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因果応報

掲載日:2026/08/09

短編です

 仕事から帰ってくると、ポストに自分宛ての葉書が一枚届いていた。

 【返却要請受理のお知らせ】と書かれたその葉書には俺の名前と「あなたが使用している時間の返却要請が受理されました。この葉書の到着から24時間以内に返却の意思を表明してください。期限内に表明がない場合、相応の措置が取られることになります。尚、葉書の破棄が確認された際は直ちに・・・」ってなんだ、この読むだけ無駄な内容は。

 返却って、何も借りてないけどな。そもそも俺は他人に貸しは作っても借りを作ることはしない。葉書の表面に描いてある差出人の欄も聞いたことのない場所だし、住所だって知らない場所だ。つまりこれは悪戯だ。まったくイライラさせられる。借りてもいないモノを返せだなんて、悪徳業者のやり方そのものじゃないか。

「・・・おい、帰ったぞ」

 玄関を開けたのに、妻がいない。でも怒りを乗せた声を出せば、台所から慌てて姿を見せる。

「あ、お帰りなさい・・・すみません、あなたが急にビーフシチューが食べたいって言うから・・・今作ってて・・・」

「ごちゃごちゃ言うなよ。俺が帰ってきたら玄関で三つ指立てて俺を迎える。結婚当初からそう言う約束だったよな!?」

「あ・・・すみません」

 まったく、八年間ずっと言い聞かせてきたのに。最近は口答えするようになって、偉くなったもんだ。結婚当初は喜んで玄関前に三つ指立てて頭下げてたくせに。

「あ、それと、ビーフシチューの気分じゃなくなったから」

「え・・・」

「なんだよ。仕事行ってきて俺は疲れてるんだぞ!?お前は家の中で家事するだけ。そんな楽な生活してるくせに、俺を労わろうって気持ちは起きないのか!?」

 大きな声を上げて、腕を振り上げるだけで、ビクビクとして謝罪の言葉を述べてすぐに台所に逃げる。仕事で部下にも指導するけど、家に帰ってきてまで指導しなきゃいけないのが面倒なんだよ。

 葉書をゴミ箱に放り込んで、台所に戻ると、妻はまだ台所でアワアワと右往左往している。はぁ、仕方ないな。

「もういいよ、ソレで」

「え・・・あ・・・」

「譲歩してやったんだからソコは“ありがとう”だろう!?全く愚図なんだから!」

 はぁ、イライラするなぁ!今日は疲れた。明日は休みだし、ゆっくり寝よう。


 目を覚ますと、見知らぬ場所にいた。

「・・・は?」

 着ていたはずのパジャマは無くなって、ボロボロのただの布切れに手足と頭が出る分の穴が開いているだけの服とも呼べないモノだけを身にまとっていた。手には鎖が繋がっているし、靴も靴下もない。裸足に土の感触。ナニコレ・・・夢?

 体を起こすと、全身が軋む。寝ていた場所が床だったことが解った。俺のベッドは!?

「アァ、ヨウヤク起キタカ。サッサト飯、作レ」

 聞き覚えのない大きな声が聞こえて視線を向けると、昔絵本で見たような、大きな角を付けた“鬼”のような生き物が俺を覗き込んでいた。

「は?な、なんで・・・はぁ!?」

「早クシロ。腹ガ減ッタンダ」

 手についた鎖をそいつが引っ張って俺は地面に倒された。

「素直ニ返却シテイレバ良カッタノニナァ。マァ俺ハ使用人ガ来テクレテ助カッテイル」

 使用人!?どういうことだ?

「オ前ガ今マデ使用シテキタ妻ノ時間ヲ、オ前ハ返却シナカッタ。ダカラ相応ノ措置ガ取ラレタ。解ッタラ飯。ソレクライ出来ルダロウ?譲歩シテヤッテルンダカラ、早クシロ。愚図ナヤツダ」

 そう言って、大きな生き物は俺を置いて、大きな食卓に座ってしまった。



——俺、料理したことない・・・——

葉書の破棄が確認されました。

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― 新着の感想 ―
oh!コレゾ、インガオゥホゥ! 今どきこんな化石みたいな男おるんですかね?w 妻がどうなったのか後日談が気になる所ですね。 面白いお話でした!ありがとうございます。
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