禁断の収穫 ―だいすけべな聖騎士と支配の微笑―
「ケンジ様、見てください! このナスの艶やかな紫を……まるで、生命の神秘を閉じ込めた宝石のようですぅ!」
フェリスが差し出した「だいすけべナス」は、ケンジのハッキング農法によって、もはや植物の限界を超えていた。触れるだけで指先が吸い付くような、抗いがたい弾力と熱。 「ああ、いい出来だ。これなら、どんなに枯れた心でも13秒で生命の歓喜に目覚めるだろうな」
ケンジがそのナスを受け取った瞬間、村の境界にある魔力障壁が鳴動した。 現れたのは隣国の「潔癖聖騎士団」。彼らは、この村から漂う「あまりにも濃厚すぎる生命の気配」を、不浄な魔法の予兆だと13秒で誤解し、剣を抜いた。
「止まれ! この村には理性を狂わせる不適切な豊穣が溢れている! ケンジとやら、この……歪な野菜の正体を説明せよ!」
剣先を突きつけられ、ケンジは冷ややかに笑った。 かつての覇王としての瞳が、13秒で聖騎士の装備の「脆弱性」をハックする。だが、彼は戦わなかった。代わりに、手元のナスを一本、無造作に投げ渡した。
「説明なんていらない。食べてみろ。……それが、この世界の『本当の摂理』だ」
聖騎士が恐る恐るその身を齧った瞬間。 彼の脳内に、かつてないほどの多幸感と、生命の根源的な喜びという名の濁流が流れ込んだ。 「……おお……これが……これが神が隠していた真の美徳……『だいすけべ』なのか……!?」 鋼の理性を盾に、欲を禁じて生きてきた男が、涙を流して畑にひれ伏した。剣は土に捨てられ、彼はもはや、ナスのない人生へは戻れない。
ケンジはフェリスの肩を抱き寄せ、沈む夕日を眺めながら呟いた。 「理屈じゃないんだよ。……俺たちのスローライフは、これからが本当の収穫祭なんだからな」
だが、ケンジはまだ気づいていなかった。 自分の腕の中で、ひれ伏す聖騎士を冷徹に見下ろすフェリスの瞳を。 その唇が、誰にも見せたことのない「支配者の微笑み」を浮かべていることを。
――聖騎士を堕としたのはナスの力か、それとも。 少女が編み上げる、逃げ場のない「豊穣の檻」の扉が、今、静かに閉ざされた。




