空を飛びたいアヒル
むかしむかしあるところに、空を飛びたいと願うアヒルがいました。
「どうして僕の翼は飛べないんだろう」
アヒルは毎日毎日、そう嘆き続けていました。
そこに1匹のオオカミが来て、こう言いました。
「それは、君の身体が重いからだよ。身体を軽くしたら、きっと飛べるよ」
「本当に?」
「うん。僕が手伝ってあげるよ」
オオカミはそういうと、アヒルの足を食いちぎりました。
アヒルはあまりの痛さに、悲鳴をあげました。
「だけどこれで身体が少し軽くなったから、飛べるようになってるかもしれないよ」
そう言われたアヒルは、懸命に翼を動かしました。
けれどもちっとも飛べません。
「それはきっと、君の身体がまだ重いからだよ」
オオカミは次に、アヒルのしっぽを引きちぎりました。
それでもやっぱり飛べません。
オオカミはその次に、アヒルのお腹をえぐりとりました。
それでもやっぱり飛べません。
アヒルは痛くて、悲しくて、泣きじゃくりました。
それを見たオオカミは、こう囁きました。
「頭が重いのかもしれないね。僕が取ってあげるよ。そしたら、飛べるかもしれない」
オオカミはアヒルの頭をくわえると、最後にこう言いました。
「君は馬鹿だね。…ごちそうさま」
アヒルの頭の中で、何かが砕ける音が聞こえました。
オオカミがその場から離れた時、そこに残っていたのは
最後まで飛べなかったアヒルの翼だけでした。