおり。

手作りだから無骨でごめんね。

なんて少しだけ照れて言った君。

一人で見る海辺は淋しくて悲しくて。

君が好んだ蜜柑の炭酸。

ペットボトルの蓋を捻れば、シュワシュワと弾ける泡。

口に含んで、その刺激が緩んだ涙腺を決壊させた。

ポケットから手紙を引っ張り出す。

なんども書き直しても、納得がいかなくて、結局渡せなかった。

砂浜に下り、靴が濡れるのも構わず波に立ち入る。

跳ねた飛沫が頬を濡らす。

悔しかった。

いろんなことが悔しかった。

俯けば、水を鏡に顔が写る。

ひどい顔をしていた。

はっとして涙を拭う。

ペットボトルの中身を飲み干す。

空になったそれに手紙を押し込む。

そして、大きく息を吸う。


『深呼吸して、大好きな人の笑顔を思い出して』


記憶の中の君が笑う。


『そしたらほら、涙なんて流れない』


「そうだね」


くっと前を向く。

君から貰ったものを大切にしたい。

涙はまだ流れるけど、頑張ってみる。


「さよならになんて絶対しないからっ」


私は笑って、泣いて、叫んだ。

手紙入りのペットボトルを海に投げる。

家に帰ったら手紙を書こう。

あとしおりを作ってみる。

そして、今度こそ伝えるんだ。

君が私に数え切れないぐらい、いろんなものをくれたこと。

三題噺として書きました。

空のペットボトル、水鏡、しおり。

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