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プロローグ requiem

2作目です。

タトゥーと半陰陽。

思いつくままに書いています。

アマチュア写真家なので遅筆になりますが、読んでいただけたら幸いです。

眠れ。


眠れ。


半身を求めし憐れな少女よ。


今はただその安寧の柩に抱かれ


安らかに眠れ。




4月。東京の飲み屋街は喧騒が止むことがない。

歓迎会、新歓コンパ。春に各々の道を歩みだした者たちの嬌声。光るネオンに一人、また一人と吸い込まれてゆく歓楽街。


そんな中とあるチェーン店の一角で深いため息をつく男が、一人。


(…帰りたい…。)

川嶋かわしま けい。22歳。

ようやく掴み取った内定。そしてお決まりの歓迎会。

周囲の賑やかさとは全く正反対のオーラを出す彼に、先輩らが絡んでくる。

「桂ちゃーん?飲んでるー?」

酒臭い息。眉を顰めそうになるのをこらえながら

「自分、下戸なんで…」と愛想笑いをして烏龍茶を指差す。

「大丈夫大丈夫!一回飲んじゃえばこいつの良さがわかるよ、な?」

グイと押し付けられたジョッキを頬に当てられる。

(うぜぇ…帰りたい…)

と、そこにまた別の先輩が絡んでくる。

「おいそれアルハラだから!まぁ桂ちゃんが飲めないの、『らしく』てかわいいじゃん??」

まただ。

桂は大きなため息を心の中でついた。


小さい頃からそうだった。

低い身長にぱっちりとした瞳。

細い手足にどこかオドオドしたような仕草。

女と言ってもいいような中性的な見た目。

二人の姉には着せ替え人形にされ、中学では何をトチ狂ったか男に告白され⸺ありとあらゆるところでいじられてきた。

うんざりだ、そう思いながら烏龍茶をぐい、と飲む。

「なあなあ、球体人間のタトゥーの女、って知ってる?」

目の前にいる顔を赤くした男から唐突に投げつけられた言葉。


「球体人間…?」と桂が返すとその男⸺先輩は「そ。」と言ってジョッキの中身を飲み干してからこう言った。

「右肩にちょうど野球ボールくらいの丸い人間のタトゥーが入った、身長180cmくらいの女。で、そのタトゥー、よく見ると頭が2つに手足が4つずつあるらしい。で、その女とヤれると何でも一つ、願いが叶うとか。」


⸺何でも願いが叶う?

桂が訝しんでいると、「ま、いわゆる都市伝説ってやつだけどな!!」と先輩は笑いながら桂の股ぐらをつかむ。

「ひゃあっ!」

思わず漏れる情けない声。

「桂ちゃんもその女とヤれば一皮向けちゃうんじゃないの〜?」

下卑た笑い。

「おいおい、今度はセクハラかよ。やめてやれって。」

桂はいたたまれなくなり、そっと三千円を取り出すと先輩らが居なくなった隙に宴席を後にした。

カラカラ、と居酒屋のドアをそっと閉める。


「はぁ…。」深い深いため息をついた後、桂は駅に向かって歩き出した。

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